てつやんの日々尽力

健康第一をモットーに、体にいい食のこと、美しい風景、読書等、自分がいいと思ったことを記録していこうと思い、開設しました

「長い道」・「少年時代」の舞台を訪ねて =入善の章その二=

2023年02月02日 | 日記

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入善町吉原集落の西端に「杉沢の沢スギ」という天然記念物の杉林がある。1967年(昭和42年)と2001年(平成13年)の航空写真を比べてみよう。今入善町の沢スギはこの約2.7ヘクタール(参考までに甲子園球場は約3.9ヘクタール)しか残っていないが、かつてはあいの風とやま鉄道の西入善駅から、今のサンビレッジ(旧横山小学校)あたりの線路より北側に点在しており、その面積は総計約130ヘクタール(甲子園球場の約33倍)あったが、圃場整備(耕地の区画整理や農道の整備)により、1975年(昭和50年)には今の約2.7ヘクタールを残して姿を消してしまった。

画像上:1967年入善付近航空写真・画像下:2001年入善付近航空写真 ※国土地理院の航空写真を使用。昔と今を比較するために、地図に少し加工を入れています 

この杉林は天然の防風林や防砂林の役割を果たし、人々はこの沢から出る湧き水を生活用水や農業用水として利用し、伐採した杉材を住宅や、米作りの稲架(はさ)掛け等に利用し、枯枝は焚き木に、落ち葉は杉葉(スンバ)と言って着火材料として使用された。また子供達にはターザンごっこ等の遊び場だったということで、人々との生活に密接な関係があった。兵三先生も「長い道」の中で「浜見集落(吉原集落のこと)の入口には杉並木があり」と書いているが、これは沢スギのことである。1967年(昭和42年)の航空写真を見れば分かるが、吉原集落の入口あたりに沢スギがあるのが分かる。

画像:左から杉沢の沢スギ1と2・杉沢湧水

入善駅から北東へ3キロメートル程行くと、上に書いたサンビレッジ(旧横山小学校)がある。この東側の道は映画版「少年時代」のロケ地として使われた。撮影期間中舗装を剥がし、草を植えて当時に近い様子を再現したとのことである。

※画像:サンビレッジ東側の道

漫画版「少年時代」の最後に、進一少年が汽車で東京へ戻る風景の中に散居村がある。黒部川扇状地にも散居村があり、列車で東京から富山へ来る場合、昔は泊−入善間の車窓からも見えた。A先生は富山に帰省した際にこれを見て、「ああ富山に帰って来たのだ」と感じ、その風景を描いたのではと感じた。「長い道」には出てこないが、兵三先生にも同じ思いがあったのではと感じた。この風景も富山らしい場所なので調べてみた。

黒部川扇状地の散居村は、江戸時代初期の新田開発とともに始まり、加賀藩の方針や治水対策と共に現在のような形になった。美しい扇央の散居村は、人々が自然環境に適応しながら大変な努力を積み重ねて作り上げた素晴らしい遺産なのだ。1965年(昭和40年)くらいまでは入善駅から泊駅間の広範囲で散居村が見ることが出来たが、今は圃場整備や道幅の拡張で狭範囲になってしまった。上記の入善付近航空写真1967年と2001年を見て比較してみよう。

舟見にある舟見城跡からは、今でも広範囲の散居村が見られる。こちらも圃場整備や道幅の拡張等で昔のままではないが、美しい散居村の集落と、その先には日本海と能登半島が見える。この風景はいつまでも残して欲しいと感じた。

画像上:1967年舟見付近航空写真・画像下:2003年舟見付近航空写 ※国土地理院の航空写真を使用。昔と今を比較するために、地図に少し加工を入れています

 

画像:左から10月の舟見城跡から見た散居村・5月の日の入り前の舟見城跡から見た散居村

地理の取材をし、実際の風景を見て余所者である私はこう感じた。いくら農業生産技術が発達しても、水の恵み(量だけでなく一定の温度で湧き出ること)や気象に関しては、今も昔も神頼みであると先程書いた農業を営んでいる方がおっしゃっていた。水資源が豊かなことや、農業に適した気象条件に恵まれているのは当たり前であると思いがちだが、黒部川扇状地は全国的いや世界的に見ても恵まれた場所である。この世界的にも恵まれた自然環境や、富山らしい風景をいつまでも守って欲しいと願うのである。

富山湾と入善沖の日本海は、北アルプスから川を通じてミネラルの多い水が流入し、天然の生簀になっている。豊かな自然の恩恵が富山に美味い食材をもたらしているのだ。ちょうど新米の時季だったので、この感動を味わえるのは日本人で良かったと実感した。黒部川扇状地の湧き水で炊いた入善産の新米と、入善沖の日本海で採れたキトキト(富山弁で新鮮なという意味)の魚と、入善産味噌の味噌汁は最高のご馳走である。

画像:入善産新米と入善産ブリと入善産味噌の味噌汁

=入善の章その三=へ続く

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