後悔先に立たず(こうかいさきにたたず)
「青いペンの手紙」
中学3年生の浩太は、ひそかに隣の席の美咲に恋心を抱いていた。美咲はいつも明るく、クラスの中心的な存在だったが、浩太は自分が目立たない存在であることを知っていた。それでも、彼女の笑顔を見るたびに胸が高鳴った。
卒業を間近に控えたある日、浩太は思い切って美咲に告白しようと決心した。しかし、いざ本人を目の前にすると、どうしても言葉が出てこなかった。代わりに、家に帰ってから手紙を書くことにした。
「美咲へ」
最初の一文を書き始めると、思いが溢れるようにペンが走った。自分の気持ちをすべて伝えた手紙を書き上げ、ポケットにしまい込む。
翌日、手紙を渡すタイミングを見計らったが、美咲は友人たちと楽しそうに話していて、浩太はまたも勇気が出せなかった。その日の放課後も、翌日も、タイミングは来なかった。
卒業式の日。浩太はもう手紙を渡すしかないと心を決めた。しかし、美咲は式が終わると友人たちと写真を撮り、そのまま帰ってしまった。彼女の後ろ姿を見送りながら、浩太はついに手紙を渡せなかったことを悔やんだ。
春になり、高校生活が始まった。新しい環境に慣れながらも、浩太は美咲のことを忘れられず、机の引き出しにしまったままの手紙を見るたびに胸が痛んだ。「あの時渡していれば……」と何度も思った。
夏休みのある日、偶然にも駅前で美咲と再会した。彼女は相変わらず笑顔で、「久しぶり!」と声をかけてくれた。短い会話の中で、浩太はまたも手紙のことを言い出せなかった。
その後、浩太は手紙を封筒ごと燃やした。青いペンで書かれた文字が火に包まれる様子を見つめながら、彼は心に誓った。「もう二度と、大事なことを伝え損ねないようにしよう」と。
後悔先に立たず――過ぎ去った時間や機会は二度と戻らない。だからこそ、勇気を出して行動しなければならない。浩太のように、悔しさが教訓となることもあるが、最初から後悔しない選択をするのが何より大切だろう。
ことわざから小説を執筆
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