昨年冬号当たりからの『毛糸だま』の変化には正直言って舌を巻いている。編み物を始めた5、6年前くらいからずっと購読しているのだが、単なる編み物カタログを越えて、編み物雑誌として読めるように進化を遂げたように感じる。
まず表紙の写真からして違う。中身の写真は更に違う。これまでモデルさんがヌボーっと立って作品をただ大きく見せるだけだったのに対し、動きを感じさせるポーズを取り入れている。さらに、少し引いたアングルで撮っているで自然とバックが写り込むのだが、そこに置かれる小物達にも細心の注意が払われている。全体的にカントリー調の雰囲気にまとめられているような気がするが、それは好みが分かれるところであろう。個人的には好きですけど。
また、内容的にはデザイナーさん達を大事にする姿勢が見て取れる。彼らの編み物に対する想いなどが紹介されていて、それだけでも好感が持てる。海外のニットデザイナー達が個人名を強く主張できているのに比して、日本のデザイナーはごく一部の人々を除いて出版社に取り込まれて没個性化させられてしまっているな、と考えていたので、これは間違いなく良い傾向だと思う。インターネットの普及と共にどの分野においても才能ある個人が頭角を現してくるのは自然な流れだし、いつまでも出版社(もしくはスポンサーである企業)主導の体勢は続かない。今回の『毛糸だま』の変革を、来るべきデザイナーと出版社の相互関係の先取りと見るのは早計だろうか。
変化を好む人もいれば、安定を望む人もいる。万人にとっての正解は無い。ただ、今回の改革は時代の変化を取り入れた自然な流れだったのだと思う。非常に長い歴史を持つ編み物は、技術的には既に飽和してしまっているのかも知れないけれど、まだこうやって少しずつでも変化して行く可能性を残していると考えると、意外とまだまだ行けるのかも知れない。