モチベーションエンジニアリングによる企業革新
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「マネージャーの役割 モチベーションマネジメント(上)」
“あなたの部下は自分の役割や目標を納得しているか?”
部下に与えている役割や目標に対する納得感を高めてモチベーションを上げる8つの方法
○目標を明確にする:ゴールセッティング効果
・むやみに高い目標を設定したり、全ての社員に画一的な目標を与えればいいというわけではない。
・ 有効な目標設定にはそれなりの技術が必要
・ 一つ目の技術は、目標設定の水準
・ 二つ目の技術は、部下の能力の把握
・ 三つ目の目標設定技術、それは、より高い能力を持った部下に対するモチベーション施策
○上位の目的を示すことで業務を意味付ける:ラダー効果
上位の目的を示すことで、部下自身の業務を「意味付ける」ことは大変重要です。人は「意味」がないことに対して意欲を持つことは決してできません。部下が自分の仕事の意味を見失ってモチベーション低下に陥っている場合には、仕事を上位概念で捉え直させてあげることが必要です。上司自身も、目的や背景をしっかり伝えずに仕事をさせていないか、顧みてみる必要があるでしょう。
○業務の連関を実感させる:リンク効果
○ 意思決定に参画させる:コミットメント効果
○ 採用活動に参加させる:リクルーティング効果
○ 理想の対象者を具体化する:ロールモデル効果
・ 数値で表せる目標以外にも、部下には近い将来の目標とする姿を常にイメージさせてあげることが重要
・ ロールモデルを持った人の行動は大きく変わる。できるだけ身近な人物を設定し、対象者を具現化してあげられるのが理想。
・ 部下本人が「憧れを持てること」が重要
○ 「個性」「希少性」を見出す:オンリーワン効果
・発見した優れた部分は、部下にフィードバックされるべきです。部下が意識して人より頑張っていることであれば「上司はきちんと見ていてくれる」「分かってくれる人がいる」ということに喜びと更なる意欲を持つだろうし、もし本人も気がついていない魅力であれば、知らなかった個性を伸ばすきっかけとなります。
○ 役割演技で視点を移動させる:ロールプレイング効果
「マネージャーの役割 モチベーションマネジメント(中)」
“あなたは部下が何を求めているか知っているか?”
A ドライブモチベーション 8
B アナライズモチベーション 8
C クリエイトモチベーション 10
D ボランティアモチベーション 4
A「ドライブモチベーション」
自力本願で強くありたい。成功を収めたい。
周囲に影響を与えたい。
意志薄弱な状態や人への依存を避けたい。
KEY WORD 「勝 / 負」「敵 / 味方」
<UP>
・明確な目標やライバルが設定された時
・自分の影響力の大きさを実感できた時
<DOWN>
・権利や権限を剥奪された時
・周囲が他社の低い業績を容認したり、高い業績に対して無反応だった時
「ドライブモチベーション」の強い部下に特に有効な手法
■競争機会、競争相手を設定する:ライバル効果
「ギネス制度」
「ランキング」…「売上目標達成率」「新規開拓件数」「リピート率」「前月からのアップ率」
B「アナライズモチベーション」
様々な知識を吸収したい。複雑な物事を究明したい。
自信を持ちたい。
勢いだけで走ること・無計画な状態を避けたい。
KEY WORD 「真 / 偽」「因 / 果」
<UP>
・ 自分の能力や知識が高く評価され、自尊心が満たされた時
・ 興味のある対象を深く掘り下げる機会を与えられた時
<DOWN>
・ 一貫性のない矛盾した指示や期待にさらされた時
・ 思考より行動重視を強いられた時
「アナライズモチベーション」の強い部下に特に有効な手法
■専門家や経験者からの伝授、ノウハウを共有する:ナレッジ効果
・ ナレッジの機会は、ひとつには、個々人のスキルアップに向けて、外部講師や専門家の指導を受ける機会を設けることが有効です。具体的には、「専門知識や技能の習得」(財務知識やITあるいは語学や専門資格の取得支援)、「論理的思考能力や問題解決技法の習得」(行動の量よりも思考の質を向上させる)、「対人能力やコミュニケーション能力の開発」(従来のリーダーシップという範囲を超えた、他者との協働や関係構築能力の向上)、「キャリアデザイン支援」(自立促進に向けた意識付けの活発化など)。
・ 社内で成功事例やノウハウを共有するための機会も、「知る機会」として積極的に設けることが求められます。企業の競争優位性を確立する上では、個々人の持つ「暗黙知」を「形式知」化することが不可欠となるからです。
・ 専門家からの伝授にしろ、社内でのノウハウ共有機会にしろ、企業が学ぶ機会、知る機会を提供すること「=企業のビジネススクール化」が、今後、社員の自立促進と組織力強化を目的としたモチベーション向上に欠かせない要素
C クリエイトモチベーション
新しいものを生み出したい。楽しいことを計画したい。
自分の個性を理解されたい。
平凡であること・同じことの繰り返しを避けたい。
