男鉄塔と女鉄塔

2020-04-28 20:10:26 | 日記
用語が難しすぎて取っ付きづらい!

鉄塔に興味が湧いてきたぞ!ちょっと調べてみようかな…と思った時に挫けてしまうのは用語の難しさのせいだと思う。専門の勉強でもしない限り一生聞くことのない用語がバンバン出てきてしまうからだ。
私も初めの頃は聞き慣れない用語に泣いた…。
ACSRって何……長幹碍子って何なのよ……!

でも、正式名称ではなく、鉄塔ファンの間で使われている用語って意外とゆるいのです。なんていうか、「鉄塔のあだ名」みたいな感じ。
何かに見立てることも多くて、その対象は動物だったり人間だったり、有機的な何かに例えることが多い気がする。
鉄塔って限りなく無機質で実用的なものなのに人間に例えちゃうなんてね。


意外と浸透!鉄塔の「あだ名」

けっこうその「あだ名」ってファンの間では浸透しているのだけれど、その元ネタになっているのが「鉄塔武蔵野線」という小説だ。銀林みのるさんという方が書いた小説で、映画化もされた。(というか、鉄塔武蔵野線がきっかけで鉄塔ファンになる方が多い)

少年二人が鉄塔を辿る話なのだが、二人とも鉄塔の知識はまるでない。だから、子供目線のオリジナル鉄塔用語で描かれている。
例えば、「男鉄塔」と「女鉄塔」はこんなふうだ。

男鉄塔

「引き続く赤白鉄塔は男性型鉄塔 で、碍子連がV字吊なのでわたしは不満でした。」(P9から引用)

女鉄塔

「次の鉄塔は女性型鉄塔でした。というのは、電線を繋ぐ碍子の棒状連結体(碍子連)が前後に開いており、碍子連の先端どうしを結ぶ電線(ジャンパー線)の膨らみの作る弧が、睫毛の長い女性の大きな目や装身具を連想させたからでした。女性型鉄塔は見る角度によって多様に表情を変化させます。その鉄塔はわたしに中背の少女を想像させました。完全な大人というには早い、大人になりかかっているような、まだはにかんだ様子が見受けられるのです。」(P7から引用) 
「電線を繋いでる碍子が前と後ろの両方に付いてる。下にぶらさがってるんじゃなくて、碍子が電線の向きに引っ張られてる。ああいうのが女鉄塔だ。」(P46 から引用)


ちなみにこれが男鉄塔(右)と女鉄塔(左)。
送電線と鉄塔本体を絶縁する碍子(がいし)の取り付け方が違う。



なんとなく、分かったような……分からないような……。
分からなくても、こんな用語があるんだ!と知るだけで鉄塔に親しみが湧いてきませんか?
ちなみに、男鉄塔の正式名称は「懸垂型鉄塔」、女鉄塔は「耐張型鉄塔」。これを最初に知ってもなかなか覚えられないと思いますが、男鉄塔・女鉄塔ならなんとなくしっくりくる気がするのです。


他にもまだまだ!鉄塔の「あだ名」たち

男鉄塔・女鉄塔の他にも、猫型鉄塔、ドラキュラ型鉄塔、ジャミラ型鉄塔、ゴジラ型鉄塔、コックさん型鉄塔、とんがり帽子型鉄塔……などなど、いろいろなものに例えた鉄塔のあだ名があります。
このブログでもまた紹介していきたいと思いますが、オリジナルのあだ名をつけるのも楽しいです。
みなさんも、ぜひ鉄塔を何かに見立てて遊んでみてください!(思いついた暁には、コメント欄でぜひぜひ教えてくださいね〜!)

なんで鉄塔がすきなんだろう 2

2020-04-21 15:02:06 | 日記
鉄塔を好きになったきっかけの話の続き。
書き始めたら思いの外長くなってしまい(鉄塔の思い出語らせてくれおじさん)、こんなの1回で読まされたらたまったもんじゃないな…と思ったので分けることにしました。
前回の話はこちら


02. 鉄塔の情緒を感じた高校時代


小学生以前から暗かった私だが、最も暗かったのが高校時代だ。不登校ではなかったものの、週に1度は遅刻・早退・欠席のいずれかをしていた。

1年生の時が一番ひどく、友達はゼロ。部活にも入らず、1日1冊図書館で本を借りて読んでいた。小学生並みに家に帰るのが早く、15時に帰宅しては本を読んだり映画を見たりしていた。(学校であまりにも会話がないため、帰宅後にハイテンションで母に話しかけ続け、「あんた、クスリでもやってんじゃないでしょうね?!」と薬物の使用を疑われたのもこの時期)

当時、「式日」「Jam Films」「花とアリス」などの岩井俊二監督の作品を立て続けに観て(おそらくWOWOWで特集していたのだと思う)、その流れで「リリィ・シュシュのすべて」も観た。ストーリーがというよりは、鉄塔が登場するシーンがただただなんとなくいい雰囲気だなと感じて、もしかしたら鉄塔のある風景が醸し出す情緒が好きなのかもしれないと気づいた。(実は登場する鉄塔は送電鉄塔ではなく携帯電話の基地局なのだが。)

青春時代の、のんびりしているんだけどどこかで常に感じている焦燥感や絶望感。映画の中のそんな空気と、早退して自転車で帰った時に見た鉄塔や、田んぼの真ん中を突き抜ける送電線が醸し出す空気が重なって見えて、「言葉にできないけどグッとくる〜〜」と思いながら日々を過ごしていた。



小学校時代に気になっていたものの、好きか嫌いかなんて考えたこともなかった鉄塔。映画をきっかけに、もしかしたら好きかもしれない…とぼんやり思ったのがこの時期だった。(余談だが、「来年植えよ〜♪」と思いながらケシの種を集めていたら、父に「アヘンでもつくるんじゃないだろうな?!」と薬物の製造を疑われたのもこの時期)

つづく

なんで鉄塔がすきなんだろう 1

2020-04-15 23:39:39 | 日記
なんで鉄塔が好きなんですか?

