
『ブラック・ダリア』
ジェイムズ・エルロイ/ 吉野 美恵子訳
”Black Dahlia”by James Ellroy(1987)
1994年・文春文庫
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「わたしもベティもレズなんかじゃなくて、ノーマルなバーで食事をおごってもらったりしてただけよ。
二人とも文無しで、おまけにハイになってたもんだから。
一度だけ映画であんなことをしただけ。
これがもし新聞に出たら、あたし、パパに殺されちゃう」
私はミラードを盗み見て、真に受けたなと見てとり、そしてこの事件におけるレズがらみの部分は一から十までまやかしなのだと、直感的にそれを強く感じたのだった。
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小説っていうのは、自分からその世界に入っていく必要があって、そこがTV、ラジオ、映画との大きな違いな訳です。
10年ぶりにダリアを読んだが、エルロイの放つ毒気に打たれ、嬲られ、ヘロヘロになりつつ、それでもまたLAに、「三十九丁目とノートンの角」に戻っていく毎日。
ああ、なぜ、またこの本を手にとってしまったんだ。
読み終えるのに強い精神力を要した。
堂本つよしの正直しんどい。
『ブラック・ダリア』はジェイムズ・エルロイの7作目で、俗に言う「暗黒のLA四部作」の1作目にあたる。
1947年に実際に起こった事件--ロサンゼルス市内の空地で女性の惨殺死体が発見され、ブラック・ダリア殺人事件と呼ばれたが、結局犯人は捕まらず迷宮入りした--に触発され、フィクションでその裏側を描ききった。
エルロイは48年生まれなので、39歳の時に、自分が生まれた1年前に起こった事件をモチーフにして、この作品を産み落としたことになる。
これが、そんじょそこらの暗黒じゃない。
胃もたれがします、いやマジで。
そういえば、1997年に映画化された『LAコンフィデンシャル』がアカデミー最優秀脚本賞を獲ったときの、エルロイのインタビューを思い出した。
こんな感じ。
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インタビュアー:
かつて「私の本は濃密かつ複雑すぎてスクリーンへの翻案には向かないと思う」と発言していますが、今回の映画化を経て、やや楽観的になったのでは?
エルロイ:
それは違う。あんなに才能ある映像作家たちに再び恵まれることはないだろうね。1作を除いて、短篇も含めた私の全作品の映画化権がハリウッドに買われているが、正直言って『LAコンフィデンシャル』ほどの質の高い作品には二度と巡り合えないと思っているよ。
インタビュアー:
『ブラック・ダリア』を、『セブン』のデイヴィッド・フィンチャー監督が手がけたがっているそうですが、それでも?
エルロイ:
無理だね。
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言うよね~。
でもほんと、これ映像化は無理だよね~、普通。 (吐きまっせ)
2006年にブライアン・デ・パルマが本作を映画化した時、エルロイはどう思いながら観たんだろうか。
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ブラック・ダリア (文春文庫) |
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