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お薦め映画 凄い映画だった@「ドッグヴィル」

2007-10-21 15:21:48 | 映画
ドッグヴィル

ラース・フォン・トリアー監督:ニコールキッドマン主演

舞台はロッキー山脈の麓、孤立した村「ドッグヴィル(犬の町)」住人は23人。そこへ一発の銃声の後美しい女性(グレース/ニコール・キッドマン)が迷い込んで来る。女性を追うように現れたギャングの車からとっさに彼女の身を庇ったトムは彼女を村で匿うよう住民に問う。今まで他人を受け入れた事の無い村人にとってグレースの存在は刺激的でもあり脅威でもあった。彼女を村に置くかどうかは2週間のテスト期間をおいて投票で決める事とする。全員一致でなければ彼女は村から追い出される

かなり変わった映画である。
スタジオに作られたセットは床に白く描かれた道と家、そして何を示すのかを表す文字。必要最低限の道具のみで構成された舞台セット
撮影予定は6週間、役者16名はその中でのみ演じる。
役者の真のイマジネーションが問われる。存在しない壁に向かい、存在しない畑を耕し、見えるものを見ないでいる。カメラは監督自らが背負い撮影する。カメラが捕らえていなくてもその先の空間には人が住み生活しているため常に16名の役者は舞台の上で演じ続ける。何もない空間に村を作りあげるのは役者のイマジネーションである。

ラース・フォン・トリアーは「ダンサー・インザダーク」の監督であり、その作風は重く暗い、そして救いがない程人間の本質をえぐる。
この作品も駄目な人は絶対に駄目だろうな。俺もどこか毛嫌いして敬遠していた作品。でも見て良かった。

物語は9つの章で綴られ、全編を通してナレーションが入る。淡々と
プロローグ:村とそこに住む人々の紹介
第一章:トムが銃声を聞き、グレースと会う
第二章:グレースはトムの計画に従い肉体労働を始める
第三章:グレースが挑発的な試みに喜びを見出す
第四章:ドッグヴィルの幸せな日々
第五章:とにかく独立記念日
第六章:ドッグヴィルが牙をむく
第七章:ついに嫌気がさしたグレースはドッグヴィルを去り再び新たな日を迎える
第八章:集会で真実が語られトムが退席する(だが後で戻る)
第九章:ドッグヴィルに待ち望んだ来訪者たちが現れ、映画は終わる


各章の始まりにその後を示唆するタイトルがつけられ、見るものはその展開を予感する。
長い長い物語の答えは第九章に語られる。

177分の長い映画ではあるがどんどん惹きつけられて、一気に見終わった。そしてグッタリ。 でも実に面白かった


それから続けて観たのが
ドッグヴィルの告白

メイキングである。セットの外に作られた「言論の自由/24時間OPEN」と書かれた小部屋。定点カメラが置かれており赤いボタンを押すとカメラが回る。そこで語られる役者たちの本音、あるものは憤り、ある者は家に帰りたいと嘆く、そしてある者は気の狂った監督とは二度と仕事はしないと言う。撮影が続くにつれ役者たちが精神的に追い詰められていくさまは実に生生しい。と言いつつみんなしっかり監督を愛しているのは分かる。
この作品に関われた事への誇りも感じる

だが一番追い詰められ、一番苦しんでいたのは実は監督だって事が凄く伝わってくる。興行的な心配、今自分がやろうとしている事への疑念後悔。役者たちのストレスを一身で受ける苦痛。主人公とリンクして追い詰められていくニコールの姿にさらに苦しむ監督。天才とは苦悩する人間、それでも尚前に踏み出す強い信念を持つ人間。
役者は言う「これは芸術フィルムか?」監督はうつむいて首を横にふる。

これは2本セットで観て欲しい。
そこから感じる感情は実は人間らしい感情のはずだから