米国ではトランプが「歴史的な」発表と銘打ち、トランプ関税を発表した。彼はこれを「相互関税」だと称するが、その根拠のあいまいさは米国大統領の公式発表としては「歴史的」なものだ。
そのようなこの日、今日書いておかねばならないのは、これを日本経済の飛躍の契機にするべし、というわが愛する日本と日本を愛する人々へ向けた激励である。
かつて、日本経済が石油ショックで未曽有の痛手を受けつつあったとき、日本の製造業は、現場から積み上げた地道な努力で、省エネの実績を積み上げ、その後の日本製造業の国際競争力飛躍の先駆けとなった。
当時と現在と、労働環境も労働時間も労働条件も大いに異なる、いい意味で改善されていることは承知の上でのことだが、トランプ関税の日本経済への衝撃力の大きさは、石油ショック当時と同等かそれ以上であろうことを思うと、やはり、今この時から、当時に匹敵する覚悟と努力が必要であろうことは十分想像できる。
したがって、今回の”経済大攻勢”は、石油ショック当時以上に広くかつ深く日本の製造業のビヘイビアを改革・改善するものでなくてはならないと思う。
経営、経済発展の最重要な二大資源は、資本でも資源でもない。それは、時間と創造力である。
その観点から考えを出発させれば、次のような改革改善のポイントは容易に想像がつく。
1 時間を活用する、あるいは、意思決定に要する時間を短縮する。
そのためには、根底にある意思決定のやり方と見直し、より効果的。効率的な意思決定プロセスへと止揚する。これは、単純な意思決定スピードの加速ではない。より短い時間で、あるいは最適なタイミングで、より深化した内容の意思決定を行えるよう、会議の仕方、コミュニケーションの取り方、言葉・単語の選択といったものを進化させなければ達成できない。
さらに、意思決定を高速深化させるためには、意思決定を行う機会そのものを減らす工夫も必要だ。それは、組織構造、組織階層の簡素化を伴うチャレンジとなるだろう。
これらの方向は、現代の労働時間短縮の趨勢にも沿ったものだ。
しかも、日本の製造業企業の意思決定力を強化し、結果的により強い企業体質を獲得することができる。
2 製品そのものの止揚 :新製品あるいは新機軸の製品へのシフト
トランプ関税24%を乗り切るためには、日本製品の品質優位性のおかげで製品価格の引き上げを市場で許容する割合を24%の半分の12%から3分の2の8%と見込めば、その余は、ざっと12%分から16%分の製造コスト引き下げで対応せざるを得ない。今現在の価格から1割半以上のコストを削減する必要があることになる。個々の製品、品目ごとにこの程度のコスト削減が必要ということだが、そのうちの何%分かは、製品そのものを新しいアプローチで開発することで実現する方向で対処せざるを得ないのではないか。
すなわち、個々の製品でみれば、例えば、ガソリンエンジン車から大胆にEV車へ製造を転換することで車両製造コストの引き下げを狙う一方、同時に、そのような製品の質的転換、進化によってマクロ面で、日本全体のエネルギー需要における石油依存度の引き下げを図り、原油購入による外貨流出を抑制することで国富全体を押し上げる方向を狙うなど。
石油ショック当時の省エネ努力は、それまで着目されなかった省エネに着目したことで、燃料費を抑制し、さらには製品の運用コストの低下によって製品の質も向上させることができた。これらは、製品の需要家の評価そのものを上げる方向に向かう結果となり、輸出競争力の強化にもつながった。
トランプ関税の本質は、19世紀型産業思想への復古であって、高関税の付加だけでは米国産業の質的強化には繋がらない。関税で甘やかされた産業が第一等の産業に返り咲いた例など歴史上かつてあったことはない。
日本は、今後、強固な意思と創造力の発揮を発揮すれば、トランプ関税という“災悪”を乗り切ることを契機とした更なる国際競争力の強化に向けつ動くことができる。日本には、それを実現できる人材とモラル、人的協調性が備わっている。そのような”平和的な”力を今一度発揮していこうではないか。
