今月の6日だった。「あっ」という声が聞こえた。いつもと違う声なので、「何かやったな」と思いながら声を掛けた。
「どうした・・・」家内から返答がない。水を流す音がした。指を切ったなと直ぐに思った。少ししてから右手の中指を押さえて居間に入ってきた。
「切ったのか」と訊くと頷いた。「深くか」と訊くと「おろし金を使っていて切った」という。
「病院へ行かなければならないだろう」と訊くと頷いた。その前に血を止めるので、伴創子を張ってくれという。
咄嗟に今日は何曜だと訊くと「土曜日でしょ」という。時計を見ると既に午後を廻っている。
病院は終わっている。兎に角、どこか救急病院を探さねければと思いネットを検索するが、見当たらない。
すると家内が、「今日は、金曜日だね」という。カレンダーを見ると確かに金曜日だ。
近くの病院を探すと「あった」直ぐに電話をしてみると「やってます」という。助かったと思った。
今までの緊張が嘘のようにほぐれてゆくのが自分でもわかった。
午後の2時から行くことにした。
病院では、中指の先を深く掘ったようになっているという。肉が上がってくるまで待つほかないといわれた。
その日の午後からである。炊事はすべて小生に廻ってきた。「やるしかない」と心に決めて取り掛かった。
8月6日から8月17日までの12日間である。台所に立っての水仕事である。
炊事とは、こんなにも重労働なものかとつくづく思った。普段は、大きな口を開けて飯を喰っているが、今回のことで、家内が、いかに苦労しているのか、しみじみを分かった。