
ジャニーズ事務所所属の…
ここでいったん躊躇がある。
「アイドルグループ」と言ったほうが、世間一般での通りはいいかもしれない。
ただ、TOKIOファンの端くれとしては、その言い方には語弊を感じてしまう。
ここはやはり、自分の思うように言うことにしよう。
TOKIOを知っていますか?
ジャニーズ事務所所属の「バンド」です。
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2006年3月11日。
待ちに待っていた、この日。
新宿駅で待ち合わせた僕らは、都営新宿線に乗って、九段下駅で降りた。
出口を目指す人並みに、何かしら共通した「色」を感じる。
そうだよな。
この時間、この駅で降りた、この人たちの大半は、日本武道館に向かうんだよな。
僕らと同じように。
連なるエスカレーターの踊り場に、「チケット譲ってください」のカードを持っている女性たち。
地上に着くと、「チケット譲ります」のカードを持った女性たちがいる。
「うまくいかないもんだね」
友人たちと苦笑いしながら、お堀を渡り、かつて城門であったところを通り過ぎていく。
前回、この日本武道館にやってきた時。
僕らは、3階席用の入り口を目指した。
今回、僕らの座席はアリーナ。
最後尾とはいえ、特等席に近いポジションだ。
それもこれも、TOKIOの大ファンである「られたた」のおかげである。
僕ら…「られたた」「とみしゅう」「もも」の3人でTOKIOのライブへ出向くのは、これが3回目。
「TOKIO好き好きパワー」の強さでは、
られたた>もも>とみしゅう
となる。
普段は飄々としたたたずまいの「られたた」なのだが、TOKIOのライブでは人が変わったようになる。
まさに豹変と言っていい。
そんな彼女の変わり様を見るのが、残る二人の楽しみといってもいい。
…などと茶々を入れてしまっているが、なに僕だって大差はない。
「リーダー」だの「太一」だの、太い声を枯らして叫びまくっている。
長瀬も松岡も「ぐっさん」も好きだけれど、この二人は別格。
特に、今回のライブで「太一株」がさらに上がった。
(理由は後ほど)
「もも」だって、同じようにガンガン飛び跳ねていた…はず。
断定できないのは、ライブ中の友人たちの挙動になど構っていられなかったから。
何よりも自分が楽しむこと。
ライブの醍醐味はそこにある。
周囲に多大な迷惑をかけないことが前提、ではあるのだけれど。
アリーナから見たステージは、思った以上に「高さ」を感じた。
2階席、3階席からも見やすいように、ということなんだろう。
最後方の席だけれども、サブステージは比較的近い。
前回と同様、ここがせり上がるんだろうなぁ。
TOKIOがデビューしてから12年。
つまり、彼らはキャリア12年を誇るバンドなのである。
中堅と呼んで差し支えない年月だと思う。
バラエティ番組で活躍する彼らの姿は、まごうことなくアイドルのそれだ。
アイドル、とは言ってみたものの、最年少の長瀬でも今年で28歳。
リーダーに至っては、年末には36歳を迎える。
アイドルの条件に「年齢」を加味するとなると、TOKIOをアイドルグループとは言いづらくなる。
でも、やっぱりTOKIOはアイドルなのだ。
だって、彼らはお客さんを楽しませる術を知っているし、何より「自分たちが楽しくあること」を大切にしている。
そんな彼らに、多くの女性たちが声援を送る。
こんなにも「清く正しいアイドル」は、そうそういるものではない。
でも。
最初に僕は書いた。
TOKIOは「バンド」である、と。
ほぼ定時に始まったライブ。
駆け抜けるように曲を演奏し続ける5人の男たち。
ボーカル:長瀬
ギター:リーダー
ベース:ぐっさん
ドラムス:松岡
キーボード:太一
彼らの演奏から伝わってくる、バンドとしての「雰囲気」や「誇り」や「勢い」に圧倒されつつ、僕は不思議に思う。
あれだけテレビで活躍しながら、どうやって練習を重ねているのだろう?
