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喜多喜久著『動機探偵』あらすじ・ネタバレ感想!AI研究者の謎集め

喜多喜久さんの『動機探偵』あらすじ・ネタバレ感想。
双葉文庫書き下ろし。
AIに人間らしさを加えたい研究者が日常生活にある謎を探る。
4つの物語のうち、最後の1つだけが殺人の動機に関することだった。


『動機探偵』 
著者:喜多喜久
発売日:2020年8月7日
カバーイラスト:MITO+uki/カバーデザイン:大岡喜直(next door design)/発行:株式会社双葉社
著者:喜多喜久 『動機探偵』 発売日:2020年8月7日/カバーイラスト:MITO+uki/カバーデザイン:大岡喜直(next door design)/発行:株式会社双葉社


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『動機探偵』あらすじ・ネタバレ感想

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『動機探偵』あらすじ 

●第1話 鈴代若葉は、なぜ名村詩朗の助手になったのか?
鈴代若葉は弁護士事務所に勤務していたが、代表を務める72歳のベテラン弁護士の引退で事務所が閉鎖され失職する。
事務能力に自信がある若葉は、24歳ということもありすぐに次の仕事が見つかるだろうと高をくくっていた。
ところが、半年経ってもプー太郎だ。
次こそはと面接に挑んだのは令王大学の事務員の募集だった。


気合いを入れて面接会場へ行くと何だかおかしな物が置いてある。
何も無い廊下の中央に畳まれた黒い傘と白いミシンが置かれ、ミシンの下には一辺50㎝ほどのカッティングマットが敷かれている。
好奇心旺盛な若葉はしげしげと観察した後、勝手に傘を置き直す。
この様子を見ている人物がいることに気づかずに……。
その人物こそ先進人工知能研究室准教授・名村詩朗(32)であった。


人工知能に《人間らしさ》すなわち《非論理性》を加えたい名村は、《非論理性》を解析する為の基礎データが必要だった。
その為に「なぜ?」と思う謎を集める助手を募った。
傘を動かした若葉は面接に合格し、翌日からさっそく働き始める。
そして、若葉が最初に名村に提示した謎は、若葉の亡くなった祖母が家族に黙って5本の日本刀を隠し持っていた謎であった。



●第2話 町田慎平は、なぜ山に登ったのか?
令王大学文学部の教授・町田憲吾はつい最近、息子の慎平を奥多摩の大岳山で転落事故により亡くしたばかりだ。
享年32歳。
慎平の高校卒業後は別々に暮らしており仲が良い親子というわけじゃない。
それでも息子の死は受けとめがたい。
山登りの趣味などない息子がなぜ一人で山へ登ったのか。


気づけば息子のことばかり考えている憲吾の元に、令王大学理学部先進人工知能研究室が作成したチラシが届く。
<「なぜそんなことをしたのだろう?」という謎をお持ちではありませんか?>
憲吾はチラシに書かれていた連絡先へ電話をかける。


●第3話 西脇由加里は、なぜ婚約を破棄したのか?
桃山徳晴は、婚約者の西脇由加里から一方的に婚約解消を伝えられ、それ以降、彼女とは連絡が取れずにいた。
母親からはどうにかしろと催促されるが、しつこくしすぎてもストーカーだと思われかねない状況で、家にいると好きでもないビールをあおる日々だ。


一方、若葉の謎集めは困難を極めていた。
チラシの作成やTwitterを利用しての定期的な募集を試みるも、そんなに不可解な謎は転がっていないのだ。
《不可解な行動》を伴う謎を見つけないことには基本的に若葉には仕事がない。
困っている娘に母が知り合いの桃山さんの息子・徳晴の婚約解消について話す。
面談したところ、婚約者の由加里の気持ちを知りたい徳晴から調査を依頼される。


●第4話 藤森紀雄は、なぜ息子に罪をなすりつけようとしたのか?
藤森幹絵の兄・紀雄は末期ガンで入院中だ。
紀雄は13年前に殺人を犯した。
近所の嫌われ者の男性を歩道橋から転落死させたのだが、逮捕されてから殺したのはわずか7歳の息子・明斗だと主張した。
自分の子供に罪をなすりつけようとしたことが考慮され服役期間は長くなった。
そして昨年出所したが、今年末期のガンが発見された。


幹絵にとって紀雄は、殺人を犯すような人間ではなく、ましてや幼い我が子に罪をなすりつけようとするとは理解できない。
兄の余命は1ヶ月。
兄と話ができるうちに真実を知りたい。
そんな時、令王大学の理学部先進人工知能研究室の新聞広告を目にする。


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『動機探偵』ネタバレ感想

『動機探偵』というタイトルから、てっきり殺人事件を扱ったミステリだと思った。
でも、第4話以外は基本的に日常の謎。
コージーミステリだった。


人工知能に《人間らしさ》すなわち《非論理性》を加えたい名村詩朗准教授は、ある意味たいへんな変わり者。
彼自身がまるでAIのようなんだ。
脳の回路の問題と言うか、感情を表す回路が壊れていると言うか、本人曰く、喜怒哀楽が理解できないらしい。


研究というのは他人とのコミュニケーション抜きでは不都合が多い。
そこで名村先生は、状況にふさわしい表情を研究し学習した。
その結果、ここは微笑んだ方が良いという状況なら微笑んで見せるし、眉を寄せてしかめ面を作るべき場面ならそうして見せられるようになった。
でも、データ外だった場合、表情を作るのが遅れるんだな。
そして、ちょいちょい状況に対して違和感がある表情を作ることもある。
今、何で笑顔?みたいな。
まさに人工的。


名村は、助手になった鈴代若葉には、表情を学習したことを正直に話す。
その為、若葉は名村が笑顔を見せても、学習によるものなんだと思うとガッカリしそうになることもある。
作り物だと思うと表情に限らず、言葉もデータの中からチョイスしてんのかなって疑っちゃうよね。
嘘じゃないんだろうけど、褒め言葉を貰ってもつまらない気分になるよね。
一線を引かれて壁がある状態より心がない気がして。


そんな名村は恋愛感情も理解できない。
第3話で婚約解消した後、連絡がつかなくなった西脇由加里も恋愛感情が理解できない人であった。
恋を知りたくて桃山徳晴と付き合ったがピンとこず、同性愛に可能性をかけて女性とも付き合ってみたがやはり恋が分からず。
そんな自分に嫌気がさして逃げ出したわけだけど、同じように恋が分からない名村は自分が《恋愛不感体質》であることは全く気にならないと言う。


それで悩まないなら結構なことだと思う。
でも、若葉は寂しくないかと聞いてしまう。
恋愛が理解できずとも喜怒哀楽が分からずとも誰かの役には立ちたいと思って研究しているのなら、その人にとっては正解だ。
寂しいとか孤独とか自分の価値観を押しつけるべきじゃないよなぁと思う。


はっきり書かれていないけど、若葉は名村のことを好きになっている気がするな。
もし好きなら、相手にそれを理解してもらえないのは辛いもんね。
自分がどれだけその人を好きでも伝わらないってことだもん。
おまけに表情も言葉もデータから選択したものかもしれないと思うと、切ないわ。
名村への問いになっているけど、若葉自身が寂しかったんじゃないかな。


この作品も続編がありそうな気がするな。
以上、『動機探偵 (双葉文庫)』感想でした。

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ご訪問ありがとうございました(人´∀`*)

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