不定期掲載ガンダム記事、"宇宙世紀に散ったキャラクターたち”。
今回は、一瞬の油断から敵と刺し違えてしまった、"百舌”に例えられた勝気な女戦士。
"機動戦士Vガンダム”より、ヘレン・ジャクソン。
宇宙世紀0153年。
マイッツァー・ロナが、"クロスボーン・バンガード軍”を結成し、
地球圏の支配を企てたバビロニア紛争から30年の月日が流れていた。
その間、各サイド間やアステロイドベルト、木星からの新勢力なども加わり、
"宇宙戦国時代"とも称され、各地で紛争や戦乱が絶えないでいた。
地球圏を実質支配していた、地球連邦政府はさらに機能が弱体化。
これら紛争を抑えるどころか、介入することもなくなって久しかった。
そんななか、民間の有志たちが集い、地球圏に新たな脅威として現れた、
木星勢力、ザンスカール帝国に対抗するため、私設軍隊を結成。
民間のレジスタンス組織、"リガ・ミリティア"だ。
地球にまで侵攻してきたザンスカール帝国軍に対して、
ゲリラ作戦によって徹底抗戦することになる。
そのリガ・ミリティアが、月でMS(モビルスーツ)を極秘開発する。
独自開発ながら、サナリィなどの研究者が参加していたため、
当時の連邦軍のMSを遥かに凌ぐ、高性能のMS開発に成功。
その最新型の高性能MS、ヴィクトリーガンダムと、ガンイージ。
この機体で編成された、リガ・ミリティアの主力MS部隊、"シュラク隊"。
オリファー・イノエを隊長として、第一部隊には、
ジュンコ・ジェンコをリーダーとして、若い女性パイロット6名で構成されていた。
女性ながらも、メンバー全員、MSの操縦技術に長けており、
その大胆且つ繊細な戦法で、ザンスカール帝国軍の地上部隊(ベスパ)のMS部隊を蹴散らしていく。
そのシュラク隊のうちのひとり、最も長身で男勝りで勝気な性格、
味方の窮地をフォローしつつ、確実に敵を仕留める。
キツネ色のショートヘアー、口紅にこだわりを持つ女戦士、ヘレン・ジャクソン。
ひょんなことから、リガ・ミリティアの老人ばかりの部隊、
カミオン隊に加わることになった少年、ウッソ・エヴィン。
カミオン隊が運用する、ヴィクトリーガンダムの正規パイロット、
マーベット・フィンガーハットが負傷したため、成り行きでパイロットを代行。
その高い操縦技術がカミオン隊のメンバーに買われ、そのまま参加することに。
だが、思春期の少年は、戦争というものを軽んじていた。
考え過ぎた彼が敵を陽動しようと、単独で行動してしまう。
しかもコックピットには、幼馴染の少女シャクティと、
戦災孤児の乳児、カルルマンも乗せて・・・。
結果、ベスパの中隊に発見されてしまい、
ウッソの乗ったコア・ファイターは敵に囲まれ拿捕された格好になり、
そのまま敵基地へ連行されそうになる。
そんな窮地のなか、突如現れた見馴れないMSの部隊。
ガンダムによく似た、グリーンの機体が6機!
ウッソを包囲していた、ベスパのMS部隊を次々と蹴散らす、
戦乱のなか、ウッソはコア・ファイターを着陸させ、シャクティとカルルマンを降ろし、
駆け付けたオリファーから、パーツをもらってドッキング。
ヴィクトリーガンダムで、自分の窮地を救ってくれた見慣れぬMS部隊と共闘。
敵MSに急接近され、あわや、やられそうになったところを誰かに救われる。
動揺するウッソに檄を飛ばす、その助けてくれたパイロット。
「止まったらやられるだろ! 逃げるか戦うか、はっきりするんだよ!」
「あれも女の人がパイロット!?」
声の主が女性だったことに驚きながらも、
「戦争・・・ひとりでなんか、できやしないんだ!」
彼女の言葉で、再びガンダムを動かすウッソ。
このウッソを助けた機体こそ、ヘレンの駆るガンイージだった。
そのままシュラク隊の見事な連携プレーで、ベスパを圧倒。
「敵は無謀過ぎます!」
「アマチュアじゃないのか!?」
「い・・いや白兵戦をよく知ってる連中だ・・・!」
対するベスパのMSパイロット達は、初めて見る新型の性能と、
それを駆るシュラク隊の、あまりにも大胆な戦法に翻弄され驚愕していた。
シュラク隊のひとり、マヘリア・メリルの機体が、敵二機に捉えらた。
「マヘリア!助ける!!」
そういってマヘリア機に駆けつけるヘレン機。
そこへウッソのガンダムが、二体の敵機を一気に撃破する。
一瞬にして二機を、爆発させずに仕留めた、ウッソの芸当に驚くヘレンとマヘリア。
「・・・急速に味方機が見えなくなった!?」
ベスパのMS中隊を率いていた、ゲトル・デプレ。
彼がそうつぶやいた刹那、後方から来たジュンコ機によって落とされる。
隊長がやられたため、残ったベスパのMSは戦闘エリアから離脱していった。
この戦闘後、カミオン隊に合流するシュラク隊。
ガン・イージから降りてきたパイロット達は、
スタイルがよく美人ばかりだった!
