日米欧の超金融緩和策による資金流入で投機マネーが流れ込み、インフレやバブルのリスクが高まる新興国で、利上げによる金融引き締めの動きが広がっている。中国の人民銀行(中央銀行)が19日に2年10カ月ぶりの利上げ決定に踏み切ったが、今後も段階的に引き締めが続くとの見方が多い。その結果、新興国経済が停滞すれば、輸出主導でかろうじて「足踏み状態」を保っている日本経済が深刻な打撃を受けるのは避けられない。
◇
「消費者物価指数など重要指標の発表を控えたタイミングで中国が利上げしたのは、サプライズだ」
中国の利上げ決定から一夜明けた20日、市場関係者は、驚きさめやらぬ表情でこう語った。
同日の東京株式市場の日経平均株価終値は、前日比157円85銭安の9381円60銭と今月4日以来、半月ぶりの安値に下落。一時は222円安まで下げた。中国の利上げで景気減速の懸念が高まり、自動車など輸出関連株や商社など貿易関連株などが幅広く売られたためだ。
新興国は金融引き締めを通じて景気過熱の抑制に乗り出しており、景気回復の道筋が見えず、“金融緩和合戦”を繰り広げている先進国とは対照的だ。
新興国の利上げに対しては「現地の企業融資が冷え込み、経済活動が鈍化する」(市場関係者)との懸念が強い。
これに対し、中国は格差是正や環境重視を柱に据えた2011~15年の経済政策方針「第12次5カ年計画」草案を採択するなど成長との両立を目指している。しかし、これまでの過熱抑制策で、景気は減速し、すでに日本からの輸出は停滞し始めている。
8月の鉄鋼貿易実績によると、中国向け輸出量は前年同月比2・7%減の60万7千トンと、2カ月連続で減少した。
他の新興国向けも鈍化している。日銀によると、今年7~9月期の東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国向けの実質輸出は、前年同期比0・4%増。4~6月期の同9・0%増から落ち込んだ。
日本政府が19日の月例経済報告で景気判断を「足踏み」に1年8カ月ぶりに下方修正したのも、輸出の鈍化が大きな要因だ。
「米国経済が減速する中、新興国向け輸出が頼みの綱だけに、そのダメージは大きい」(エコノミスト)。エコカー補助金制度の終了で国内市場の落ち込みが避けられない自動車メーカーは「新興国の金利の上昇は間違いなく、新車の購入に響く」(大手)と、懸念を隠さない。
日銀の白川方明(まさあき)総裁がすでに「後ずれ」を認めた景気回復やデフレ脱却に向けたシナリオが大きく崩れる懸念もある。
◇
「消費者物価指数など重要指標の発表を控えたタイミングで中国が利上げしたのは、サプライズだ」
中国の利上げ決定から一夜明けた20日、市場関係者は、驚きさめやらぬ表情でこう語った。
同日の東京株式市場の日経平均株価終値は、前日比157円85銭安の9381円60銭と今月4日以来、半月ぶりの安値に下落。一時は222円安まで下げた。中国の利上げで景気減速の懸念が高まり、自動車など輸出関連株や商社など貿易関連株などが幅広く売られたためだ。
新興国は金融引き締めを通じて景気過熱の抑制に乗り出しており、景気回復の道筋が見えず、“金融緩和合戦”を繰り広げている先進国とは対照的だ。
新興国の利上げに対しては「現地の企業融資が冷え込み、経済活動が鈍化する」(市場関係者)との懸念が強い。
これに対し、中国は格差是正や環境重視を柱に据えた2011~15年の経済政策方針「第12次5カ年計画」草案を採択するなど成長との両立を目指している。しかし、これまでの過熱抑制策で、景気は減速し、すでに日本からの輸出は停滞し始めている。
8月の鉄鋼貿易実績によると、中国向け輸出量は前年同月比2・7%減の60万7千トンと、2カ月連続で減少した。
他の新興国向けも鈍化している。日銀によると、今年7~9月期の東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国向けの実質輸出は、前年同期比0・4%増。4~6月期の同9・0%増から落ち込んだ。
日本政府が19日の月例経済報告で景気判断を「足踏み」に1年8カ月ぶりに下方修正したのも、輸出の鈍化が大きな要因だ。
「米国経済が減速する中、新興国向け輸出が頼みの綱だけに、そのダメージは大きい」(エコノミスト)。エコカー補助金制度の終了で国内市場の落ち込みが避けられない自動車メーカーは「新興国の金利の上昇は間違いなく、新車の購入に響く」(大手)と、懸念を隠さない。
日銀の白川方明(まさあき)総裁がすでに「後ずれ」を認めた景気回復やデフレ脱却に向けたシナリオが大きく崩れる懸念もある。