A型の動作原理について考察してきたが、類似動作と比較しながら、より理解を深めたいと思う。
A型の核心部分は上肢・上肢帯およびバットの下方への引き下げである。この動作を「引き下げ運動」と呼ぶことにする。A型には相応しいが、この言葉にそぐわない運動も含むことになる。要するに(引いたり、押したり、突いたり)下方へ力を及ぼす動作だが、その準備動作としての上肢・上肢帯の引き上げを含めた全体を指す。
「下制運動」の方が語感は良いが、機能解剖学で「上肢帯の下制」の意味に使うらしい。上肢帯の下制はこの動作の中心部分だが、意味が狭くなるのでやめることにした。
引き下げ運動は力強いものだが、一般のスポーツおいては、上方や横への運動(或いは力の付与)に比べて例は少ない。例えばジャンプなどに比べて、バイオメカニクス的考察も十分ではないだろう。
対象は「空手の試し割り」と「浪之下」だが、まずA型の「引き下げ運動」について再掲しておこう(訂正もあるので)。
特徴は、
- 地面反力を使わない。
- 反動を使う。
の2点である。
地面反力は引き下げにはマイナスである。逆に抑えることがプラスに働くわけだが、実際の打撃において重力加速度をどの程度利用しているかは定かでない。目が動くのは打撃にマイナスだから依存度は高くないとは思うが、地面反力を抑えて引き下げを強めるのがコツになるのかもしれない。
ヒッチは引き下げる筋群の引き伸ばしと活性化に利用される。スイングに入って体幹部分の引き下げと上肢・上肢帯の引き上げが同時に起こり、そのあとに引き下げが起こる。つまり動作に時間差がある。Ⅰ型やⅢ型のような腰の回転トルクがもたらすものと比べると小さなものだが、やはり一種のうねりだろう。
上肢帯の挙上・下制については間違えていた(肩を固定するとしていた)ので、HPを記述を訂正しておいた。