あの戦闘をこなしていたのが、若い女性ばかりだったのに驚くウッソ。
思春期まっただなかのウッソは、ただただ顔を赤くしてかしこまる。
シュラク隊のメンバーもまた、ガンダムを操縦していたパイロットが、
年端もいかない少年だったことに驚愕する。
カミオン隊はリガ・ミリティアの集結場所を目指す。
その途中に寄ったのは、旧世紀時代の空港施設があるベチエン。
そこに駐留する連邦軍に大型の輸送機を借り、カミオン隊のMSを運ぶ手はずだった。
だが、リガ・ミリティアの暗号を解読したベスパは、カミオン隊の潜伏先を嗅ぎつけてしまう。
輸送機にMSを積載した状態のなか、ベスパが奇襲を仕掛けてきた。
地上から戦闘用バイク、ガリクソンを駆る、ドゥカー・イク率いるガッタール隊が、
空からは、ルペ・シノ率いる、トムリアットの小隊が同時に攻撃を仕掛けてきた。
輸送機を破壊されては、カミオン隊は本隊に合流できなくなる!
連邦の駐留部隊のMSは旧式ばかりで、ベスパの最新鋭のMSに対抗できず、
さらに実戦経験も乏しいパイロット達でまったくアテにならず、
輸送機を死守せんと、必死に応戦に出る、ウッソたちと、シュラク隊のメンバー。
「空の部隊は私に任せてもらうよ、姉さん!」
リーダーのジュンコにそう言って、真っ先に出撃する、勝気なヘレン。
ベスパの狙いはベチエンの基地でもMS部隊でもなく輸送機。
だが、連邦軍の輸送機の艦長、ロベルト・ゴメスは、格納庫でやられたんじゃ話にならない!
輸送機を発進させ、滑走路にそのまま出ていく。
撃墜を免れるために、輸送機には宇宙引越公社所属のカモフラージュを施していたものの、
ベスパ側にすぐに見破られ、攻撃を受ける。
輸送機の前で、必死に応戦する、オリファーとマーベットのガンダム。
だが、一機のトムリアットが、低空から輸送機めがけて直進。
それにすぐ気付いたのが、ヘレンだった。
上空からトムリアットめがけ急降下して一蹴。
「そうそう好きにさせやしないよ!」
相手MSを掴み、気迫のこもった表情でそう叫び、
ライフルを捨て、ビームサーベルを振りかざすヘレン。
そのまま肩口からコックピットまでまっすぐにサーベルを突き刺した。
敵機を落とし、輸送機を守った!
