Something interesting

パラメディカルのための解剖学メモ

(スケルトン探偵)古い骨

2005-11-28 | 骨とミステリー
アーロン・エルキンズ、早川書房ミステリアスプレス文庫、1989

舞台はフランスのモン・サン・ミッシェル島と、その近郊にある館。ナチス侵攻とレジスタンスの戦いの名残を引きずった一族の物語。おなじみの司法人類学博士ギデオン・オリヴァーが登場し、地下で発見された白骨の身元を探っていく。

ヒトの骨と動物の骨の違い、男性か女性かそして死因は?
フランスの警察官に対する教育講座の講師として訪れていたギデオンの講義の内容紹介も入るところは、少し固くなるが勉強になる! 
今回は胸骨孔をもつ遺体で人の入れ替わりが絡んで興味深いエンターテイメントとなっている。

「四足歩行動物の胸郭は内臓を支えるために多かれ少なかれバケツのような恰好をしている。だが、二足歩行動物の場合は、当然ながら内蔵の重みは肋骨にかからない。内蔵を支えるのは骨盤である。ですから、肋骨は他の期間の邪魔にならないように弯曲がゆるやかなのです。----これは、丸く湾曲しています。人間の骨ですね。」という具合である。



ヒトの見方

2005-11-20 | 参考図書?
(養老盂司)ちくま文庫、2001

退職後もたくさん出版されテレビでご拝顔する機会も多く、すっかり有名になった解剖学の大御所です。
脳が専門でしかもわかりやすいすばらしい文章を書かれることから、幅広くご活躍です。確か母上も高名な解剖学者さんだった!
しかし、この書は哲学的な観点がかなりウェイトを閉めていて難解さも伴う箇所が少々。
「ヒトと動物はどこが違うか」という解剖学に伝統的な命題に対して、「サルにもゲームがあるだろうか。」という問いかけから出発する。そして、神学・心理学・社会学・生物学などからの接点を探して、結局「チンパンジーは暇つぶしに何をするであろうか?」と考える。人は形態学者でなくても形あるものにこだわる。貨幣・御神体その他もろもろの非実用品などに。サルにお金の苦労は無い。ゆえに、ゲームは無い。

「ヒトの脳は動物の脳の上に剰余が重なったものである。」その部分が何かの機能を持ちヒト独特の形式として表現されるはずである-と。最初の剰余は遺伝子の複製、これが分化の前提となり多様化を生み出してきた。ヒトに生じた特有の剰余は中枢神経系、新皮質である。
ゲームに戻っていえば、もっぱら食うために働くか、空いた時間を見つけてさまざまなゲーム(芸術、実業、学問)に励むかという問題である。

なかなかおもしろい導き方ではあります。養老先生は哲学のヒトであるとしみじみ感じさせられます。哲学好きの人にはお薦め。


ヒトは何から?

2005-11-17 | 骨学ノート
それぞれの分野で答えは異なる?
原子・分子から(炭素と酸素と水素と窒素と---)。
細胞(正確には細胞と細胞間物質)から。
組織(上皮組織、結合組織、筋組織、神経組織の4種)から。
器官や器官系(運動器系、循環器系、神経系、内分泌系、消化呼吸器系、泌尿生殖器系など)から。

「組織」というあたりからわかりにくくなってきますね。
形があって機能するものの構成素材とか材質と考えれば良いかも。
一軒の家が、床や壁や電気系統や水設備などのシステムから成り立ちますが、これを作る材質には、木やガラスや土やプラスチックや金属や布などいろいろあります。この材質に当たるのが人体では4種の組織です。
この4種が組み合わされて骨や筋肉や神経や血管や内蔵ができ上がる。

それぞれの組織は、何種類かの細胞と細胞間物質(結合組織では細胞外線維成分が加わる)から成る。まずそこから考えましょう。

骨の中心をなすのは結合組織。
 緻密骨、海綿骨をなす骨組織;骨細胞、破骨細胞、骨芽細胞 + 骨基質
 骨端軟骨や関節軟骨となる軟骨組織;      軟骨細胞 + 軟骨基質
 骨髄を作る細網組織;細網細胞と細網線維と組織液に、+血球関連の細胞

骨質や骨髄の中には、神経・リンパ管・血管が入ってきている。

したがって、これらを構成する 上皮組織;血管内皮細胞
                   結合組織;疎性結合組織
                   神経組織、筋組織      が加わります。

  @ 軟骨には、血管がありません。故障した場合にはほとんど再生不可です。
         いろいろ面倒な事になるわけです。

楽しい医学用語ものがたり

2005-11-15 | 参考図書?
著者:星 和夫(青梅市立総合病院長)
挿絵:鈴木敏江           医歯薬出版株式会社

表題どおり楽しく医学用語に接するためのきっかけとなるかもしれません。

現在使われている医療関係の日常からかけ離れたこ難しい言葉が、どこから来たのか? 
主にギリシャ神話からきたものを取り上げその由来を挿絵入りでわかりやすく説明しています。一度では覚えられませんが、手元に置いてたまたま開いたページを2ページだけ、斜め読みするーと言った事が可能です。

「筋肉とハツカネズミ」
ハツカネズミはギリシャ語で mys(ミース)、ラテン語で mus(ムース)、元の意味は”盗む動物”です。
英語のmouseもドイツ語の Mausもこれからでたことばです。筋肉は、muscle(英)、 Muskel(独)ですが、これは腕の筋肉に力を入れて力瘤を作ると皮膚の下を鼠が走るようにピクッピクッとすることから、mus+cle(指小辞)すなわちコネズミちゃんというような意味でなずけられたのだそうです。
                 この筋肉は-----もちろん 上腕二頭筋 !

一般社会でも military muscle, economic muscle, muscleman などと使われています。

接頭語として使われるときは myoとなり myocardium,myoma,myogram,myosin につかわれていますね。
 (日本語訳してください)


鍋の中の解剖学

2005-11-14 | 参考図書?
(藤田恒夫)風人社、1995

推薦教科書の中に一冊ある先生のものです。帯にかかっていたお写真から懐かしく思い出されて読んでみました。一時岡山大学で隣の研究室にいらっしゃった。ちらちらお顔を拝見する程度のなじみではありましたが、講義は絵をうまく活用されて楽しいものでした。この本によると、絵画も描かれ、日本ペンクラブの会員でもあられるとか、やはりという感じです。岩波新書の『腸は考える』の著者でもあります。

大学の研究室とはどんなものかがよくわかります。厳しい事・大変な事も多々ある中、楽しかった事を中心にエッセイとしてまとめられてて気楽に流れるように読み進められました。研究室で食事をする機会はよくあることで、どこの研究室でもそれなりの中心になる先生の御人柄を反映したエピソードをたくさんもっていることと思います。膵臓のこと、ミトコンドリア分画のスープのこと、パラサイトさんのこととか----

私も心臓の比較解剖研究をやっていた時代、「ふぐ」の心臓を求めて瀬戸内海の島に行き、すっごい「ふぐ」づくしの料理にお相伴させていただいた事もあったな~。
牛の心臓に挑戦したときは、後でもちろんカルビの焼肉を!