猫野トクコの生活

気が向いたときにどうでもイイコトをダラダラ語るオナゴの日記

桜の日 謎の老紳士

2007年04月01日 15時50分24秒 | どうでもいいこと

ワタシは現在、とある製造会社の出荷センターで
受付事務員として働いている。

出荷センターの前は運動場のように広い駐車場。
運送屋さんのトラックが毎日ココへ何十台もやってきて、
うちの製品を乗せて商社へ運んでくれる。

   


ワタシはそのトラックが何を積んだかの連絡を受け、
納品書を作成し、ドライバーに渡す。
そして、納品済みの在庫のデータを消していく。
そういう業務を担当している カタカタカタカタ…

目の前は透明ガラスの自動ドア。
冬場は室内でありながら、
凍死の可能性のある極寒の席も、
いつの間にか季節が変わり、
自動ドアのガラス越しに見える桜の蕾が
次々に膨らんで開くのが見える。

今、名古屋は6,7分咲きと行ったところだろうか。




桜を背景にトラックの運ちゃんの顔を見ると、
ハードにパンチパーマをあてていても、
何だか可愛らしくみえる (笑)

冬場に冷たい風を運ぶ悪魔のようだったパンチ君達に
今日はドライブ日和ですねぇ~
なんて愛想よく話せるようになったのも、
すべてこの暖かさと桜のおかげかもしれない。



そんな桜の季節の今日この頃。
出荷用の門から、黒いタクシーが一台入ってきた。

10トントラックや、コンテナ車ばかりが入ってくる門なので、
普通自動車が入ってくると小さく見える。



小さなタクシーはワタシの目の前の
自動ドアに横付けに停車した。

後部座席には、ハットを被った老紳士が、
杖を胸の前について座っている。



普段、見慣れたワイルドパンチ君とは全く違う
お紅茶とか飲んでそうなお爺さんだ。

タクシーが停止したのに、
老紳士は微動だにせず、降りてくる様子もない。

タクシーの運転手が降りてきて、
出荷センターに入ってきた。



タクシー  すいません。加藤ヒロコさん(仮名)を呼んで下さい

トクコ  ここは、来客窓口ではなく、出荷専用窓口なんです。
      申し訳ありませんが、人を探されるのであれば、
      正面入口の来客窓口まで回って頂けませんか?

タクシー  タクシーの中のお客様は加藤様です。
        ご家族のヒロコさんを、至急お願いします

トクコ  お急ぎのところ申し訳ありませんが…
      でも…(-ω-;)ウーン
      では、加藤ヒロコさんの所属部署は分かりますか     

タクシー  大変、急がれてまして…
        部署まで分からないんですが、
        至急どうにか…お願いします



タクシーの運転手さんは、そう言って、
ワタシに何度もペコペコと頭を下げてくる


自動ドアのガラス越しにみると、
老紳士はジャケットを着ているが背中は丸く、
杖をついたまま、うつむき全く動かない。




天辺がペコリと凹んだ上品なハットのつばで、
表情までは分からないが、
急いでいるのに、
ナゼ、降りて来ないのだろうか

急ぎの用事をタクシーの運転手に頼んでおいて、
あの落ち着きようは、すごくセレブな感じだ

それにしても、
タクシーの運転手のこの慌てようは何なのか


あの老人は一体何者?

まさか、ものすごい大物なのか?

もしかして、うちの会社のお偉いさん?


正社員・請負業者・派遣社員に、
パートさん・アルバイトさん・外注業者…
ワタシはこの会社に出入りしてる人が
どれくらいいるのかサッパリわからない

加藤って、また、名古屋でメジャーな苗字なんですよね


大物かもしれないと言う疑いが出てくると、
小心者のワタシは急に焦りだし、
急いで、上司のキレ者さんに連絡した。


トクコ  お忙しいところスミマセン。
      今、受付にハットを被った老紳士が
      タクシーでお見えになってて…
      加藤ヒロコさんを呼んでくれって…
      急ぎだから、正門へ回れないみたいなんです。

      役員の方でしょうか?


キレ者  ハットの老紳士 


焦るタクシーの運転手さんに、
ワタシが正門の来客窓口の方が人を探すなら早いと
イイワケをしている間に、
キレ者上司が現場から駆け足で戻ってくる姿が
自動ドアのガラス越しに見えた。よかった…

キレ者さんは、大胆にもタクシーの窓をノックして、
中に居る大物かもしれない老紳士にペコリと頭を下げ、
窓を開けてもらおうとしていた。

…しかし大物老紳士は無反応で、
胸の前に杖をついたままジッとしている。


無視だ! すごい超大物だ!


