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ヒトへの進化。そしてヒトの限界と可能性。

私たちの体には38億年の歴史が詰まってます。偶然と必然が組み合わさり進化をしてきた我々の祖先の謎とは?

手は水の中で生まれた(4)

2008年03月04日 | Weblog

指の使い方から浮かび上がるアカンソステガの生態


では手は何のために生まれたのだろうか。クラック博士はアカンソステガの手首と指の関係に注目している。手首はかなり原始的なつくりであったのに対し、その先にはちゃんとした指を持っていた、つまり「指のある手」が「手首のある手」よりも先に生まれた、と言えるのだ。

アカンソステガの指先はなんらかの膜で覆われていた可能性が高いと考えられている。このため手を水かきのように使っていたのではないかと解釈することができる。しかし、それだけのためにわざわざ指を発達させる必要もないはずである。現に水かきならば鰭でも十分であるし、内部に骨を持たなくても魚と同じ鰭状で済む。

骨を分析すると、指はある程度動かせたことが分かったので、クラック博士は水中で指を使う現生動物、イザリウオ(※写真)に着目した。

イザリウオは海底に暮らす魚だ。生態を観察すると鰭を器用に使い、まるで指を持ってるかのような行動をする。鰭で水底を掴んだり、ゆっくり歩いたりする。あるいは流れの速い場所では姿勢を保つために岩や水底を掴む様子も確認される。

こうした現生動物の観察や骨格の分析を通して、クラック博士は以下の結論を出した。


アカンソステガが住んでた湿地帯にはアーキオプテリスの葉が大量に落ちていた。葉っぱがあり、水草も多く茂っているところに住んでいたので、どろどろの水底を掴みながらゆっくりと進んだり、指先の感覚で水底を確かめていたものと想像される。さらに水草をかき分けるためにも指が使われていたと考えられるので、湿地帯、とりわけ水際での生活のために手が生まれたと言える。

さらなる状況証拠として目の位置が挙げられる。目の位置が上に変化したのはアカンソステガが目に依存する度合いを高めていたことを示唆している。水中がどろどろのところでは目はあまり役にはたたないはずなので、一時的にせよ顔を水の上に出す生活をしていたと考えられる。アカンソステガの化石が発見された場所は植物が多い湿地帯だったことが分かってきたので、肺呼吸も補助的にしていたと考えられる。

そうすると頭が体から独立し、首が生まれたのもうなずける。さらに扁平な体は水際という環境では有利である。一方、歯を見ると小さいものが並んでるのを確認できる。これは小魚や水生昆虫などを食べるために発達した事を示している。

そう考えると、丈夫な手首が必要ないことや、地上で体重を支える必要がないことにも説明がつく。

丈夫な手首や重力にも耐える腕の構造は、後で必要になったときに進化をさせればよいのである。

※参考文献
 NHK地球大進化プロジェクト・地球大進化・日本放送出版協会・2004

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