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武蔵国鉢形城を訪ねる

2023-07-13 16:25:33 | 旅行

 今回から、戦国期、北条氏の北関東の拠点鉢形城をご紹介します。広大な自然の地形を活かした平山城、一度では難しいので曲輪毎に何回かに分けて投稿して参ります。本初回は鉢形城全体について写真や図を交えて迫ってみたいと思います。

    

 鉢形城は、戦国時代の代表的な城郭の一つです。荒川と深沢川に挟まれた河岸段丘、その上に地形を巧みに利用して築かれたお城、いわゆる天然の要害です。その様子を戦国時代の連歌師・万里集九は「鉢形の城壁は鳥も窺い難し」と謳っています。

 また、この地は北に上州・越後、西に信州方面を望む、重要な交通の要衝でもありました。

 写真は荒川左岸から見た本曲輪です。

    

 

 築城は、文明8年(1476)、関東管領・山内上杉氏の家臣・長尾景春によると伝えられています。2年後、関東管領・山内上杉顕定が入城し、更に永禄元年(1558)頃、小田原の北条氏康の四男・氏邦がこの地域の豪族・藤田氏に婿入りして、その後永禄七年(1564)頃、鉢形城に入城します。この氏邦によって、城郭が整備拡充され現在の大きさになりました。

 図は現在の鉢形城跡全景です。

    

 下の図は荒川、土居沢、関山川、車山・愛宕山に囲まれた鉢形城下です。

    

 鉄砲小路・鍛冶小路とその名のとおり城の南には火を使う工房が多くありました。写真は山頂に愛宕神社を祀った愛宕山です。

    

 下に描かれたものは氏邦が使用した印章です。翕邦挹福(ゆうほうきゅうふく)と書かれ、「邦(くに)を翕(あつ)めて福を挹(と)る」という意味です。本人の「邦」の字と妻である大福(おふく)御前の「福」の字が使われています。氏邦は愛妻家であったのかなとも思えます。因みに、印上部の動物は右が文殊菩薩の乗る獅子、左が普賢菩薩の乗る象とのことです。

    

 戦国時代も後半の佳境に入る頃、関東地方では、越後の上杉謙信、甲斐の武田信玄、相模の北条氏康、その三者による三つ巴の攻防戦が繰り広げられていました。その様な中、鉢形城は越後や甲斐の押さえと、北条氏自身の上州進出の拠点として重要な役割を担っていました。

    

 時は流れ天正期に入り、天正元年(1573) 武田信玄が亡くなり、天正六年(1578)には上杉謙信が亡くなり、更に天正十年(1582)本能寺の変で織田信長が亡くなりますと、豊臣秀吉の時代に入ります。北条氏は上州の沼田地方をめぐる真田氏との衝突から、秀吉に関東出陣の口実を与えてしまいます。そしてついに天正十八年(1590)小田原合戦が始まります。22万という秀吉の軍勢が関東に押し寄せます。鉢形城においては、前田利家、上杉景勝等の率いる五万の北国軍に包囲されます。氏邦は籠城して一ヶ月余りよく戦いましたが、6月14日、城兵、家臣の助命を条件に開城しました。その後、徳川氏が関東入国に伴いこの地を統治しました。

 下図は鉢形城を包囲した北国軍の状況です。

    

 下の写真は本多忠勝が28人持ちの大筒をその山頂から大手に向かって打ち放った標高226.8mの車山。

    

 車山の名称の謂われは、山頂からは鉢形城の曲輪がよく見えることから「くるわやま」と呼び車山となったとする説と、本多忠勝が28人持ちの大筒を山頂に据付けた際にできた轍からその名が付いたという説があります。

 その後、鉢形城は廃城となった為、江戸時代以降の造成等による破壊から免れ、土塁、堀、曲輪等が戦国時代の形状をよくとどめていることから、昭和七年に国指定史跡となりました。その広さは24ヘクタール、東京ドーム5ケ分です。

    

 因みに鉢形城を舞台とした文学作品が四つあります。

1.田山花袋の五言絶句の漢詩 ‥‥ 「襟帯山河好 雄視関八州 古城跡空在 一水尚東流」石碑が本曲輪にあり、本曲輪編で解説致します。

2.司馬遼太郎の「箱根の坂」 ‥‥ 北条早雲の物語です。文庫本(上・中・下)の下の「高見原」で鉢形城が出てきます。

3.井伏鱒二の「武州鉢形城」 ‥‥ 小田原合戦のきっかけとなった北条氏の名胡桃城奪取を誰が首謀したかという内容です。

4.池波正太郎の「忍びの旗」 ‥‥ 亡父の仇と知らずその娘を愛してしまい、そのため流転の生涯を生きることとなった忍びの物語です。小説前半の舞台が小田原合戦時の鉢形城です。娯楽としては大変面白く、お勧めの一冊です。

 

 以上、大変雑駁ですが鉢形城の概要です。次回から各曲輪についてご紹介して参ります。梅雨とはいえ晴れれば猛暑、今日は晴れず降らず良い撮影日になりました。


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