『グッバイ、レーニン!』
"Good Bye Lenin!"
監督:ヴォルフガング・ベッカー
脚本:ベルント・リヒテンベルク、ヴォルフガング・ベッカー
2003年・独
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東ドイツ在住のクリスティアーネは、夫に西ドイツへ亡命される。
以来、家族と東ドイツに取り残されたクリスティアーネは熱烈に社会主義に傾倒していた。
そんな中、息子アレックスは、東ドイツ建国40周年記念日の夜、母に内緒で反体制デモに参加する。
母クリスティアーネは、街中で警官ともみあうアレックスを目撃し、ショックによる心臓発作からその場で倒れてしまう。
昏睡状態となったクリスティアーネは医者からは「二度と目覚めない」と診断されたが、8ヶ月後、病院のベッドで奇跡的に目を覚ます。
しかし、母が昏睡する間にベルリンの壁は崩壊、東ドイツから社会主義体制は消え去っていた・・・。
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母の愛に報いようにも、どんだけやったって結局返しきらないからね。
子どもたちは、それぞれのやり方でやれる事をやるしかニャい。
そんな訳だからして、目覚めた母のために旧東ドイツの生活を再現すべく奮闘する息子・アレックスの勢いはとどまる所を知らず・・・
途中からほぼコントの域に達するのだが、自分なりのやり方で母に愛を返すという意味で、彼の行いは完全に正しい。
しかし、このストーリーに深みを与えているのはアレックスの
「いつの間にか、母のために東ドイツを再現する作業は、僕の理想の東ドイツを表現する活動に変っていった」
という台詞だろう。
母を喜ばす作業は、かつて親不孝を重ねた彼にとって、絶好の免罪符だ。
でも、それだけじゃない。
かつて東ドイツ政府に対する反体制デモに参加したし、ベルリンの壁崩壊後には他の若者たちと同様、西ドイツから流れ込んできた資本主義の風を謳歌したアレックス。
しかし、その反面、彼は母が愛した旧東ドイツの生活を愛していた自分に気付いたんだと思う。
西側の資本主義なんかに負けやがって、ふざけんじゃねーよと。
俺らが今まで憧れたり親しんだりしてきたもの全ては、一体何だったんだと。
そういう失意が彼を駆り立てた部分はあるかも新米(しんまい)。
それにしても、アレックスの恋人ララが病室でお母さんと言い争うシーン。
あの、ほんの3~4秒を見逃したら大変ですね。
あそこでコーラを飲んでたりなんかして画面から目を離した日には、最期のシーンでお母さんが言う
「素晴らしいわ」
の、一体何が素晴らしいのかを180度間違えちゃう。
えらいこっちゃ。
アレックスを演じたダニエル・ブリュールは、若い頃のジョン・ヴォイトに感じが似てる。
特に『オデッサ・ファイル』(1974年)に出てた頃の。
あれも、思い悩むドイツの若者の話だったのからかな。
この思いつめた感じがドイツの若者っぽくて良い。
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