きんえんSwitter

医者の心の目で日々を綴ります

依存症

2024年06月06日 | ヘルスリテラシー
大谷選手の口座から大金を盗むまでして、野球賭博を続けていた水原元通訳が、自分の罪を認め、「自分はギャンブル依存症である。治療を受けたい」とも言っているといったニュースは、多くの方がご覧になっていることと思います。

禁煙治療を仕事として取り組み始めたころ、ずいぶんと色々な本を読んで勉強をしましたが、最も理解することに時間を割いたのが、依存症という病気そのものについてでした。

喫煙者に禁煙を促すうえでも、また、子供たちにタバコを吸わない人生を歩んでもらうためにも、「喫煙はニコチンによる依存症である」、「依存症とはどういう病気か」ということを理解する(してもらうこと)が、必要不可欠なことであると、医師として考えるようになったからです。

依存症と名の付く病気のなかで、最も昔から広く知られているのはアルコール依存症でしょう。

若かりし頃、精神科の医師から「アルコール依存症の人は、お酒が好きで飲んでいるのではなく、禁断症状を消すために飲んでいる」と聞いたことがありましたが、その時はあまりそのことが理解できませんでした。

今ではすごくよくわかります。

最初は興味半分で、あるいは何気なく小さな一歩を踏み出したところ、あっというまに底なし沼に足をとられ、もがけばもがくほど深みにはまり、ついには日常生活がままならない状況に追い込まれてしまうというのが依存症という病気です。
その状況を本人が気づいていないこともめずらしくなく、依存症の怖いところでもあり、治療の妨げになっています。

依存症の治療は、専門家によるカウンセリング、認知行動療法が主体ですが、依存症の治療には時間がかかるうえ、再発しやすいのも厄介なところです。

幸いニコチン依存症にはきちんとした治療薬があり、その薬の使用に専門家によるカウンセリングを組み合わせることで、高い禁煙成功率が得られることがわかっています。

依存症は一度かかると完治は難しく、生涯、再発の不安を抱えなければいけないことも少なくないので、かからないようにすることが一番です。

インターネットやゲームに没頭して、生活や健康に支障をきたす状態を「Gaming disorder(ゲーム行動症)」と正式な精神衛生疾患として世界保健機関(WHO)が認定しています。

誰もが依存症になりうる現代、「自分は大丈夫」と思うのが、もうすでに危ない一歩になっているかもしれませんね。

 






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