米国の次は、21世紀の覇権国を狙う巨大な隣国、中国を取り上げる。
中国大陸の歴史は、巨大帝国の治世とその滅亡後の混乱の交代劇であった。近世では、満州族国家の清が斃れたのが1912年である。列強による蹂躙と内乱が続き、約40年後の1949年に中国共産党(中共)が今の中華人民共和国(中国)を立ち上げた。1960年代の内部粛清の後、1970年代にはソ連と離反し、日米など西側との国交正常化や国連常任理事国就任などを経て国際社会に復帰した。1980年代は友好的に振る舞い、資本主義の競争原理を取り入れ、世界の工場として経済発展に邁進した。それでも、20世紀末のGDPは日本の約3分の1に過ぎなかった。
21世紀に入っても、中国は高成長を継続した。2008年の北京オリンピックは、その象徴である。同年のリーマンショックで世界が苦しむのを尻目に中国は成長し続け、2010年にはGDPで日本を追い抜いて世界2位となり、2019年にGDPは日本の3倍となった。つまり、僅かこの20年の間に、中国経済は日本に対して約10倍になった。2012年には習近平が中共総書記となり、2018年に国家主席の任期制限を撤廃した。軍事的にも、世界2位(日本の6倍)の防衛予算を使い、核兵器と世界最大の常備軍を有している。史上何度も現れた中華帝国の再来たる中共帝国の出現である。
わが国は古くから大陸との交流がある。現在もその関係は極めて深い。在留外国人約200万人のうち約70万人が、訪日外国人約3000万人のうち約1000万人が中国人である。約150兆円の輸出入のうち約35兆円が中国相手である(いずれも、米国や韓国を凌いで首位)。しかし、唐、宋、元、明、清、中華民国とどの時代も、大陸との関係の顛末は必ず不本意なものになった。地理的に逃れられない隣に位置し、どの国よりも長く深い関係にある厄介な国が、貧者の集団から巨大な帝国に変貌したのである。
中共帝国は支配領域の拡張を図る。西進では、中国奥地のチベット、ウイグル地区を侵略し領土化した。更に一帯一路を掲げて東欧諸国やアフリカ大陸へと経済圏を拡張しつつある。南進は東南アジアへ向かい印度と武力衝突を起こしている。東進は、言うまでもなく台湾、日本、フィリピンへの攻勢で、南沙諸島・西沙諸島の実効支配も固めている。更に、21世紀の覇権領域は、科学・文化など社会活動全般に及ぶことも熟知し、硬軟織り交ぜた広汎な侵略を執念深く続けている。その目指す所は世界支配であり、現代の覇権者米国が最終的な敵である。
米中戦争の勝敗はどうか。先のBlogのように、今のところ経済力や軍事力は米国に圧倒的に有利である。しかし中共帝国には、14億人もの人間生物兵器という強力な武器がある(https://blog.goo.ne.jp/tributary/e/82fc0bcdc251a171c0b89609e8516eaa)。この兵器を世界の隅々まで送り込み、各方面で抜き差しならぬ関係を構築し、着実に浸透工作を進めている。この生物兵器は、経済戦の生餌(巨大な市場と安い労働力)ともなった。食いついた西側諸国の企業は、一時的には利益を上げたが、富の殆どは帝国に落ち、知財まで吸い取られた。1989年の天安門事件で国際世論に批判された際も、これを撒き餌に使ってかわした。
もう一つの強力な武器は情報宣伝である。少しでも劣位を脱したと思いきや、根拠のない領有権を声高に唱え、相手の弱点を繰り返し突き続ける。臆面もなく米国の人種差別や日本の戦争行為をやり玉に上げる。この口喧嘩戦法は格安で、実体暴力と異なり破壊を伴わないので非難されにくい。しかも、その無体な内容とあの声高の攻撃的な響きの破壊力は時間と共に効いてくる。敵に自責の念を抱かせ、国民を分断して消耗させ、じわじわと内部から蝕む。冷戦時代に米ソの対立を演出して漁夫の利を得たことも含め、さすが孫子の兵法の家元である。
今回のWARS流行でも、ウイルス発生地への立ち入り規制で情報を隠匿し、病名から中国の地名を外させ、武漢肺炎なる用語の使用には罵声を浴びせ、米国発生説(https://blog.goo.ne.jp/tributary/e/096bec3064d64f62f4077c88a02ebf37)まで繰り出した。流行の混乱に乗じて、潜在的な敵国をサイバーアタックや浸透工作で撹乱し、財政困難に陥った新興国からは借金のかたに国土を取り上げ、香港に国家安全法制を押し付け、尖閣諸島への侵犯を繰り返している。その一方で、医療チームを派遣しマスクなどの医療資材を供与するなど、微笑外交にも余念がない。
この中共帝国を支える人々は、日本人と考え方が根本的に違う。過密人口で食料を争奪した非情な大陸の歴史故か、信頼関係は血族(宗族)内限りで、他者には裏切りや虚妄の宣伝工作(相手に不利な嘘を言いふらす)を罪悪感なく行える。つまり、その人間関係の基盤は、共栄と信頼ではなく搾取と裏切りである。日本人は、他人様に迷惑をかけず問題には謝罪して関係修復を図ろうとする。片や、他人の迷惑は意に介さず、非を認めた謝罪などは決してやらない。それどころか、嘘をでっち上げて責め立て、立場が弱くなれば言を翻してすり寄るという、虚妄と恥知らずの文化なのである。
中共帝国の国体は共産党独裁体制であり、建国の大義や理想はなく、信仰する神もない。信奉するのは力だけである。国民が従うのは、反逆罪の恐怖と戦利品の褒賞である。これに駆り立てられて、他国に超限戦(国際法や倫理観を無視した何でもアリの戦争)を挑む。愛国心の高揚のために、過去1世紀半の悲惨な歴史への復讐心と、中華帝国の再来の夢を煽る。中共はこの国民の熱情を捉え、確かにそれに報いている。蓋しこの構造は、反社会勢力たる暴力団と同じである。中共中枢が幹部、中共党員が組員で、国民はチンピラ・パシリか隷属民と考えるとよく分かる。
この「暴力団」にどう立ち向かうのか。まずは、今の彼我の国力の差と両国間の関係の深さを認識した上で、その本音「日本をショバ・シマにする」を認識し、安全保障を広範に強化すべきである。軍事力の増強、中国抜きのBlock経済の構築、文化的交流の抑制だけではない。世論喚起や歴史認識、教育・説話などを含めた「認知療法」こそが必要である。米国の覇権を揺るがすにも、その子分で能天気の日本は格好の標的となる。力が下と見なされれば、礼節などは打ち捨てられ踏み潰される。ウイグルや香港のようになった時に悔やんでも遅い。一方、野合の衆たる国民は、分け前が減れば離散し、帝国の崩壊時には難民となって押し寄せてくる危険もある。
今回のWARS感染は、中国の華々しい成功譚に惑わされず中共の毒饅頭性を認識し、潰滅の際の大波を避けるために、交流を最小化して国益に沿うものに限るのに絶好の機会になる。道真が遣唐使を廃した古事に倣うべきである。