キレ者さんは、急いで、
出荷センターの中の電話をとり、
早速、総務と従業員入口の警備員に連絡。
他にも関連がありそうなところに次から次へと連絡している。
その手際のよさと来たら、
サスガみんなのヒーローと言った感じ。

タクシーが現れてから、
15分は経過しただろうか…。チクタクチクタク


ウロウロと落ち着かないタクシーの運転手。

電話の前で、腕を組んだまま静止したキレ者上司。

ビビッて仕事が手に付かないワタシ。

タクシーの後部座席の、
ハットをかぶった老紳士だけが、
1人落ち着いた様子 


それから、しばらく経って、
作業着を着たおばちゃんが1人、
遠くの方から走ってくるのが見えた。

遅れて、もう1人のおばちゃんも
ドタドタと走ってコチラに駆けてくる


先に走っていたおばちゃんが先に、
タクシーの後部ドアをガバっと大胆に開け、
無礼にも老紳士の肩をたたき、
ギャンギャンと話かけている


慌てて駆け寄るタクシーの運転手さんと
おばちゃんが何か話しをして、
ウンウンと大きく頷いている。


おばちゃん1  急いで 
            加藤さん、あんたのお舅さん死んじゃうよ

           早く、早く!


おばちゃん2   スイマセン 作業着のまま失礼します



そう言って、遅れて着いたおばちゃんは、
老紳士の乗っているタクシーに作業着のまま乗り込み、
桜の木の前を、猛スピードで去っていった


 あれれ? 


先を走っていたおばちゃんが
息を切らして、出荷センターに入ってくる。


おばちゃん  悪いけど、お水貰っていい?ゼイゼイ

キレ者さん  加藤さんって誰だったの?

おばちゃん  先週入ったパートさんでね。
          入りたてで、早退が多いから、
          昨日事情を聞いたばっかりでねぇ…

          体の具合が悪いのに、なかなか頑固で意地はって、
          入院しないお舅さんの話を聞いてたんだわ。ゼイゼイ

         (ここでワタシが用意したお水を一気に飲み干す  グビグビ )

         さっき、タクシーの中を覗いたら、
         お舅さん、顔面蒼白で死にそうだったよ

         入院を勧められても、あんなに嫌がってたのに、
         相当、体調が悪くなったんだろうね。
         自分1人で入院の手続きをしにいったらしんだわ。

         だけど、病院の受付で保証人がいないと
         入院できないって言われて、
         嫁のパート先のココまで病院から来たんだってさ。

         よかったね。
         出荷センターの前で ポックリ 逝かなくて
         ガハハ (*^日^*)゛ グワッハッハ(笑)


キレ者さん  そうか…。なんだ。
          猫野さんが「ハットの老紳士」とか言うからさぁ~

トクコ   だって、本当にハットと杖の老紳士だったじゃないですか。
       運転手さんだって、「加藤様がお急ぎで」とか言ってたし…


あの落ち着きようは…セレブだからではなく、
具合が悪くて動けず、
杖で何とか身体を支えていたということか


タクシーの運転手も、
あの爺様が自分の車で死ぬかも知れないと言う恐れから、
慌てふためいていたのに違いない


そうとも知らず、目の前でポックリ逝かすとこだった…
アブナイ…アブナイ…


ワタシの妄想から大騒ぎになってしまったが、
そもそも、体調が悪いのに救急車じゃなくタクシー

しかも、ジャケットに帽子という紳士ルックで
病院に向おうとしたなんて、
すごく小洒落た爺さんだよねぇ~


とにかく、加藤の爺さんには、
ゆっくり病院で休養して体調を戻し、
ハットと杖の紳士ルック で、
無事におうちに戻って欲しいと思う


まったく、人騒がせな爺さんだ…

人騒がせなのはワタシか?



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13 コメント

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アッパレ!! (チャジョンコ)
2007-04-01 18:53:46
いや~全く物事は蓋を開けてみないとわかんないもんですね(笑)想像の及ばない事態があったりするから~!(o-´ω`-)ウムウム
しかし、死にそうな状態でも、お洒落に手を抜かないおじいさんのライフスタイルは素敵です!!かっちょえ!はたまた、これが最後の衣装とでも思ったのかな?私は人生最後の日に何を着て死ぬんだろう?破れた靴下の時だけにはあたらないで欲しい(笑)
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Unknown (ヨコイ)
2007-04-01 20:29:23
いやぁ~お金持ちの老紳士だったら何かお礼を期待して動いてしまいそうだけど、そうそうドラマみたいな事は起こらないですよね(笑)

まぁ今回のような漫画みたいな事が起こるだけで充分凄い
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こんな日も・・ (LEON)
2007-04-01 22:22:42
ギャハハハ・・・・(^0^)/キャハハ・・

