ぼやきくっくりさんからの記事紹介の6回目です。
■ルドルフ・リンダウ=プロシャ人。スイス通商調査団の団長として1859年(安政6年)初来日、1864年(文久4年)にはスイスの駐日領事をつとめた。
「スイス領事の見た幕末日本」より
長崎近郊の農村での記述いつも農夫達の素晴らしい歓迎を受けたことを決して忘れないであろう。
火を求めて農家の玄関先に立ち寄ると、直ちに男の子か女の子があわてて火鉢を持って来てくれるのであった。私が家の中に入るやいなや、父親は私に腰掛けるように勧め、母親は丁寧に挨拶をしてお茶を出してくれる。
……最も大胆な者は私の服の生地を手で触り、ちっちゃな女の子がたまたま私の髪の毛に触って、笑いながら同時に恥ずかしそうに、逃げ出して行くこともあった。幾つかの金属製のボタンを与えると……「大変有り難う」と、皆揃って何度も繰り返してお礼を言う。そして跪いて、可愛い頭を下げて優しく微笑むのであったが、社会の下の階層の中でそんな態度に出会って、全く驚いた次第である。
私が遠ざかって行くと、道のはずれ迄見送ってくれて、殆んど見えなくなってもまだ、「さよなら、またみょうにち」と私に叫んでいる、あの友情の籠った声が聞こえるのであった。