KEY WORD「美 / 醜」「好 / 嫌」
<UP>
・ 斬新なアイデアや視点が評価された時
・ 独自の発想やアイデアを周囲から期待された時
<DOWN>
・形だけの手続きや煩雑なルールに即した仕事をしなければならない時
・ 周囲が提案したことに無反応だった時
「クリエイトモチベーション」の強い部下に特に有効な手法
■表彰される機会、名前を刻む機会を設ける:スポットライト効果
D ボランティアモチベーション
KEY WORD「善 / 悪」「愛 / 憎」
<UP>
・周囲から頼られたり相談された時
・貢献への感謝や激励をもらった時
<DOWN>
・周囲が自分の貢献に無関心だった時
・ 不誠実な対応をされた時
「ボランティアモチベーション」の強い部下に特に有効な手法
■貢献実感を持たせる:サンクス効果
・多くの社員が熱意を喪失してしまう理由のひとつに、自分の仕事が「顧客」や「会社」に対してどのように貢献しているかを実感する機会がない、ということが挙げられます。
・「役割だから当然」というのでは、ボランティアモチベーションの強い部下の強力なサポート力を引き出すことができません。
・社員が貢献実感を持てるか否かは、企業が「顧客満足度の最大化」を実現する上では必要不可欠です。職場での取り組みが、その第一歩であると言えるでしょう。
「マネージャーの役割 モチベーションマネジメント(下)」
“あなたは部下を成功に導いているか?”
○ 途中目標を明確に設定する:マイルストーン効果
目標を達成した時の喜びは、次の目標に向けて高いモチベーションを発揮するための原動力となります。そうである以上、上司には、達成に至るまでの「道のり」をメンバーに示すことが求められます。具体的には、目標達成までの漠然としたプロセスを明確化し、途中途中に「マイルストーン」を置いて小目標を設定させることが重要となるのです。何をいつまでに達成すれば良いのか、という小目標の達成を積み重ねることが、最終的な目標や成果に近づくことになるからです。
○ 取り組みや結果を評価する:フィードバック効果
メンバーは常に「頑張っているつもり」「分かりやすく説明しているつもり」「計画を立てたつもり」です。しかし、実際には「つもり」なだけで、周囲の評価とはズレが生じていることも少なくありません。このズレを客観的に伝え納得してもらうためには、部下の仕事について正確に把握していなければなりませんし、何より上司自身が尊敬される仕事の進め方をしていなければなりません。そうでなければ、部下は「何も見ていないくせに」と反発を抱くだけとなってしまいます。
○ 成功事例やノウハウの共有機会を設ける:スクランブル効果
部下のモチベーションを触発するためには、個々人が知識を得たり学んだりする機会の提供、具体的には、社内で成功事例やノウハウを共有する機会を積極的に設けることが有効です。
成功事例やノウハウは、他者への共有機会がなければ、そのまま「暗黙知」として個人の中に埋もれたままです。しかし、機会が設けられれば、「成果が上がったのはなぜか」「そのためにどんな行動を心掛けたのか」「どのようなことが壁となり、それをどうやって乗り越えたのか」などを、本人が改めて意識し、考えたり分析したりすることとなります。成果に繋がる要因を抽出できて、そのナレッジが他者に共有されれば、それは、会社、職場、チームにとって希少価値の高い財産となります。更に、お互いの取り組みを共有しあえば、それだけ、改善、革新的な提案、売上の向上、効率化などが期待できるでしょう。場合によっては部署を横断することで、自分たちの部署に欠けがちなスキルや視点への気づきを促すことも可能です。
成功要因を知りさえすれば上手くいくというわけではないにせよ、仕事への気づきや触発という点においてだけでも、組織内のナレッジを共有する機会がもたらすものは大きいのではないでしょうか。
○ 同じ状況の他者との交流機会を創る:マッサージ効果
部下が抱えている悩みは、すぐに解決できることからできないことまで様々です。もちろん、上司として、部下の悩みを解決するための努力をする必要はありますが、それとは別に、似たような悩みをかかえる他者との交流機会が、解決の糸口になることもあります。部下が成長の過程で抱える悩みは大抵共通のものであり、同じ悩みを持つ他者の存在を知ることで、ある種の安心感を抱くことができるからでしょう。「同じ悩みを持つ人がたくさんいるんだ」と気が付くだけで、悩みが消えてしまうケースも多くあります。営業職なら営業職同士、リーダーならリーダー同士、新入社員なら新入社員同士と、同じ悩みを持つ者が集まってコミュニケーションを取り、心のマッサージをし合う機会が時には必要なのです。
しかし、「同病相憐れむ」だけで、「みんな同じなんだ」と開き直ってしまうような機会にしないような注意は必要です。あくまでも、この機会は凝り固まった気持ちをほぐし、新たに仕切り直して頑張っていってもらうためのものなのです。心配な時は、少し年次の高い部下や、社内のカリスマ的存在を参加させ、「自分はそんな悩みを抱えていた時は、こんな乗り越え方をした」という前向きなアドバイスがさりげなく発せられるようにする、などの工夫をすれば、「安心感」がネガティブな方向に向かうのを避けられると思います。