桜も開花・・・小春日和で穏やかな一日の平々凡々と過ぎゆく一日よりも・・・・
こんな笑えるオチがある出来事が、たまにはあった方が仕事やってても面白いだろうな。

ロマンスグレイの素敵な紳士じゃないけども、本人にとっては
生死に携わる問題だったのかもしれないねっ。

でも、この人物”大物”と見るトクコさんの見解は正しいかも(・_・ゞ-☆
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Unknown (おぐっちゃん)
2007-04-02 06:20:37
いやぁ、それは勘違いしてもしょうがないですよ!
なかなか人騒がせな爺さんですよ(笑)
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面白い! (Hoo~♪)
2007-04-02 09:12:53
いやぁ~!! 働いていると、面白い事件に遭遇するよね

誰だって、黒塗りのタクシーに横付けされて、こんな状況になれば、
  大物の方がっ
乗ってるって思うよね。

そうだから、仕事って辞められない。←その為に働いてるかも。

あり得ない事件勃発する仕事場って、好きだわ~

返信する
綺麗な桜の花・・・ (山犬)
2007-04-02 12:52:36
とくこさんを想い出した・・・^^

タクシーの運ちゃんも言ってくれればいいのになぁー・・・。
逝っちゃいそうだってサ・・・www

こーゆー場面は焦るよな!
お疲れチン!
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さすが? ()
2007-04-02 13:58:18
トクコちゃんのイメージ(妄想?)でお爺さんは危なかったのね・・・
しかしお爺さん、色んな選択が間違ってる気がする・・・
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Unknown (hitomi☆)
2007-04-02 18:18:58
すっごいね。タクシーでセレブ風のおじいさん実は危ない状態って・・・。トクコさんはそういう珍しい体験を出来る下に生まれたんだよ。

そう、私の新しい会社トクコさんとこのお取引先だった。ビックリだよ。世間は狭いよ
返信する
お返事 (トクコ)
2007-04-02 21:28:05
● チャジョンゴさんへ
 苦しみながら、ジャケット着て、帽子を手にとるなんて…
 ワタシもソロソロ毛玉だらけのカーディガンを捨てないと、
 最後の衣装がこれじゃなぁ~

 そんなこと考えてるタイプは長生きかもね(笑)

● ヨコイ君へ
 タクシーのガラスってUV加工のせいか、
 ちょっとブルーっぽいでしょ?
 それがまた、中に居る人が皇族のように金持ちに
 見えるんだよねぇ~

 普段、タクシーなんか利用しない凡人の発想だね

● LEONさんへ
 ですよね?ですよね?
 ワタシは間違ってませんよね?

 社内放送という手もあるのですが、
 もし、会長夫人とか社長令嬢とかだったら、
 放送で呼びつけるわけには
 いかないじゃないですか

 まさか、ヒロコ様がパートのおばちゃんとは
 全く予想してませんでした

● おぐっちゃんへ
 でしょでしょ?

 そうなのよぉ~。人騒がせよね。
 タクシーの運転手の敬語も丁寧すぎたのがイケない!
 「うちのお客さんがさ、加藤ヒロコさんを呼んでるよ」
 くらいのニュアンスで説明してくれたらいいのにねぇ~

● Hoo~♪さんへ
 おうちでジーっとしてるよりは、
 面白いことが沢山おこるよね。

 嫌なことだって、そりゃあるけれど、
 こんなにネタを貰えて、給料も貰えれば、
 働くしかないよね(笑)

 まだ、新人なので、色んなことが新鮮でたまらない

● 山犬さんへ
 はいはい。散りかけた桜のトクコです。

 そうそう、タクシーの運転手も敬語の使い方が
 巧すぎるのも問題ですよね。

 「うちのお客さんの加藤さんが呼んでるよー」
 くらいだったら、即、社内放送を依頼したんだけどね(笑)

● 姫ちゃんへ
 役員が役員婦人か役員令嬢を探していると思うと、
 社内放送で呼びつけるわけにもいかないし、
 オロオロするばかりだったよ

 ボテボテと太ったオバチャンが、
 加藤ヒロコ様だったなんて

 爺さんも苦しいなら、ジャケットよりジャージに
 しとけって思ったよ(笑)

● hitomi☆ちゃんへ
 新しい会社、どうなの?どうなの?
 取引先なのかぁ~
 うちのお客様なのか
 お世話になります

 ホントに世間は狭いなぁ~。
 知ってる人と繋がってると思うと、
 仕事も楽しくなるわ。今後とも宜しく
返信する
Unknown (みきリス)
2007-04-04 03:24:40
トクコちゃんのまわりでは本当にありえないような
こと起こるね~さすがネタ王( ̄ー☆キラリーン
それにしても、そんなに病状の悪いおじいさんに対して
保証人が居ないと入院手続きできない病院ってちょっと
おかしい気がするのは私だけ??
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