よろず戯言

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ボクは坊さん。

2015-11-08 20:33:44 | 映画

先日の休みに映画を観てきた。

伊藤淳史 主演のドラマ、"ボクは坊さん。"だ。

原作は現役の住職である、白川密成 氏の同タイトルのエッセイ。

キャッチコピーは、"24歳、ボクは突然、住職になった。”

 

 

数か月前に予告編を観て、面白そうだなと思って興味が沸いた。

仕事柄、宗派を問わず、お寺と接する機会が多々あるが、

大抵の場合、子どもの頃からそれを学び、

専門の学校へと進み、副住職としておつとめし、若いうちから住職への道を歩む。

このように、サラリーマンを辞め、何の経験もないまま、

急に住職になったという例は聞いたことがない。

 

 

とはいえ、現役住職の実話を元にした話という。

これは面白くないわけがない!

実際にお坊さんの世界がいかなるものなのか?

一般の人よりはそれなりに詳しいとは思うが、

それでも、まだまだ未知の部分が多い。

宗派や地域によって風習もしきたりも大きく差異がある。

これは観ないといけないだろう!

期待を膨らませ、公開されてすぐに観に行った。

 

 

愛媛県、四国八十八カ所、第五十七番札所、栄福寺。

この由緒あるお寺の子として育った、進(伊藤淳史)。

一応、住職を継ぐ身ということで、きちんと専門の大学、

真言宗・高野山大学を卒業、お坊さんの資格も取得する。

だが、実家のお寺に戻っても、住職の祖父(品川徹)に付いて、副住職をするわけではなく、

ふつうに市内の書店に就職し、サラリーマンとして働いていた。

 

そんな進を見て、栄福寺の先行きを不安視する、檀家。

その長老を務める、新居田(イッセー尾形)は、住職に不満をこぼす。

世襲に拘る必要はない、必要とあれば、よそから次の住職を迎えると。

だが、住職は笑みを浮かべたまま、進の考えを尊重するかのように、

それを否定せず、やんわりと新居田に返答する。

 

 

進はいずれ住職を継がなければならない・・・そう身構えてはいたが、

あれこれ考え、この若さで仏門の世界に身を投じるのをためらっていた。

普通のサラリーマンになることで、なんとなく現実逃避をしているようだった。

幼馴染の真治(溝端淳平)と、京子(山本美月)から、

「戻って来たのに、なんで坊さんにならないの?」と問われると、

「普通の世界も経験したいっていうか・・・。」

あまり明瞭な回答ができない進。

 

 

そんなとき、祖父が病気で倒れる。

末期の膵臓ガン。

もはや手遅れだった・・・。

沈痛な面持ちの進の家族。

後継ぎが居ない。

取り急ぎ、予定の入っている法事などは付き合いのある住職にお願いし、

その後、栄福寺として、どうなってしまうのか・・・。

ため息をついて落胆する家族の隅で、進は決意する。

 

翌日、剃髪した進の姿があった。

役所で僧侶名、"光円"に改名し、正式に僧侶、栄福寺の住職となる。

病室の祖父の元へ報告へ行く。

丸めた頭を祖父に触らせ、後を継ぐことを報告する光円。

チューブを繋がれ声にならない声を出して、喜んでくれる祖父。

そしてまもなく、光円が継いでくれたことに安心してか、祖父は永眠する。

 

 

こうして急遽、住職となった光円の生活がスタートする。

一応、お寺で生まれ育ち、専門の大学で学び、僧侶の資格は得ていたものの、

いざその世界に入ってみると、解らないことだらけで驚き戸惑うばかり。

それでも栄福寺を盛り立てたいと、光円なりに若い発想で色々と考える。

だが、あまりに的外れで頼りない新住職に、檀家長老の新居田が厳しく接する。

 

 

お坊さんの世界で苦戦しつつ、

幼馴染だった京子の仏前式の結婚式の式司者を務めたり、

大学時代の僧侶仲間と高野山を再び訪れたり、

住職として、だんだんと人々の色んな思いや悩みを受け止め、

そして、何よりも自身が一番、葛藤し思い悩んで成長してゆく。

身近に起こる、生と死。

新しい命に、消えていく命。

色んな人生ドラマに出会いながら、住職として光円は自身の生き方を探っていく―。

 

 

面白かった。

ただ、期待していたのとは違ったかな。

もっとコメディ色の強いものだと思っていたのだが、そうでもなかった。

それよりも、幼馴染が絡む、かなりシリアスなドラマがあって、

それが物語の本筋だったのかもしれないが、正直蛇足だった。

原作にはないエピソードらしく、幼馴染の二人も映画のオリジナルキャラクターだとか。

ただ、それ以外の、檀家長老とのエピソードにはラスト涙を流した。

10年くらい前に観た、本木雅弘 主演の"おくりびと"並に泣いた。

枕経,法名,弔事,野辺送り,法話・・・。

仕事柄、お葬式のシーンは、やっぱり堪えられないな・・・。

 

 

業界を知っていると判る、お坊さんの世界がきちんと正しく描かれていた。

原作者である、白川氏の全面協力があって、

ロケは本物の栄福寺で行われ、仏具や法衣も本物を使用。

お経や作法なども全て本人の直監修!

