流体機械設計による近未来に役立つエンジニアリング

流体機械設計をベースとして近未来に役立つエンジニアリングを行う株式会社ターボブレードの社長 林 正基の毎日の活動

排気エネルギー電力回収型ターボチャージャーの設計事例

2020年12月14日 | 流体機械設計

排気エネルギーの余剰分を電力として回収する形式のターボチャージャーを設計した事例です。

次図で見ることに出来るエネルギー回収型ターボチャージャーの全体構造は、

・一番左側に遠心コンプレッサーの初段部

・初段遠心コンプレッサーの右側には排気エネルギー回収用発電機

・発電機の右側には二段目の遠心コンプレッサーとそれの渦巻きケーシング

・二段目遠心コンプレッサーのインペラ右側には油冷却潤滑の高速型ボールベアリング軸受部

・軸受部の右側には排気ガス用遠心タービンと流入ノズルを兼ねた渦巻きケーシング

・遠心タービン出口排気部にはコンプレッサー圧力で駆動される排気ガス逃がし弁部

以上の構造のターボチャージャーとして設計されており

・ガソリンエンジン排気ガス用にタービン部耐熱温度900℃にて設計

・低速の回転数である毎分8万回転によりボールベアリング軸受寿命を長く設計

・ターボチャージャーとしては低速回転なので圧力比を取れるように遠心二段のコンプレッサーを設計

・発電機は永久磁石ローターとステーターの組み合わせによる高速・高効率型として設計

次図は、ターボチャージャー全体での運転時の空気とガスの流れを流体解析で求めると同時に、各要素部品の運転時温度分布状態を確認するための熱流体解析計算の結果です。

・遠心二段圧縮機での空気流れは、速度ベクトルの状態を見ると均一で滑らかな流れを実現

・油冷却軸受部は油量が充分であり、ボールベアリング許容温度内に冷却されている

・遠心タービン部では、渦巻きケーシングノズルからの均一なガスの流れ込みと、タービンランナ内での入口から出口まででの乱れの少ない均一な流れ状態を確認

・特に遠心タービン部の最高ガス温度900℃でのガス流入でも、タービン部全体の温度分布は許容範囲内となっていて運転に問題が無い

次図は、二段遠心圧縮機部の空気流れを詳しく見る為に圧縮機軸断面での速度ベクトル分布を拡大して見ています。

遠心圧縮機で圧縮される空気の温度が、初段インペラから二段目インペラ、そして吐出渦巻きケーシング断面にて、段々と温度が上昇するのが確認出来ます。

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