彼らはアイドルとしての立場を理解し、その役割をきっちりと演じきり、なおかつバンドとして日本武道館の舞台に立つ。
選ばれた者たちが持つルックス、素質、強運、オーラ。
そういう諸々を、しかし12年たってもなお持ち続ける彼らを、同性として素直に「かっこいい」と思う。
前半を一気に駆け抜け、やや長めのMCに突入。
しっかり者の松岡。やんちゃな長瀬。
お兄さんキャラの「ぐっさん」。いたずら坊主の太一。
そして、大黒柱…というよりもいじられキャラのリーダー。
じゃれ合うような、それでいて馴れ合いを感じさせない関係性。
健全な男子高校生みたいな彼らの会話は(もちろん「ちょいエロ」あり)、聞いていてとても心地よい。
ファンサービスとして、リーダーがメインボーカルで一曲歌う。
TOKIOは全員歌がうまい。
「甘さ」という点では、リーダーが一番あるように思う。
大人の色気…と、ここでは言っておこう。
後半戦へ突入。
前半以上のテンションで盛り上がる国技館。
冷房はそれなりに効いているようだが、けっこう熱い。
キャミソール姿の女性客も結構いる。
…というか、僕の目の前にいる女性たちが、まさにその格好。
ま、そんなことは眼中になく、唄い踊る僕なのだ。
オリコンで1位を取った“Mr. Traveling Man”で、いちおうライブは終了。
メンバー全員が退場して、いったん暗くなった場内に鳴り響く、ファンの拍手。
言ってみればお約束の進行なのだが、僕も熱心に拍手を送る。
おそらく5人とも、袖で酸素吸入やら水分補給やらをおこなっているに違いない。
全力で演奏し続けた2時間半。
まともに立っていることすらつらいのではないだろうか。
ファンとは残酷なものだ。
そんな彼らに対して、「もっと観たい、もっと聞きたい」と、痛みを感じつつある腕を動かし続けている。
でも、きっとTOKIOはまたステージに戻ってくる。
つらさなど感じさせない笑顔と共に。
そういうやつらなんだよ、あの5人は。
アンコールの2曲。
まさに最後の力を振り絞って、彼らは歌う。
長瀬の声が、リーダーのギターが、「ぐっさん」のベースが、松岡のドラムスが、太一のキーボードが。
ファンの歓声と一体になり、力強く僕らを揺り動かす。
太一の合図と共に、ジェット風船が高い天井めがけて飛んでいく。
そして、ラストの曲『明日を目指して!』の三三七拍子が、ライブの最後を鮮やかに締めくくった。
5人の挨拶。
ファンを大切に思い、TOKIOというグループを大切に思い、いまこの時にいられることへの感謝に溢れた言葉が続く。
その中でも、太一の言葉が忘れられない。
「デビューして2年間は、笑顔だけで仕事が来ました。
でも最近では、笑っているだけでは仕事が来なくなりました。
どんどん新しいことに挑戦していかなくてはいけません。
音楽で、TOKIOというバンドとして、
この武道館にお客さんを呼びたいです。」
今年で32歳になる太一の童顔は、でもこの時は精悍な男の顔になっていた。
プロのタレントとしての自覚。
プロのミュージシャンとしての矜恃。
いろんな力に溢れた言葉だった。
なごりを惜しむように手を振り、ステージの端から端まで挨拶を続ける5人。
最上段に並び、深々と頭を下げ、ステージの奥へと5人が下りていき……この日のライブは終わった。
鼓膜の奥をじんじんさせながら、
右肩に軽い痛みを感じながら、
手のひらを真っ赤にさせながら、
僕らは武道館を後にする。
外の空気が涼しくて心地よい。
少し離れたJR飯田橋駅に向かう僕らは、でも少しだけ無口だ。
理由は単純。
これから駅前の居酒屋で、あれこれ話しながら一杯やるつもりだから。
終電まであまり時間はないけどね。
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とみしゅう@ケイタイ

akichi(LIVE馬鹿)
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