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<特捜検事逮捕>前部長聴取 厳しい表情のまま、東京へ

 組織的隠ぺいはなかったのか。大阪地検特捜部検事、前田恒彦容疑者(43)が証拠隠滅容疑で逮捕された事件で、最高検は23日、上司だった大坪弘道前特捜部長(57)=現京都地検次席検事=らの聴取に乗り出した。前田検事の逮捕に「やりすぎ」と、最高検の捜査に不満を漏らしていた元特捜トップは、自らの「監督責任」を認め、報道陣を振り切るように聴取に臨んだ。

 ◇「監督責任だろう」

 大坪前部長は午前10時前、大勢の報道陣が待ち構える新大阪駅へ姿を見せた。やや疲れた表情で、報道陣に「私が改ざんにかかわったわけではない。(問われるのは)監督責任だろう」と語った。その後、険しい表情のまま東京行きの新幹線に乗り込んだ。

 正午過ぎに品川駅で降車すると、再び報道陣にもみくちゃに。周囲を警察官にガードされながらタクシーに乗った。東京駅で待ちかまえていた記者やカメラマンは「肩すかし」にあった。

 午後0時50分にタクシーで東京・霞が関の検察庁庁舎に着くと、小雨が降る中、カメラのフラッシュが一斉にたかれた。大坪前部長は後部座席に座って正面を見据えたまま敷地内に入り、最高検による異例の事情聴取に臨んだ。

 ◇「逮捕はやりすぎだ」と主張

 「逮捕はやりすぎだ」。前田恒彦容疑者の上司にあたる当時の特捜部長、大坪弘道・京都地検次席検事が、最高検の事情聴取前、毎日新聞の取材で自らの見解を語った。大坪前部長は「逮捕前に(前田検事から)弁解すら聞かないのか……」と、最高検の捜査に困惑の表情を浮かべた。

 前田検事は昨年7月13日、証拠品のFDの「04年6月1日」を、検察側が描いたストーリーに沿うように「6月8日」に書き換えた。大坪前部長は「わざとではない。公判に影響もなかったし、問題はない」と、改ざんは故意ではないとの見方を示した。

 FDは、書き換えた日付のまま昨年7月16日に上村勉被告(41)側に返還している。重要な物証だったが、公判で裁判所に証拠提出をしなかったことについては「その必要はない。中身はコピーして(紙に)落としている」と述べた。「前田検事が捜査の都合に合わせて改ざんしたのでは」との記者の質問に対しては「それはない」と、きっぱりと否定した。

 一方、FDデータの書き換えに関する報告を受けたのは今年2月。当時の佐賀元明副部長(49)から「(前田検事が)誤って書き換えてしまった」との報告を受けたという。これを受け、大坪前部長は小林敬大阪地検検事正(59)らに「問題はない」と伝えたという。

 大坪前部長への取材は22日。やり取りは10分程度だったが、部下をかばう一方で最高検への複雑な思いものぞかせた。【久保聡、村松洋】




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