そう思った刹那、トムリアットの拳がヘレン機のコックピットにめり込んだ。
「あああぁぁぁっっっ!!」
断末魔を上げるヘレン。
相手を倒したと思った、その瞬間だった。
「相討ち!?」
「そんなの・・・!」
ヘレンの最期を目の当たりにした、カミオン隊の少年少女らが驚愕する。
輸送機はエンジンに損傷を受けつつも、
重なって横たわる二機のMSを後目に無事に離陸する。
カミオン隊も皆、収容され、シュラク隊のガンイージも輸送機に。
最後に輸送機にたどり着いた、リーダーのジュンコが叫ぶ。
「一機足りないよ! 誰が居ないんだっ!?」
「姉さん・・・ヘレンのバカがお調子に乗って・・・。」
泣きながらマヘリアが答える。
「あのヘレンが!?」
「一番シュラク隊に似合っていて、鳥のモズそのものの性格を持っていたヘレンが・・・!」
「あの戦闘でやられたっていうの!!!?」
メンバーの戦死に、悲しみにくれるシュラク隊のメンバー。
「オリファー隊長・・・。」
泣きじゃくりながら、オリファー機の元にやってくるジュンコ機。
「泣くな! シュラク隊に呼びかけたときから、こうなることは判っていたはずなんだ・・・。」
「泣くんじゃないっ!!」
そう叫ぶオリファーだったが、彼も涙を流し操縦桿を握る手は震えていた。
こうして、シュラク隊が結成されて、最初の犠牲者となったのは、
メンバーのなかで、最も勝気な性格だったヘレン・ジャクソンだった。
輸送機は高度を上げ、基地はベスパに掌握され、ヘレンを回収することはできない。
シュラク隊のメンバーは、ただただ無念の涙を流し続けるのだった。
「輸送機を討ちもらしたか!」
作戦失敗し、攻撃を停止する、ガッタール隊の戦闘バイク。
自機を落とされ、部下に脱出ポッドを回収されて、
そのまま悔しがりながら撤退するルペ・シノのトムリアット隊。
無人になったベチエン空港基地。
ガッタール隊の隊長、ドゥカー・イクがガリクソンから降りる。
そこに横たわる、重なった二機のMSを見て部下のレンダ・デ・パロマと会話する。
「大したパイロットたちだ。」
「メインエンジンを爆破させずに相討ちです。」
「一方は焼き殺され、一方は潰され・・・。」
イクはこの戦いで、単なる民間のゲリラ組織でしかなかったリガ・ミリティアが、
ザンスカール帝国軍に対抗しうる戦力を持ち始めたと悟る。
一方、輸送機では、連邦で閑職に就いて、
そのまま堕落して悠々自適にしていた、ロベルト・ゴメス艦長が、
たった今しがた行われた激しい戦闘を目の当たりにし、
子どもや老人、女性たちが決死の覚悟で行動していることに心動かされる。
こうして、この時代の連邦政府をそのまま体現したような、
堕落しきっていたダメ親父、ロベルト・ゴメスがリガ・ミリティアに参加。
後に、リガ・ミリティアの主力艦隊、リーン・ホース部隊の艦長を務め、
これから繰り広げられる壮絶な戦いのなかで、その手腕を発揮することになる。
女性ばかりの華やかで強いシュラク隊が鮮烈な登場をして、
早くもその次の回でさっそく戦死するという悲惨なキャラクター。
そのため、印象に残っているひとは少ないかもしれない。
この時点では、メンバーの半分は声優が充てられておらず台詞がまったくない。
そんななかでヘレンは、初回登場時からもっとも台詞があり、
短い期間ではあるものの、リーダーのジュンコ以上に目立っていた。
ウッソと最初に絡むのも彼女だし、その時点で、既に最初に犠牲者になるという、
当時はなかった言葉だが、"死亡フラグ"は立っていたのかもしれない。
この後、シュラク隊のメンバー、「急に台詞が増えて目立ちだしたら死ぬ」の法則が立つ。
登場時の活躍や、ジュンコや他メンバーとのやり取りから察するに、
特にそういった設定などはないが、彼女は隊長のオリファーを除き、
シュラク隊のなかで、ナンバー2のポジションだったのではないかと思う。
MSの腕前はもちろん、発言力もあったようで、出撃時に他のメンバーに指示するシーンもある。
リーダーのジュンコに次ぐ、部隊のなかでもサブリーダー的な役割だったと思われる。
シュラク隊の"シュラク"とは、鳥のモズ(百舌)のこと。
その中にあって、リーダーのジュンコから、もっともモズらしいと称えられたほど。