○ 自己の競争優位性を意識させる:バリュー効果
自分がその会社やその部署にとってあまり意味のない存在、自分がいなくなっても他の人で代替可能と思い込んだ時点で、仕事に対するモチベーションは低下の一途を辿ります。「誰がやっても同じ」と感じてしまったら、それ以上「生産性を上げよう」「もっと工夫してやりやすいようにしよう」といった前向きな気持ちを持ちようがありません。
上司には、「この仕事はキミでなければできない」と実感させること、個人個人が「会社や部署にとって代替不能な存在」であると感じられるようなマネジメントが求められます。その人自身のバリュー、「効力感」「存在感」を上司が植え付けてやらなければなりません。
今の時代、価値を生み出す主体は「個人」です。かつてのように、「A企業に属するBさん」というように、企業が個人を長期雇用という保証のもとに囲い込むのではなく、「A企業に価値を与え、それに見合った報酬を得る自立した個人Bさん」というように、その時々に個人が生み出す価値を、企業が支払う報酬と等価交換する時代になりました。
このような社会的背景により、「果たしてこの会社で自分の存在価値を高められるだろうか」「価値を生み出せる人材になれるだろうか」と、自らの市場価値に敏感な人が増えています。「誰がやっても同じ」と自分の仕事を捉えてしまった瞬間、モチベーションが下がるだけでなく、もっと価値を認めてくれる、ひいては自分の価値が高められる会社に転職しようと考える人も、昨今少なくないでしょう。要するに、上司が部下個々人に存在価値を見出さなければ、また、存在価値を本人が実感できるような仕事を与えなければ、部下はモチベーションを下げるか、あるいは他の会社に転職するか、いずれにしても好ましくない状況を生み出してしまうことになるのです。
上司は「この仕事だけはキミに任せなければだめだ」「この仕事のこの部分をキミが担当するかしないかで成否が分かれる」というように、部下に、自分自身の競争優位性を強く意識させることです。部下が「この部分は誰にも負けないようになろう」と感じ、これまで以上にそのことに力を注ぐようになれば、結局はそれが成果につながります。また、部下が「自分は会社に必要な人材だ」と思うことができれば、会社全体、事業全体にも関心をもって仕事に取り組むようになります。
○ 判断基準を明確にする:クライテリア効果
管理者に確固とした物差しがあり、それが共有されていれば、様々な局面において部下が判断に迷うことはありません。逆に、クライテリア―判断軸が見えない上司の下で働くことほど、部下にとって大変なこと、苦痛なことはないのではないでしょうか。
話す相手にとって、対応が変わる。理由もよく分からないままに、ある場面ではAの事柄を重視し、別の場面ではBを重んじる。このような上司の下では、部下はやる気を失い、信頼関係も生まれるわけがありません。
物事には、状況によって判断を変えるべき部分と、状況が変わっても判断を変えてはいけない部分とがあります。それを、「'MUST'=絶対に欠かせない項目」と「'WANT'=可能であれば取り入れたい項目」という軸で切り分けて、何が最も優先すべきことなのか、次に優先順位が高いのは何か、何を変えても差し支えないのか、を明確にすることが大切です。
例えば、営業部門において「顧客満足が最優先」という判断軸を決定したとしましょう。これは「MUST」となります。MUSTが明確だと、状況が変わって新たな決定を下す必要が出てきた場合にも、「顧客満足」というMUST項目を優先した上で、WANT項目をなるべく残すことのできるような判断を下しますので、拠り所がブレることはありません。しかし、その軸がなければ(あったとしても共有されていなければ)、部下は上司が何をもって判断したのかが分かりません。判断基準の明確でない上司の判断は、結局一つひとつの「個々の局面」でしか意味を持たず、再現性がないのです。部下は、会社として、職場としての「判断基準」を学び取ることができず、いつまでたっても判断力を身につけることもできず成長することが難しくなります。
大切なのは判断軸をしっかりと定め、次にそれを職場に浸透させることです。部下に積極的に繰り返し判断軸を示し、「今、うちの部署ではこれを一番大事に考えたい。この3ヶ月はこれを最優先としてやっていこう」というように、会社の状況、顧客の状況、部下の力量などを見ながら、コンセンサスを図っていくことが必要なのです。
また、判断軸が変わった場合には、変わったということもきちんと共有すべきです。「どう変わったのか」を具体的に示し、「なぜ変わったのか」という背景も含めて、はっきりと伝えることです。「会社の財務状況が変化したので、それに対応するため、1ヶ月前と原則を変える」などと、具体的な背景まで分かれば、部下はゼロリセットして物事を捉え、新しい基準を受け入れる体制が整うのです。