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憩いのブログ

思いついたことを書いていきます。

スーパーLSDの効き

2012-01-21 16:53:07 | クルマ

自分の車につけるつもりはないけど、スーパーLSDについて興味がわいたので考えてみました。

よくブログなどで見かけるのは、バネのプリロードだけで作動しているというような記事です。
しかし、それは違うなと思ったわけです。

スーパーLSDはシンプルでありながら、それなりの効きを得ることができる可能性のある構造です。
ですが残念ながら、実際の効きは弱いようです。おそらく、その理由は3点あります。
a. 摩擦部分の面積が少ない(1面しかない)ので熱・磨耗に対して不利であること。
b. 1面の摩擦面で強い差動を得るには大きな圧着力が必要ですが、それに必要な部材の強度確保が困難なこと。(テーパー面だと差動力を得やすいのですが、強度の確保が難しい)
c. 一般ユーザーの使用にあわせた。(一般的な走行での扱いやすさ重視。サーキットを走ったり、ドリフトしたりするのは一部のユーザー)
まあ、cが本命でしょうね・・・。

だいたいのブログにはバネによるプリロードと図のB部による摩擦力にしかふれてないです。でも、これだけでは摩擦力(=差動力)は一定なのでトルク感応型とはいえません。

A部を考慮する必要があるのです。

ギヤの形状は根元が太く、先端は細くなっています。トルクがかかると中央のピニオンギヤが上方向に動きます。そうすると、サイドギヤは外側に押し付けられます。
原理としては、機械式LSDのピニオンシャフトが左右のプレッシャーリングを押し広げるのと同じです。

スーパーLSDと機械式LSDの効きについて比較してみます。

Step1 トルクを掛けることにより、プレッシャーリング(サイドギヤ)を外側へ押し付ける力を計算してみます。
ピニオンギヤ上向きの力をFa、歯の角度をα(アルファ)とすると、歯面に垂直な力はFa/cosαとなり、押し付け力は Fa/cosα*sinα、となります。


ただし歯面に摩擦力が作用し、差し引く必要がありますので、これを計算します。
なつかしの式 F=μN=μ*Fa/cosα です。 (N:垂直効力)
ということで、
正味の押し付け力=押し付け力-摩擦力=Fa/cosα*sinα-μ*Fa/cosα*cosα
=Fa/cosα(sinα-μcosα)

力Fと摩擦係数μはLSDの種類による差はないものとし、μ=0.1として比較すると、
スーパーLSD α=20° ⇒ 押し付け力=0.26F
機械式LSD α=45° ⇒ 押し付け力=0.90F 
(機械式でもテーパー形状のものを介して左右に押し付けるメカニズムは同じです)

となり、スーパーLSDの圧着力は機械式LSDの1/3~1/4程度ということがわかります。

Step2 B部です。ここも機械式LSDと比較したいと思います。
特徴としては、スーパーLSDはテーパー1面、機械式LSDは複数面となっています。
摩擦板のμはどちらも同じとします。
摩擦板の枚数や有効半径で効きが左右されますが、正確な数値がわかりませんので推測値での計算となります。

まずスーパーLSDから。
摩擦面のテーパー角をθとします。
水平方向の押し付け力Fgであれば、面直方向の圧着力はFg/sinθになります。

(図はGKN社HP <http://www.gkndriveline.com/drivelinecms/export/sites/driveline/downloads/datasheets/Super_LSD.pdf> から引用)
A部の計算結果からFg=0.26F、図からθ=23°なので、
0.26F/sinθ=0.26F/sin23°=0.67F
有効半径はネット上の写真から推測して約50mmなので、
差動トルクは、圧着力*有効半径*摩擦面数=0.67F*50=33.3
左右で2倍して、33.3F*2=66.6F

つづいて機械式LSD
摩擦板の枚数は、ロードスター用で一般的なマツダスピードと同様に右側IN2枚+OUT2枚、左側IN2枚+OUT2枚で計算してみます。つまり摩擦面は片側4面ということになります。
機械式LSDではテーパーでないため、水平方向の押し付け力がそのまま面直方向の圧着力になります。
有効半径はまたしてもネット上の写真から推測して約40mmなので、
差動トルクは、圧着力*有効半径*摩擦面数=0.90F*40*4=144F
左右で2倍して、144F*2=288F

プリロードは考慮していませんが、どちらのタイプも調整可能なので、チューニング要素という位置づけとしました。(メンドクサイ)
ということで、スーパーLSDは機械式LSDの1/4程度の効きであることがわかりました。
比較結果は、妥当なところでしょうか。一般ユーザー向けとマニア向けを比較すること自体無理があります。サスペンションなんかがいい例でしょうね。

ちなみに摩擦面のテーパー角を23°⇒5°に変更してやると、機械式LSD並みの効きが得られるはず。

(追記)PDFの資料をよく見ると、テーパー角は信頼性から20°までと書いてありますね。



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