華氏451度 レイ・ブラッドベリ 伊藤典夫訳 早川書房
訳者があとがきで
さて『華氏451度』の改訳は、長年僕が心のなかで温め、今回やっと念願かなって実現した企画である、
とあり、機会を見計らっていたわけでもないけど、ここらで読むことに。社会的なお話と思っていたのだが、
それどころなストーリィではなかった。やはり、もっと早くに読んでおけばと分かりきった後悔をする。誰でも携わり、担い手にならんやとい辺りが現在の面白いライトノベルと通じる気がする。そのような感想は置いといて、筋を辿ろっと。
北エルム街十一番地の仕事をこれまで違う気持ちで済ませたモンターグは変り種として慎重に監視されていたクラリスが4日も前に車に轢かれたことを知る。会うことができなくても疼く何かが生じていたモンターグはフェーバーを訪ねる。
本は洞窟から半分そとへ導く存在かも
さがしものは、手にはいるところから手にいれればよい(例えば、古いレコードや映画や友人、または自然のなかに、場合によってはみずからのなかに)。
直観的に正しく把握しながらロマンチストに足りない三つは、情報の本質/余暇(情報の本質を消化するための時間)/最初の二つの相互作用から学んだことについて行動を起こすための正当な理由。
本は、われわれがいかに間の抜けた愚か者であるか、気づかせてくれるもの。
最早、モンターグは巧みな言葉に惑わされることもないが死にたがっていたベイティーに手を下すことにもなる。
一席ぶつ時間はあるだろうか? 一千万、二千万、いや三千万の視聴者の目のまえで猟犬にとらえられたとき、この一週間の経験のすべてを短いフレーズに、あるいはひとことにまとめあげることはできるだろうか?
あそこにある月、あの月を光らせているのはなんだ?
太陽は毎日、燃えている。太陽は“時間”を燃やしている。
茨の薮のなかへ、匂いの感覚と感触の湖のなかへ、舞い落ちる木の葉のささやきにとりかこまれて。
線路の上を歩きつづけるモンターグは証明しようはないがずっと以前、クラリスもここを歩いていたにちがいないと確信する。
火が、奪うだけでなく与えることもできるとは、これまで考えたこともなかった。
・・・自分は火に引き寄せられて森から出てきた獣だという、ばかげてはいるものの、じつに快い感覚にとらわれていた。
この先、必要になると思われる知識を無傷で安全に保存すること、それだけだ。
じつは、最初から計画されていたわけではないんだ。各々、記憶しておきたい本があって、記憶した。それが二十年かそこらのうちに、放浪の途中で出会い、ゆるいネットワークができて、計画がスタートしたということでね。
そして戦争がはじまり、その瞬間に終わった。
あとになってみると、モンターグのそばにいた男たちはたしかになにか見たとは断言できないありさまだった。おそらくは、空でなにかが動いてきらりと光っただけだったのだろう。たぶん爆弾だ。ジェット機が十マイル、五マイル、一マイル上空で、ほんの一瞬のうちに、大きな手で天空に種をまくように爆弾をまき散らし、爆弾は恐ろしいほどのスピードで、それでいてふいにゆっくりと、朝の街においていったのだろう。
そうだ、これは昼まで大事にとっておこう。昼のために・・・・・・
街に着いたときのために。
考えることを許されたばかりか傲慢にも考えが残れば嬉しいなんて思っているから、ドーキンスの利己的な遺伝子の11章「ミーム 新登場の自己複製子」同様に響くテキストです。
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華氏451度〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫SF) | |
レイ・ブラッドベリ | |
早川書房 |
訳者があとがきで
さて『華氏451度』の改訳は、長年僕が心のなかで温め、今回やっと念願かなって実現した企画である、
とあり、機会を見計らっていたわけでもないけど、ここらで読むことに。社会的なお話と思っていたのだが、
それどころなストーリィではなかった。やはり、もっと早くに読んでおけばと分かりきった後悔をする。誰でも携わり、担い手にならんやとい辺りが現在の面白いライトノベルと通じる気がする。そのような感想は置いといて、筋を辿ろっと。
北エルム街十一番地の仕事をこれまで違う気持ちで済ませたモンターグは変り種として慎重に監視されていたクラリスが4日も前に車に轢かれたことを知る。会うことができなくても疼く何かが生じていたモンターグはフェーバーを訪ねる。
本は洞窟から半分そとへ導く存在かも
さがしものは、手にはいるところから手にいれればよい(例えば、古いレコードや映画や友人、または自然のなかに、場合によってはみずからのなかに)。
直観的に正しく把握しながらロマンチストに足りない三つは、情報の本質/余暇(情報の本質を消化するための時間)/最初の二つの相互作用から学んだことについて行動を起こすための正当な理由。
本は、われわれがいかに間の抜けた愚か者であるか、気づかせてくれるもの。
最早、モンターグは巧みな言葉に惑わされることもないが死にたがっていたベイティーに手を下すことにもなる。
一席ぶつ時間はあるだろうか? 一千万、二千万、いや三千万の視聴者の目のまえで猟犬にとらえられたとき、この一週間の経験のすべてを短いフレーズに、あるいはひとことにまとめあげることはできるだろうか?
あそこにある月、あの月を光らせているのはなんだ?
太陽は毎日、燃えている。太陽は“時間”を燃やしている。
茨の薮のなかへ、匂いの感覚と感触の湖のなかへ、舞い落ちる木の葉のささやきにとりかこまれて。
線路の上を歩きつづけるモンターグは証明しようはないがずっと以前、クラリスもここを歩いていたにちがいないと確信する。
火が、奪うだけでなく与えることもできるとは、これまで考えたこともなかった。
・・・自分は火に引き寄せられて森から出てきた獣だという、ばかげてはいるものの、じつに快い感覚にとらわれていた。
この先、必要になると思われる知識を無傷で安全に保存すること、それだけだ。
じつは、最初から計画されていたわけではないんだ。各々、記憶しておきたい本があって、記憶した。それが二十年かそこらのうちに、放浪の途中で出会い、ゆるいネットワークができて、計画がスタートしたということでね。
そして戦争がはじまり、その瞬間に終わった。
あとになってみると、モンターグのそばにいた男たちはたしかになにか見たとは断言できないありさまだった。おそらくは、空でなにかが動いてきらりと光っただけだったのだろう。たぶん爆弾だ。ジェット機が十マイル、五マイル、一マイル上空で、ほんの一瞬のうちに、大きな手で天空に種をまくように爆弾をまき散らし、爆弾は恐ろしいほどのスピードで、それでいてふいにゆっくりと、朝の街においていったのだろう。
そうだ、これは昼まで大事にとっておこう。昼のために・・・・・・
街に着いたときのために。
考えることを許されたばかりか傲慢にも考えが残れば嬉しいなんて思っているから、ドーキンスの利己的な遺伝子の11章「ミーム 新登場の自己複製子」同様に響くテキストです。
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