カメラを持って出掛けよう

仕事と音楽の合間に一眼レフとコンデジで撮った写真を掲載しています。

2年ぶりの演奏会を終えて

2021年07月18日 | 音楽
昨年はコロナで所属しているオーケストラの定期演奏会は中止となり、今年は少ない練習時間ではありましたが何とか無事演奏会を終えることが出来、2週間経過してクラスターも発生しませんでした。
今回はオーケストラから配信された指揮者の映像を見ながら各自が個人練習を積み重ね、2回のtuttiで本番を迎えました。

私は普段から血管運動性鼻炎という持病があって、動き回っている時は何とも無いのですがじっとしていると鼻が詰まってしまいます。
点鼻薬なしで何とか症状を改善さそうと努力はしていますが中々思うようにはなりません。
ところが本番ステージに乗ると今まで詰まっていた鼻が両方とも瞬時に通って鼻呼吸が出来るようになります。
それどころか今回の演奏曲の中で速いパッセージがどうしても出来ず、加齢のため下の動きが若い人より鈍くなっているのだと自覚していました。
ところが本番中は嘘のようにそのパッセージに対して舌が動き失敗はありませんでした。
ステージの上に立つ特殊な状況がそれらの問題点を解決してくれました。ホント不思議です。







小説「Obralmの風」




9月になって岳は同級生と一緒にサイパン島へゴルフを楽しむため関空に向かうリムジンバスの中にいた。
夏前に駅で出会った吉井美華という女性からその後連絡はなかった。
別れ際に彼氏から暴力を受けていると聞いたことがいつまでも心に刺さっている。
明子のその後も気に掛かる、学校では夏休みが明け二学期が始まっているが彼女は出勤出来ているのだろうか、それともまだ休暇をとり続けているのだろうか。
岳はこの旅行から帰るとこの二人の女性の様子を確かめようと思う。
前の座席には通路を挟んで4人家族が座っている。
小学生高学年らしき男の子は母親と掛け、中高生であろう女の子は父親と座っている。
この子達は学校を休んで両親と旅行なのだろうか、それは判らないがそれぞれの事情があるのかも知れない。
先程から女の子が長い黒髪を手でかきわけながら父親の肩に頭をもたれかせている。
子供の居ない岳にとっては考えが及ばないその仕草に心のどこかで嫉妬感が芽生えた。
家族間では当たり前のスキンシップが岳にとってはこの時ほど羨ましく思えることはなかった。
この歳になるまで家族を持たなくて、その暖かな触れ合いを知らないまま命が終わるのかと思うと、今までに感じたことのない生への執着みたいなもの心の中に湧き出してくる。

関空の出発ロビーには既に居酒屋の中島と中年太りで益々恰幅がよくなった弓田が立ち話をしながら盛り上がっていた。
赤い色のポロシャツを着た弓田は岳を見つけると高く手を振った。
「おーい、久保こっちや!」
「そんなに大声で叫ばなくても、ちゃんと見えているよ」
中島も笑顔で待っている。
屈託の無い二人の笑顔を見ると同級生はいいものだと思う。
「それにしても弓田のポロシャツは派手やなあ、かなり遠くからでもよく見えるわ」
「そうや、こいつは昔から人より目立つのが好きやったから」
中島は弓田の背中をポンと叩いた。
「これは嫁はんが誕生日に買うてくれたんや」
「そっか、奥さんの好みなんや」
岳は先程の家族連れを思い出し周りを見回した。
「還暦にはまだ早いしなあハハハ。どうしたんや久保誰か探してるんか?」
弓田も岳と同じような動作をした。
「おい、それより寺井が来ないぞ」
中島は携帯を出してメールをチェックした。
「あと10分で着くらしいわ」
「あいつは昔からマイペースで人より先に来て待つなんてことは無縁の奴やなあ」
岳は過ぎ去った時間を越えて友人達との原点に戻り、当時のように談笑が出来るこの時を愛おしく思えた。
やがて寺井が頭を掻きながらやって来た。
我々三人は口を揃えて文句を言った。

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