風来坊の忘備録

晴歩・雨読 日々の雑感 不定期便

谷中 五重塔

2020-09-07 20:46:34 | 日記

朝から 定まらぬ天候の中、出かけるに出かけられず 終日自宅で。。。

晴れたかと思うと 雨音が激しくガラス戸をたたいたく

 

その音に誘われて 幸田露伴の『五重塔』の再読をする

小説の終盤で完成直後の五重塔が 桁外れの暴風雨に襲われ壮絶な描画が展開される

そのあたりが 今日の台風余波の 悪天候を想起させてのこと 

小説は、明治二〇年代に発表されたもので 明治文語文の読みにくさはあるが

慣れてしまえば 分厚い本ではなし 読み通すのに苦労はいらない 

江戸の棟梁と大工 二人の侠気と意地が心地よい 名作だとおもう

     

谷中感応寺の五重塔は 今はない谷中霊園内に その痕跡のみが残されている

昭和32年早朝に 不倫関係の清算を図った男女の心中による放火で焼失したもの

人の命や 文化財がこうした理由により 姿を消すのは やりきれない気がする

 

台風のさなか必死に働く方々 それなのにこうして読書にふける 我が身の気楽さに

若干の後ろめたさを覚えながらも あれこれ取り留めない考え事で今日一日を過ごす