『A Life ～愛しき人～』TBS

　　　『A　Life　～愛しき人～』TBS

　　　　　脚本：橋部敦子　音楽：佐藤直紀　演出：平川雄一朗　加藤新　
　　　　　出演：木村拓哉　竹内結子　松山ケンイチ　木村文乃　菜々緒　柄本明　田中泯　及川光博　浅野忠信他

　　今期は珍しくドラマを3本連続録画にしている。いつもの『相棒』と我が家人気No1女優綾瀬はるかさんの『精霊の守り人』、そして『『A　Life　～愛しき人～』。

　　SMAP解散後ということで話題のドラマ。相も変わらないキムタクバッシングということで、評論家たちが視聴率低迷を強調しながら、役者の演技力云々を論じ、貶しているようだが、珍しく録画するだけでなく見ている。1話の脚本が素晴らしかった。テンポよく展開し、脚本の良さが光っている。

　　ドラマ評論家。無料のテレビを見て好きなことを書いてお金になる。映画や演劇は少なくとも会場に足を運ばなければならないだろうし、書評となると時間をかけて本を読みこまなければいけない。楽なアクセスで好きに書いているうちに、演者や製作者へのリスペクトが無くなっていくのだろうか。演じている人や製作者は身体と時間、お金を使い、リスクを負っている。ドラマ評論家がリスクを負っているのを見たことがない。名前を出している人もいるが、名前が回文の人もいる。他者に対する尊敬がなく、責任も取らずに言うだけなら、それを評論とは言わないのではと思う。

　　5話目まで終わり、視聴率はあまり芳しくないらしいが、視聴率だけで切り取るのもどうかとは思う。まあ、視聴率が良いに越したことはないのだろうけれど。ドラマが始まる前ににせ猫さんにキムタクドラマ、視聴率取れると思うかと聞かれたが、取れないと思うと言ったらその通りだった。15％行かないだろうと思っていたら当たっていた。あれほど人気の『逃げ恥』だって、後半視聴率上げたと言っても平均で14％ぐらいだったのでないかしら？？　今視聴率が取れるのは朝の連続テレビ小説、相棒とか人気のあるリピートものぐらいでは(だからリピートものをやりたがる)、ドラマはたいてい録画で見るのではないかしら。

　　医療ドラマは普段は見ない。たいてい医者同士の権力抗争、権力に立ち向かう医者、医師と看護師の恋愛、あるいは患者の回復あるいは死を絡めた感動もの。感動ものは苦手。

　　4話はオペナースの話で、実家の医院が医療事故で倒産し、経済的な理由から医者になれず看護師になり、医療の世界でナースの立ち位置、自尊感情に葛藤するという話だった。
　5話もやはり医療ミスの話が絡んでいた。医療事故調査にかかわった医師の葛藤。

　　医療事故は当節とても皆神経質になっていると思う。医療者も患者サイドも。マスコミでバッシングの対象になりやすいし、補償費用額も大きい。

　　患者への術前の説明、本人・家族の同意確認。テレビでは医者一人で説明していたが、看護師がついて、どんな説明をして家族の様子がどうだったかという記録を看護師も残すと聞く。数々のリスクをこれでもかと説明し、説明をちゃんと受けなかったと後で訴訟になるのを防ぐために、記録し、カルテ開示に備えるという。自分が家族の立場で聞くと腰が抜けるのでないかと思うようなことまで、はっきりというらしい。

　　がんの本人告知にしても、してほしくない人もいるかもしれないが、告知をきちんと受けていたら、自分は違う医療を受け、あるいは命ある間にできたことがあったと不満に思われる人もいるわけで、これも訴訟の対象になるから、告知をしないという選択はもう難しいかもしれないと聞いたこともある。

　　病院の経営、今の保険点数制度の中で、小児科はハイリスクの上に、手間がかかるのに患者一人当たりの単価も安く、そうなると縮小傾向、このようなことをきちんとドラマで取り上げている。

　　ドラマでは今の医療制度の中で、それぞれの背景と正義を持って生きている人たちが描かれていて、勧善懲悪やお涙頂戴になっていないドラマだと思う。
　
　　浅野さんの演技力はさすが。木村さんも細やかな役作り。松山さんは儲け役。後半どのように展開していくのか？　6話は短い会話、やり取りの中で、それぞれの人物の背景までを描いた展開。
　　毎回いろんな立場の人に焦点を当てながら、話の展開はスピーディで脚本家の筆が冴えている。役者さんたちやそれを支える技術者たちも力が入っていることがうかがえ、終盤に向けて、脚本家と演出の腕に期待したい。