真夜中のエレベーターは…

夜中のエレベーターに
乗っていた
たったひとり
６Ｆのボタンを
押してある
県庁所在地
政令指定都市
そのＪＲの駅前
大手信託銀行所有のビル
エレベーターは
新しくて、綺麗
昼間乗る分には
まったく恐怖など
感じる筈もない
でも、その時は
ちょっと、違った
まず、エレベーターホールが
保安灯だけ
記憶は、はっきりしないけど
その時間に、支社に戻ったのは
初めてだったのかも知れない
いや、その時だけだった
のかも知れない
確かに、勤めていたのは
たった二か月だからね
普通は、本社から
直帰出来る
ただ、その日は
おまえの事だ
要領が悪く
帰らざるを、得なくした
そんな感じだろう
保安灯だけの
無人のエレベーターホール
それだけで気持ち悪い
エレベーターのボタン
直ぐ開かない
その階に、いないからだ
地下街から、地階に入ったから
普通、籠は止まってない
一階から、降りてくる
こんな薄暗いホールで
待つのも気持ち悪いけど
止まって、すぅーっと開く
無人のエレベーター
その室内も
凄く、薄暗い
闇に、うっすら浮かぶ
誰も、乗っていない
乗るのも、気持ち悪い
でも、仕方がない
地階から、６Ｆ迄は
いくらなんでも
階段では登れない
しかも、登るなら
傍の非常口から入る
人影のないだろう非常階段
しかも、保安灯だけ
もっと、気持ち悪い
だから、この
うすら寂しいエレベーターしか
手段は、ないんだ
乗って、室内
６Ｆのボタンを押す
閉まると、更に
しみじみ、ひとり
閉じ込められた
ひたすら、薄暗い室内
ちょっと、背筋が
寒いかな
すぅーっと、上り始める
何事もない
背筋も、寒いまま
すうーっと、着いて
背筋は、寒いままだ
すぅーっと、開く
やっぱり、保安灯だけ
６Ｆのエレベーターホール
夜目は利いてきたけど
薄暗いまま
でも、何事もなかった
何にも、起きる訳がない
さあ、オフィスだ
書類を置くとか
確か、一手間
まったく、要領が悪い
ＪＲＴ海道線で
そのまま、一本だったのにね
でも、広いオフィスも
真っ暗だな
でも、エレベーターより
まだ、ましかな
書類を置くデスクの辺りの
電気だけ点けた
まったくね
こんな時に限って
警備員さんの巡回にも
行き合わないだよな
こんな時には、何となく
警備員さんに
「どうしたんですか❓」
とか、声を
掛けられたかったりする
普段は、面倒いだけだけど
今は、なんかね
ひとと行き合って
ほっとしたいだな
書類を、置いて
また、電気を消す
やっぱり、真っ暗いオフィスも
かなり、気持ち悪い
さっさと後にする
でも、その先も
また、薄暗い
誰もいない
エレベーターホール
さあ、また
あのエレベーターに
閉じ込められなければ
いけないんだ…

　　　　　　　　to be continued