しろは
生まれて初めてだったかな
クルマに、ちゃんと
乗れたのがね
そうだよ、あの時
ペット霊園に行く時
もちろん、しろのお葬式だ
大好きな毛布やタオルに
包まれている
おにいちゃんに
しっかり、抱き締められて
そうだよな
いつも、ぞんなだった
おにいちゃんに
抱っこされて
いつも、すぐだった
おにいちゃんが
しっかり、抱っこして
乗せるんだけど
いつもまで経っても、だめ
生涯、慣れなかった
走り出すと、直ぐだ
ぐったりして
もう、戻している
おにいちゃんの手には
ビニール袋
おにいちゃんたちは
二人かかり
身体を、さする
大騒ぎだったな
もちろん、車酔いの薬も
いつも飲ませてたよ
それでも、ダメ
一度、嫌な思いをすると
ずっと、忘れないみたい
最初のクルマ酔いが
トラウマに、なってたのかな
本当、意外と
神経質だったね
よその子は、みんな
クルマから、顔出したり
何でも、なさそうなのにさ
そこだけは、困った
いやいや、違うな
そこも、困った
何処も、かしこも
みんな、困った
困らないところなんて
なかったかな
困り果てたいぬだった
しろはさ
でも、もう静かだ
もう、気配がない
なんだろうな
生きていると、みんな
気配がある
背後にいるけど
もう、しろの
気配がない…
いや、おにいちゃん
啜り泣くなよ