よく聞かれる質問ランキング、堂々の第1位の質問だ。
ひとことで言ってしまえば、見た目がかっこいいから。わたしの価値観の問題だし、それ以上の答えはないのだが、好きになったきっかけというのはいくつかある。

今回は、どんなきっかけで鉄塔が好きになって、なぜ本を作っているのかについて、思いつく限り全部書いていこうと思う。


01. 鉄塔を意識した小学校時代


小学生の時、雨が降るたびにお腹が痛くなった。
仕組みとしては、こんな感じ。

雨が降る → 肌寒い → お腹が冷える → お腹が痛い

これが続くと、雨の日になるとまたお腹が痛くなってしまうのではないかと不安になり、その不安が原因でお腹が痛くなってしまう。完全に負のループだ。

雨が降る → またお腹が痛くなるのでは…という不安 → お腹が痛い

パブロフの犬的な理論で、雨が降るだけでお腹が痛くなる。本当につらかった…。

小学生というのは、学校のトイレでウンコをしただけでバカにされる。下手をすると、卒業まで、いや、中学に入ってもバカにされ続ける恐れがあった。だから極力学校ではしないように、便意を催しても我慢していた。そうして我慢して我慢して、もう限界!という状態のまま下校する。本当につらかった…。(つらすぎて、1文書くたびに「本当につらかった…」と書かざるをえないので、省略します。)
そんな状態で下校している最中、「あ、もう限界だ…1歩でも歩いたら人生が終わるわ…」という瞬間があった。
その時に仰いだ空に見えたのが鉄塔(土崎支線No.18)だった。人間は限界に達すると、対峙している問題とは全く関係のないことを考えるのかもしれない。
「なんか、雨の日って鉄塔の上の方からジージー音がするな…何の音なんだろう」と思った。それどころではないはずなのに。

ところで、鉄塔には「コロナ放電」というのがあって、雨や霧の日に送電線から電気が放出されることがある。その時に鳴る音が、先ほどの「ジージー」という音なのだ。

そういうわけで、お腹が痛くなるたびに、いや、雨が降るたびに「あの音は一体何なんだろう」と思い続けていた。しかし、そのたびに「いやいや、それどころではない!」と我に返り、謎の音のことなど忘れるのだった。

その疑問が解け、「コロナ放電」という言葉を知ったのは大学生になって、鉄塔の本を作り始めてからだったが、小学生〜高校生あたりまで雨のたびにひたすら気になり続けた鉄塔の印象は、深く印象に残ったのだった。

つづく



鉄塔ファンとは

2020-04-11 00:19:34 | 日記
4回目の投稿にして自己紹介をしようと思います。
そもそも鉄塔ファンとは一体何なのか…、作っているのは何者なのか…ここまで書いてこなかったなと思いまして。


冊子・鉄塔ファン



冊子「鉄塔ファン」はただの鉄塔好き・鉄塔ファンによる、鉄塔の超入門冊子です。
おもにネットや本で調べた情報、鉄塔の建設現場を見学させていただいて得た情報、鉄塔好きの方にインタビューして得た情報などをもとに作っています。
鉄塔って一体何なの…という基礎中の基礎から、作りかた、楽しみかたまでを文章・漫画・イラスト・写真などあらゆる手法を用いて表現しています。



プロの目線ではなく、いちファンとして作っているため、超超入りやすい内容となっております。(たぶん)


制作者・鉄塔ファン

そして、その「鉄塔ファン」を作っている鉄塔ファンって何者なんだという件。
分かりづらくてすみません。去年まで会社員をしていたもので、名前を出せずに「鉄塔ファン」名義で活動をしておりました。

わたしが鉄塔の本を初めて作ったのは2008年。当時、美術系の短大に通っており、卒業制作として1冊の本を作ったのでした。その後編入した大学でも卒業制作として鉄塔の入門本を作りました。


そのほかに、鉄塔の「結界」を擬似体験できるプロジェクション作品も展示しました。

それ以降、実は東日本大震災のあとあたりから(原発の事故もあり)、なんとなく発信することはせずに写真を撮りためているのみでした。
ところが、2017年に路上観察系の作家たちのグループ展に誘ってもらって以来、また制作をするようになりました。そして、マニアフェスタなどのイベントへの出展が増えて今に至ります。

今後ですが、冊子作りはもちろん続けていきたいのですが、このままだと割と早めにネタがなくなってしまうので、情報集めや取材(現場見学)なども行っていきたいです。
そして、電線などの近いジャンルのマニアの方々とは知り合う機会も増えてきたのですが、なぜか同じ鉄塔好きの方と知り合う機会が全然ないので、そういった機会も増えたら嬉しいです。
どうぞ、よろしくお願いいたします。