エキストラの一部も、実際居合わせた、本当のお遍路さんらがそのまま登場。

そのため、かなりリアリティのある作品になっている。

だからこそ、あのメインのストーリーが余計に蛇足に感じてしまう。

それにしても、この栄福寺さん、立派な瓔珞(ようらく )をたくさん吊るしたお寺だ。

 

 

伊藤淳史、子役時代から活躍している個性的な俳優さん。

今年観たのは、ビリギャル以来だった。

上手いんだけど、上手すぎて幼馴染との演技ではひとり浮いていた。

ひとりだけ演技臭が強くって、逆に大根に見えてしまうくらい。

これが、母親役の松田美由紀さんや、大学時代の友人役で出ていた濱田岳

檀家長老役のイッセー尾形との演技では、しっくりくるから不思議。

 

 

山本美月ちゃん、ちょうど一年くらい前に観た、

向井理,片桐はいり主演の小野寺の弟、小野寺の姉で、

初めて見たときからファンになった、とんでもない美少女。

二十歳過ぎているから、少女はないか。

今年はポケモン映画でナレーションもやっていた。

今回は主役の幼馴染で悲劇のヒロイン役。

白無垢姿がとてつもなくきれいだった。

顔が男前だから、和装が似合うんだろうなあ。

伊藤淳史と並んでいると、山本美月ちゃんの方がずっと背高いのに顔はずっと小さい。

本業モデルだからな。

 

 

イッセー尾形、実はこの人が判らなかった。

役の檀家の長老、新居田は序盤から登場する、主要キャラクター。

このキャラクターが言わば、亡くなった先代の代わりとして、

進(光円)を優しく厳しく見守り、成長させていくキーマンなのだが、

この頑固そうで厳しくて、でもひょうひょうとして、優しくもある、

その独特なキャラクターを白髪の腰の曲がったジイさん俳優が演じている。

誰だろうな~この俳優さん・・・劇中ずっとそう思っていたのだが、

ラストのスタッフロールで、イッセー尾形だと知る。

ああ!そういえば・・・声とかでなぜ気付かん!?

ちょっと見ないうちに、えらく年とったなイッセー尾形!

ということは、あの腰が曲がったジイさんも演技だな!

まだ一人芝居やってんのかな?

本当に判らなかったわ・・・。

 

 

伊藤淳史ファンは必見。

お坊さんの世界に興味がある人も必見。

葬祭業界で働くひとも観ておくべき。

やはり知らないお坊さんの世界を垣間見ることができる。

あと祭壇の装花、愛媛あたりはけっこうショボいのね・・とか、

バラ使っても叱られないのね・・・って思って観ていた。

白上がり,トゲ花毒花厳禁,菊オンリー、シキミオンリー、

宗派や地域で祭壇の花飾りも色々だからなあ。

 

 

居酒屋で若い僧侶が酔い潰れる描写があるが、

知らない人は、修業中のお坊さんが酒のんでタバコふかして、

若い女性にうつつぬかして・・・!

なんて驚くかもしれないが、現実はもっとひどい。

「坊さんだって人間だ」って、いう言葉では済ませないくらいひどい。

しかも格式ある立派な寺院の子息に限ってそうである場合が多い。

これは広島で嫌というほど目の当たりにして幻滅した。

流川の高級キャバクラで全裸で泥酔、おネエちゃんの膝で、

ウイスキーがぶがぶやってた広島市内の某寺の副住職、今頃、ちゃんと継いでんのかな?

自慢のBMWにまだ乗ってるのかしら?

カブ単にまたがって、コツコツと檀家のお宅を回る、田舎の坊さんがいちばんだ。

 

 

 

※瓔珞(ようらく)

お寺や仏堂などで、天井から吊るされた装飾具。

大抵、金色をしていて鳳凰や龍など彫り込まれ、派手な装飾が施されている。

前に紹介した、ヨウラクツツアナナスという植物も、この装飾具が名前の由来。

大きなお寺などでは、これがたくさん吊るされていて、

頭などに当たるくらいにまで垂れ下がっていることがある。

寺院葬などで、道具を持ちこむ際、これに物をぶつけて壊さないように、細心の注意を払っていた。

壊してしまうと、びっくりするくらいの修繕費を要求されるだろうから・・・。

 

 



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