□アタックスグループ主席コンサルタント・西浦道明
不動産賃貸業なる業種がある。初めからこの業種を選ぶ企業もあるが、別事業を営む経営者が年齢を重ねるうちに、後継者がいないとか事業の将来が不安だとかいう理由から、それまでの事業をたたみ不動産賃貸業に転ずるケースは結構多い。
なぜ不動産賃貸業かというと、この業種が景気変動の影響を受けにくく、相対的に倒産確率が低い安全な事業であるという認識が経営者の頭にあり、経営に縁遠い専業主婦や子女でもできると思うからだ。こうした理由で不動産賃貸業に転ずることが間違いとは思わないが、プロ経営者としての感覚が不必要かといえば、それは絶対に正しくない。
◆巨額の修繕費
A社という賃貸ビル会社がある。都心に8階建てビルを所有しており、バブルのころの不動産価格は大変高額で賃貸収入も相当なものだった。当時、担保価値も高く、銀行がお金を借りてくれというので言われるままに借りていた。お金というものは、あれば使うものだ。
A社は、父親が社長、母親が監査役、息子と娘が取締役という家族企業であった。賃貸収入と借入金は、法人税を支払いたくないという思いからも、役員報酬や諸経費に消費され、数億円の借金のみ、折り返し融資で残っていた。
それから十数年という歳月が過ぎた。近隣に新築ビルが並び建ち、抜けたテナントがなかなか埋まらないことに気づいた社長は、大規模修繕しなければ不動産価値を維持できないことに気づいた。建設業者の見積りによると、2億円はかかるという。会社には数千万円の預金しかなかったので、銀行担当者に融資を申し込んだが一向に返事がない。しびれを切らして担当者に確認したところ、担保価値目一杯の借り入れが残っており、これ以上貸すのは無理だという。
以前は、銀行が「もっと借りてくれ」と言ってきたので、いつでも貸してもらえると思っていたが、時代が変わった。不動産価格も賃貸収入もともに下がり、もはや銀行は貸さなくなっていた。
◆膨らんだつけ
本来、ビルは50年間に1度建て替えるとして、仮に10億円が必要とすると、毎年2000万円ずつ、減価償却相当の現金を蓄えなければならないはずだ。50年の途中で30年目と40年目に大幅な改修工事が必要なら、その部分の資金も追加で蓄える必要がある。役員報酬はその残りで支払うしかない。こんな当たり前のことを先ほどの経営陣は忘れてしまっていたのだろうか。
年に1度の決算期が到来するが、そこで税金を支払わなければならないことに気を奪われてしまうからだろうか、減価償却相当の蓄えをしてこなかったつけは実に大きい。
A社はテナントが抜けていく中、資金不足から手の打ちようがない状況に追い込まれてしまった。プロの不動産賃貸業者ならこんな愚行は絶対にしない。親からただでもらった「財産」だから、長期的視野を持てずに食い潰してしまう。
これを笑い話として聞き流せるだろうか。不動産賃貸業といえども簡単には永続させることなどできないのだ。経営に、長期的視野に立った財務の視点は絶対に欠かせない。
◇
【会社概要】アタックスグループ
顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。
参考になりますね
年収 ランキング
エグゼクティブサーチ
年収700万
年収アップ
ヘッドハンター
JDK7
Ruby on Rails 2.0.2
Apache2.2
Tomcat6.0
UMLモデリング技能認定 資格
ORACLE MASTER Silver
C# 3.0
モールド金型
甲種特類消防設備士
M&A
宝泉
顧問
不動産賃貸業なる業種がある。初めからこの業種を選ぶ企業もあるが、別事業を営む経営者が年齢を重ねるうちに、後継者がいないとか事業の将来が不安だとかいう理由から、それまでの事業をたたみ不動産賃貸業に転ずるケースは結構多い。
なぜ不動産賃貸業かというと、この業種が景気変動の影響を受けにくく、相対的に倒産確率が低い安全な事業であるという認識が経営者の頭にあり、経営に縁遠い専業主婦や子女でもできると思うからだ。こうした理由で不動産賃貸業に転ずることが間違いとは思わないが、プロ経営者としての感覚が不必要かといえば、それは絶対に正しくない。
◆巨額の修繕費
A社という賃貸ビル会社がある。都心に8階建てビルを所有しており、バブルのころの不動産価格は大変高額で賃貸収入も相当なものだった。当時、担保価値も高く、銀行がお金を借りてくれというので言われるままに借りていた。お金というものは、あれば使うものだ。
A社は、父親が社長、母親が監査役、息子と娘が取締役という家族企業であった。賃貸収入と借入金は、法人税を支払いたくないという思いからも、役員報酬や諸経費に消費され、数億円の借金のみ、折り返し融資で残っていた。
それから十数年という歳月が過ぎた。近隣に新築ビルが並び建ち、抜けたテナントがなかなか埋まらないことに気づいた社長は、大規模修繕しなければ不動産価値を維持できないことに気づいた。建設業者の見積りによると、2億円はかかるという。会社には数千万円の預金しかなかったので、銀行担当者に融資を申し込んだが一向に返事がない。しびれを切らして担当者に確認したところ、担保価値目一杯の借り入れが残っており、これ以上貸すのは無理だという。
以前は、銀行が「もっと借りてくれ」と言ってきたので、いつでも貸してもらえると思っていたが、時代が変わった。不動産価格も賃貸収入もともに下がり、もはや銀行は貸さなくなっていた。
◆膨らんだつけ
本来、ビルは50年間に1度建て替えるとして、仮に10億円が必要とすると、毎年2000万円ずつ、減価償却相当の現金を蓄えなければならないはずだ。50年の途中で30年目と40年目に大幅な改修工事が必要なら、その部分の資金も追加で蓄える必要がある。役員報酬はその残りで支払うしかない。こんな当たり前のことを先ほどの経営陣は忘れてしまっていたのだろうか。
年に1度の決算期が到来するが、そこで税金を支払わなければならないことに気を奪われてしまうからだろうか、減価償却相当の蓄えをしてこなかったつけは実に大きい。
A社はテナントが抜けていく中、資金不足から手の打ちようがない状況に追い込まれてしまった。プロの不動産賃貸業者ならこんな愚行は絶対にしない。親からただでもらった「財産」だから、長期的視野を持てずに食い潰してしまう。
これを笑い話として聞き流せるだろうか。不動産賃貸業といえども簡単には永続させることなどできないのだ。経営に、長期的視野に立った財務の視点は絶対に欠かせない。
◇
【会社概要】アタックスグループ
顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。
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C# 3.0
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甲種特類消防設備士
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宝泉
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