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TAOコンサル『ルオー研究ラボ』

「ジョルジュ・ルオーの生涯」
「ルオーの影響を受けた人々」

「ルオーとフォーブの陶芸家たち展」・・陶器絵画に熱中したルオー

2015年04月15日 | ルオーの作品

汐留ミュージアムの「ルオーとフォーブの陶芸家たち展」を初日に観てきた。・・(作品画像はWEBより借用)



フォービズム(野獣派)とは何か。1900年代初頭のフランスで、原色を基調とした鮮やかな色彩の絵画を展開したマチスやマルケ、ブラマンク、ルオーなど一群の作家たちを評した言葉である。彼らは新しい表現を模索する中で陶器制作にも関心を持つのであるが、これらの画家たちに協力したのが陶芸家メテであった。

大皿「アダムとイブ」

私のコレクションの原点はルオーであり、これまでもルオーの陶磁器については観る機会はあったが、メテについては初めてであった。日本ではメテの陶磁器についての紹介は余りなかったこともあり、見応えある展覧会であった。特に施釉陶器の青が素晴らしい。

ルオーはこの陶器での表現に強い関心を持ったと見え、一時期メテとの協同制作に熱中した。「花瓶、水浴の女たち」の青を基調としながらも茶褐色や深いグリーンが使われた作品など、キャンバスの絵画世界を観るようだ。ルオーは貧しくも懸命に生きる人々をテーマにした作品を多く残しているが、大皿「ソリダルテ(連帯)通り」はまさにそういう情景を描いた作品であり、心を打つ。

いずれも陶器をキャンバスのように使っての絵画表現であり、そこにはルオーの世界が広がっている。
「花瓶、水浴する女たち」

 「ソリダルテ(連帯)通り」


出光美術館のルオー連作展、油彩画『受難(パッション)』に感動

2008年08月15日 | ルオーの作品
 出光美術館の『ルオー没後50年・大回顧展』はよかった。ルオー最盛期の代表的作品“連作油彩画”『受難』と銅版画集『ミセレーレ』を中心とした230点の展示であるが、あらためて感動してしまった。

 ルオーには『受難(パッション)』というタイトルの17点の色刷り銅版画と82点の小口木版画がある。これは詩人アンドレ・シュアレスの宗教詩を添えた詩画集であるが、画商アンブロワーズ・ヴォラールの提案を受けて新たに制作したのが、この連作油彩画『受難』である。小口木版画の為にグワッシュで描かれた版下画をもとに書き直した作品なので、大半が小品であるが、その深い色彩とマチエールが精神性を漂わせ、見る者を敬虔な気持ちにさせる。

 画商ヴォラールの死後、この連作油彩画が散逸しそうになっているのを知った川端康成や白樺派の作家たちが保存を働きかけ、出光興産の創業者出光佐三が買い取ったのだそうだ。細かいいきさつはともかく、東洋古美術に造詣が深いとはいえ、あまり関心のなかった西洋美術、それもキリスト教精神の作品を購入した決断には敬意を表したい。ルオーのキリスト教精神と東洋の伝統に培われた精神が触れ合ったということであり、このコレクションは日本にある文化資産として長く歴史に残るであろう。

 連作油彩画『受難』はどれもよかったが、その他、ルオー晩年期の『イル・ド・フランス』や『聖書の風景』など、私の好きな作品も多く、満ち足りた気分の1日であった。


これは『受難1』、連作油彩挿画本の表紙を飾る作品である。
描かれているのはキリストの“聖顔”であるが、扉絵にふさわしく、周囲はアーチや祭壇で装飾され、より荘厳な印象である。
*作品画像は出光美術館サイトより


 私は自分の書斎&サロンを『流れる星のサーカス』と命名して楽しんでいる。そのくらいルオーが好きということであるが、このスペースにはルオーの『ミセレーレ』などと一緒に“アンコール・ワット”の仏頭なども並べてある。つまり、精神性の深さにおいては、キリスト教も東洋もなく、国や宗教を超えた普遍的な美しさを感じるのである。