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Miscellaneous Impression 2

ツンドラ日記

第2図書係補佐

2011-11-28 22:09:32 | 
22日発売、23日休日のためか我が手に入ったのは25日。
一気に読んでしまうのが惜しかったんだけど、読み切ってしまった。
正直「ピースの又吉直樹の書いたエッセー」と言う要素を抜きにしても面白い本だと思うよ。
お奨め!
以下感想。
(多少のバイアス掛かっていることは否めないけど)

本屋には相性があると思う。
私の場合は三宮のジュンク堂と相性が良い。あそこに行って勧めの本棚を漁るとたいてい気に入る本が手に入る。
近くにも本屋は何軒かある(それなりに大きな本屋もある)のだが、どうも相性が悪いらしく、これは読みたいと思う本に中々会えないのだ。
しかし私は自分の感性だけが頼りにして、出会うべき本や出会える本に巡り合えて来れなかったんだとこの本を読んで思った。
他人の感性を頼りにするのはなんだか癪なんだけど、この人の本に対する愛や感性はすごいものがある。
そしてそれを人に伝えて共感させる文章力もある。参りました。
これからは師匠と呼ばせてもらおう。


私は基本文庫で本を読むので、あの膨大な文庫の本棚の中から自分のアンテナに引っかかる本を探すのは楽しいけれどもしんどい作業でもある。必然的に好みは偏ってしまう。新規の開拓もあまりしない。(ずぼらかつ依怙地)
昔読んで私には合わないと思ったまま、敬遠していた作家も多くて、太宰もそう。
何編か読んで、心境的に辛くなって読まなくなっていた。
芥川は好きなんだけど、太宰を読むのは辛かったのが何故か、と言うことがこの本を読んで急に腑に落ちる思いだった。
私は太宰の中に感情移入しすぎていたのだ。
自分のように太宰の辛さばっかりを受け取ってたな、と今なら思う。
又吉はその点自分の中に冷静な観察者を持っているから、太宰の軽さや諧謔性にも目が行ったのだろう。
人間失格の章を読んで、自分の子供っぽさに気づかされてがっかりした。
今ならもう一度太宰に近付いても良いかな。

とは言え、この本は書評ではない。
読後感から言えばエッセー集というより、良質の私小説を読んだ感じに近かった。
又吉の文は多岐にわたる。「本」と言うテーマから付かず離れず、過去の話から鼻血で世界平和を招くおばさんの話まで様々な話が繊細かつ歯ごたえのある文体で綴られている。(この人の気にしいなインタビューから考えると意外なほど歯ごたえがあって、好き)

又吉は、人の中の「あるある」と言う感覚を掬い上げるのがとても上手い。
本人は人とは共感することが少ない思春期を送ってきたと言うんだけど、その思春期の生き難ささえとても共感できるから困ったもんだ。
何度かぶはっと噴出しそうになったり、杳子の章の切なさにやられたり。
私の好きな作品もいくつか取り上げられていて、そこに書かれた文章にとても共感してしまった。
今まで避けてきた、私にとっての食わず嫌いの作家の作品も取り上げられていて、今まで手にとって無かったことがなんだか損していたような気分になった。

これから又吉の感性を頼りに新しい本の海に漕ぎ出そうと思う。
勝手に水先案内人にされては迷惑だろうけど、よろしくお願いします。

てかもっと読みたい。もっと書いて下さい。
泉鏡花や三島をどう紹介してくれるかなんてすごい楽しみじゃない?