ヘレンがジュンコから他のメンバーよりも、その実力を認められていたようにも思える。
ウッソと、同じくカミオン部隊に身を寄せていた戦災孤児のオデロが喧嘩をしているときも、
どっちが勝つかでジュンコと賭けに興じ、その賭けに勝ってピアスをまきあげていたり。
この記事タイトルはそのときの台詞。
二人の喧嘩を少し離れた場所で見物していたシュラク隊のメンバー。
ジュンコから賭けをもちかける。
「ヘレンはどっちに賭ける?」
「ジュンコがピアスを出すなら。」
「じゃ、あなたの新色のリップスティックと。」
「オーケイ、キスも付けるよ!」
「ワーオ!」
このアメリカドラマみたいなやり取りが、強く印象に残っていた。
ベチエンの連邦軍の女に飢えている、おっさんスタッフらにセクハラされて、
「ヘンタイ野郎のクソ親父!ひぃぃ気持ちわるぅ~~!!」と、体をかきむしっていたり、
戦闘時と、そうでないときのギャップも魅力のあるひとだった。
長身でスレンダー、快活なショートヘアーでルックスもすこぶる良かった。
その強さも相まって、もう少し登場回数が多ければ、
ジュンコやマーベット並にファンも獲得できたろうに・・・と思うのだ。
当時、自分は高校三年。
リアルタイムで観た初めてのガンダムである。
というより、これ以降、宇宙世紀モノが長期アニメ化されることはなく、
けっきょく、リアルタイムで観た、最初で最後のガンダムが、この機動戦士Vガンダム。
そのため、どの作品よりも思い入れがあり、このVガンダムに関しては、
並大抵のガノタにゃ知識面で負けないだろうという自負がある。
そんなVガンダムを視聴していた、思春期まっただなかの高三。
シュラク隊登場時、やはりクラスのガノタ友達と盛り上がる。
「どぅふ、どぅふ、**君はシュラク隊で誰が一番好みぃ~?」
(当時のガノタクラスメートの口調を忠実に再現:籠った低い声で)
「コニーさんかな。」
「どぅふ!?うそやぁん!?コニーさんブスやぁん!」
(当時のガノタクラスメートの口調を忠実に再現:籠った低い声で)
「ええー?コニーさん好きやけどなあ。じゃあ、H田君は誰なん?」
「どぅふ、どぅふ!ジュンコさんに決まっちょうやぁん!!どぅっふ!!」
(当時のガノタクラスメートの口調を忠実に再現:籠った少し高くなった声で)
「U野(また別のクラスメート、そこまでガノタではない)は誰なん?」
「俺はペギーさんやね。」
「ええー!?」
「どうっふ!?」
・・・教室の片隅で、こんな会話をしていた17のときの思い出が・・・。
次回は、三年もの間、同志の再決起を待ち続け、その志をダイヤモンドに託した武人の鑑。
DVDジャケットのイラスト。
シュラク隊が初登場する回が収められている三巻のジャケット。
右から二番目がヘレンさん。
メンバーのなかで一番長身なのが判る。
レーザーディスクおよびVHSのパッケージイラスト。
DVDと同じく、初登場回が収められている第三巻。
もちろん絶版なので、これはDVD-BOX付属の画集から。
奥から二番目がヘレンさん。
放送当時に販売された、Vガンダム設定資料集、
ニュータイプ別冊 100%コレクション 機動戦士Vガンダム~Vol.1 USO'S BATTLE~
それに掲載されていた描きおろしイラスト。
左端がヘレンさん。
・・・一番好きなコニーさんが折り目で見切れてしまった!
トレーディングカードのヘレンさんと、乗機のガンイージ。
この記事のためだけに、ヤフオクで探して落札購入。
カードゲームなんてやらない。
ずいぶん前に作った、1/144ガンイージ。
小さいので塗装が難しかった・・・。
しかもこのメインカラーのグリーン、三色も混合して調色しなきゃいけないという・・・。
フル塗装するのに、継ぎ目消しなんかはしない派。
レーザーディスクおよびVHS、最終巻の13巻に付属されたオマケイラスト。
シュラク隊、追加メンバー含め9人が勢ぞろいした夢のようなイラスト。
ヘレンさんをフィーチャーしてみた。
そのキャラ・スーン並の胸のはだけ様は・・・!
というか、その横の尻は誰のだよ!?
やはり現物ではなく、DVD-BOX付属のハガキサイズの画集から。
もっと大きいサイズで観てみたい・・・ちゃんとした画集とかないのかな?
ご指摘ありがとうございます。
機をみて修正しておきます。