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風の吹くまま,気の向くまま,ありのままの自分で。

『楽園の薔薇』10.風邪をひいても<1>

2011-04-05 23:24:53 | 小説『楽園の薔薇』
楽園の薔薇

10.風邪をひいても

<1>

また熱が上がってきた。
「イスフィール様。大丈夫ですか?」
「…ん。」
きっとマリーナだ。
イスフィールは目をつぶったまま考える。
彼女は杖の儀式を抜け出してきたのだろうか。
「あぁ…熱上がってますね…。おとなしくしててくださいね、私は用事があるので。」
そう言うと、マリーナは小走りで部屋を出て行った。
「おとなしく、かぁ…。」
(薔薇姫様…。私も安静にしていた方がいいと思うのですが…。)
カリスの意志が伝わってきた。
少しためらいがちなのは、イスフィールのやりたいことが分かるからだろう。
(わかってる。だから、30分たったら起こして。)
(薔薇姫様ぁ…。)
(よろしくね、カリス。信用してるわ。)
イスフィールはカリスとの会話をシャットダウン。
それに、ここ数日で分かったことだが、カリスは『信用してる』と言われると何も言えなくなってしまうのだ。
ちょっとズルいが、そこは許してほしい。
「早く…レイアースを助けなきゃ…。」
まるで悪者にレイアースが捕まっているような口ぶりだが、かなり違う(念のため…。)
そんなことを考えつつ、イスフィールは眠った。

(まったく薔薇姫様は自覚してるのですか?)
風邪をひいていてもレイアースを助けたい理由。
熱が上がっているのに―分かっているのに―無理をしてまでレイアースの所へ行きたがる理由。
カリスは我が主の心を考え、重いため息をついた。



written by ふーちん


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