「たにぬねの」のブログ

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→♂♀←_no.03_2023:渦巻く影――魔法の使用に関する考察

2022-12-21 22:02:52 | 今月のお薦め_XX.20XX
ぶらぶらと本棚のところまで行って、背表紙の列に指を走らせる。なにか読むものがあるだろうか。おおかたは分厚くて重そうな革綴じの本で、待ってるだけの状況より退屈そうだった。指が埃に長い筋を残し、汚れをぬぐいとるはめになった(きれいなチュニックは使ってない。小さすぎるズボンのほうで拭いた。このズボン、本気でいやになってきた)。

三番目の棚の八冊目で、指が止まった。装丁はほかの本におとらず埃まみれだったけど、葉っぱと渦巻のおもしろい模様がついている。それに、ずっと薄かった。あたしはその本をひっぱりだした。
『渦巻く影――魔法の使用に関する考察』
と題名が書いてある。その文字には型押ししたシダがからみついていた。著者の名前は載ってなかった。

(パン焼き魔法のモーナ、街を救う_二十三より抜粋)

遠征している部隊への伝言の長くはない待ち時間にモーナがギルダーン師から教わった
少し想像力を働かせることで魔法使いたちは、よりささやかなもので、より大きな結果をもたらしてきた、
ことについて渦巻く影にも述べられており、モーナの魔法への取り組み姿勢の積極性を加速させる。

パン焼き魔法のモーナ、街を救う T・キングフィッシャー 早川書房
A WIZARD'S GUIDE TO DEFENSIVE BAKING



宮殿から戻ると常連客に繰り返し経緯を話すことになったとはいえ、パン屋の日常に戻った感じ。
しかし、夜になると、うまくいかなかったかもしれない瞬間が残らず頭の中に再生され、なかなか眠れない。
眠ろうとするのをあきらめたときには、蝋燭を一本ともして『渦巻く影』の文章を少しずつ読み進め、
共感の魔法に関する節のページをめくる。※持って帰る許可済み

かつて結びついていたふたつのものはいつでもある程度つながっていること
どうやって魔法使いがそれを自分に都合よく利用できるかということ
などの記述に関心を持ち、実験の仕方を考えることで最悪の夜を乗り切り、早く起きパンを焼き、実験に励むことができた。

一方で宮殿で起きた(前)異端審問官の国外追放までの経緯などについて話すのは三日目で億劫に(というか)
何度も何度も話したくないモーナ、
英雄は話すべきだと心から思っている叔母
でも、英雄って言葉が胸の中でねじれて、息ができなくなった気がして、階段をおりて地下室に逃げた。
前に進んだりしていない、ひたすら逃げただけ。
女公のところへ行ったのは、逃げ続ける道がなくなったにすぎない。
英雄。
そんな言葉があたしに使われるべきじゃなかった。

大人たちが止めるべきだったのに。女公が勇気を出して衛兵のところへ行くべきだった。衛兵が女公に警告すべきだった。評議会が誰だったにしろ、あの布告について女公に知らせておくべきだった。女公は街の人から報告を受けるべきだった。みんながみんな失敗して、そのせいでいま、スピンドルとあたしが英雄になったのだ。

ドアが細くひらいた。あたしは洟をすすった。タビサ叔母とは話したくなかった。善意なんだから。あたしのことを誇らしく思ってくれてるんだし。自慢に思うのはおかしいって、どう説明したらいいかわからなかった。あたしはそんなことをするつもりじゃなかった。この街全体がやるべきことをやらなかっただけだ。

でも、きたのは叔母じゃなかった。アルバート叔父が入ってきて、隣で同じ段に腰をおろした。あたしは場所をあけようと横にずれた。
おばさんが話しているのが聞こえて、(ボブが苦手にもかかわらず)おりてこようと思ったらしい。
モーナとアルバート叔父さんとの遣り取りは涙なしには読めません。是非皆さんご自身で目を通していただきたい!

モーナの問いに答える将軍は、

「だが、なにができる? 軍人に街を任せるわけにはいかない。われわれはしもべとしては役に立つが、あるじとしては悲惨だ。もし私が、エルガーが夢見たように、魔法使いの皇帝になると宣言したなら・・・・・・まあ、誰かが止めてくれることを願わずにはいられんな」
(タビサ叔母さんや女公は聡明と優しさを併せ持った良識の持ち主故に、行動や振る舞いは良識の範囲にとどまってしまいがち。だから、オベロンやエルガーといった野心家に出し抜かれる構図がなりたってしまうのだろう。ところがどっこい、そんな二人の生き方とモーナの魔法の相性は抜群にイイ! つづくかも。)

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