音と美と文と武と食の愉しみ

自己参照用。今まで紙に書いていたものをデジタル化。
13歳でふれたアートが一生を支配するようです。

20240616 女工哀史(その1)

2024-06-15 16:33:55 | 日記

(よく知られた書籍。一読して衝撃を受け今でも忘れられない部分を抜き書きする。えっちである)

 

【中性的心理】

花も咲かなきゃ鳥もうたわぬ一切禁慾の生活に身を委ねていると、性慾を始め諸々な慾望は習性的に段々その絆を断たれてしまうものである。

三十路を越えて爛熟の極に達した中年夫人が、未婚のままで寄宿舎にかなりいる。そうして彼女たちは金を儲けて国へ送るとか貯金するとかのほか、ほとんどこれを使わない。もし彼女に性その他の慾望が傍(はた)から想像する程あるのだったら、とても辛棒は難しい。しかし勘定とったからたとて美しい衣裳を一枚つくるでなし、芝居一幕のぞくでなし、と言って男に戯れることは更らになく、唯々(ただただ)営々と働くをこれ能とする。こんなカーレル・チャペックの「人造人間」のような女工が大抵一工場に1割くらいはどこでもいる。彼女たちは、もう中性的になってしまっているのだ。故に良縁があるからとて縁談を持ちかけてもそんな手合は大概ことわる。

彼女たちはこれからの環境次第で、どんな色にも染まる白紙の少女時代はるばる伴れて来られ、そのまま牢獄へぶち込まれて直ちに機械につけられる。そうして寄宿舎の制度、教育等、彼女を取りまくすべての周囲は何一つとして中性的に感化づけぬものはない。あらゆる欲望の去勢!実に我ら労働者は人間本然の慾求である性慾すらも、権門勢家のために略掠されているのだ。

工場とは一個の大きな蜂の巣である。そうして女王資本家と少数の家臣等のために、性慾や生活慾望を感じない処の働き蜂が多数雲集してし孜々(しし)として働いている。

ああ!憎むべき資本主義は遂に人間を昆虫へまで引き下げた。


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