あ可よろし

「あきらかによきこと」は自分で見つける・おもしろがる
好奇心全開日記(不定期)

余韻を楽しむ

2022-12-13 | 本(文庫本)
荻原浩さんの『それでも空は青い』を読みました。
これまで荻原作品は文庫本で制覇していると思っていたのですが、この作品はスポッと抜けていました。何故? 何で抜けてた? 短篇集だから「いつでも読めるな~」とでも思っていたのか?
ということで、心残りにならないよう、今年中に読んでしまうぞと鼻息も荒く挑んだのでした。

プロ野球選手になった同級生の訃報をプロ野球選手に慣れなかった「俺」が知る。自分と彼との人生を振り返りながら「俺」は会うべき人のもとへ向かう。(スピードキング)
バツイチで無職の槙田が参加した同窓会。目的は当時の憧れのマドンナ・桜井に会うためだった。再会した桜井には同窓会に来る目的があり…。(妖精たちの時間)
素っ気ない夫の態度に悩む美穂は、掃除中に1本の小さなねじを見つける。何のねじか分からない美穂は、実は夫はロボットでその部品なのではないかと考え…。(あなたによく似た機械)
他全7作品


状況や心の中は曇りだったり土砂降りだったりしても、見上げれば空はどこまでも青い。清々しい青色がどこまでも続いている。現実の半分以上が辛くても、空はいつでも青い。
そんな物語がギュギュっと詰まった1冊です。
どの作品も、短篇だからといって油断はできません。最後の一行まで気が抜けないというか、普通に読み進めていたら最後で「わぁー!」ってなります。そして「そうか、そうなんだね~」とじんわり来る。
これですよ、これ。荻原さんの作品に惹かれるのはこういう余韻が美味しいところなのです。
サラッとこなせる読書と決定的に違うのは、余韻なのではないかと思いました。物語の最後の一行を読み終えて体のどこかでジーンと何かが響いている感覚。「ああ…」とため息に声が混じってしまうような感覚。そんなものを感じるかどうか、その差は大きいと思うのです。

何もなかったけどいろいろあった2022年の年末に、こんな素敵な1冊を読めたことを幸せに思います。もしかして、このタイミングで読むために読み忘れていたのかしら? ん~~~。

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