よろず戯言

テーマのない冗長ブログです。

ビリギャル

2015-05-31 21:35:47 | 映画

先日の休みに映画を観てきた。

有村架純 主演のドラマ、“ビリギャル”だ。

原作は塾講師であり起業家でもある、坪田信貴 氏の同タイトルのエッセイ。

正式なタイトルは、もしドラなみに長く、

学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話”。

キャッチコピーは、“この奇跡は、あなたにも起こる――”。

いや起こらねえよ。

 

 
原作である坪田氏のエッセイが大ヒットし、そのまま映画化の運びになったとか。

あまり本を読まないので、こういう本があったことを知らず、

原作の内容も知らないまま、予告編も観ないまま、

ただ単に面白そうなので、思い立って観に行くことにした。

主演の有村架純は、数年前に大ヒットしたNHKの連ドラ、

あまちゃん”で、主要キャラを演じたことで一躍ブレイクし、

その後は映画にドラマにCMに、ひっぱりダコの人気女優さん。

まだ一度も彼女の演技を観たことがなかったので、興味があった。

 

 
愛知県名古屋市内の某私立女子高に通う、二年生のさやか(有村架純)。

中学から大学まで一貫のお嬢様学校で、

中学入学時の受験さえ受かって入学できれば、

多少成績が悪かろうが、スライド式に大学まで進学できる。

そのため、入学してからこのかた、真面目に授業を受けたためしがなく、

勉強をしなくなって、かれこれ5年が経とうとしていた。

成績は学年でビリ、偏差値30の落ちこぼれに。

 

 
いくらスライド式に進学でき、遊んで過ごせるとはいえ、

それは普通に学校生活を送っていればの話。

喫煙や制服の乱れなど、停学処分に何度も遭い、

このままだと、大学への進学はおろか、高校の卒業すら危ぶまれる・・・。

そんな高二の夏休み、さやかは母親ああちゃん(吉田羊)に連れられ、進学塾に現れた。

金髪ヘソ出しつけまにネイル・・・。

ガッチガチなギャルの登場に、思わず目を丸くしてたじろぐ講師の坪田(伊藤淳史)。

 

 
入塾にあたって、学力をみるための簡単なテストをさせてみる。

高校生ならば答えられて当然な中学程度の基礎的な問題ばかりなのに、

トンデもない珍回答の連続。

英単語も漢字も読めない、日本地図も書けない、東西南北も解らない。

だが坪田は呆れるのをとおり越し、さやかに大きく興味を抱く。

その珍回答の発想と、さやかの素直さから、可能性を感じていたのだった。

 

 
そして志望校を決める。

冗談げに坪田が「東大目指してみる?」と訊くと、

「ガリ勉ばっかで、厚いメガネのダサい男しか居ないさそうだからヤダ!」と答えるさやか。

「じゃあ慶応にしてみる?“慶応ボーイ”って聞いたことない?」

「おおっ!超イケメンいそう!」

こうして、偏差値30の学年ビリのギャルが、

私立大学最難関の慶応義塾大学を目指すことになった。

「さやかがケーオーとか超ウケル!」

そう言って笑うさやか。

これから受験までの一年半、

困難で苦痛に満ちた、己との苛烈な戦いになることを本人はまだ知らない。

 

 
学力が小4レベルだと判断された、さやか。

漢字や算数の学習ドリルを渡される。

塾に通い出しても、相変わらず友達と夜遅くまで遊んでばかり。

クラブへ行き、カラオケへ行き、朝帰り。

だが、遊びながらも学習ドリルを広げてきちんと勉強する。

坪田に言われた範囲はきちんとやる。

「分数ヤバくね?」

友達に笑われるさやか。

 

 
学研の歴史まんがを全巻渡される。

これを読破して何度も繰り返し読むように言われる。

聖徳太子が読めない、誰なのかも知らない。

織田信長も豊臣秀吉も徳川家康も知らない。

慶応目指すのに福沢諭吉も知らない。

「大仏の頭がパンチなの、ヤンキーだからじゃなかったんだ!」

漫画を読みながら、色々な発見に驚愕するさやか。

 

徐々に基本的な学力を付けていく。

本人の驚異的な努力で、短期間で5年分の学力を取り戻す。

彼女の口から、「武田信玄すげえ!」とか、「ブラック企業許せなくね?」とか、

“蟹工船”を読みふけったりとか、いつしか勉強のできる子になっていた。

だが、志望校は慶応義塾。

普通に勉強ができる程度では到底合格することはできない。

 

 

このままだと、どうやっても時間が足りない・・。

坪田は周三日コースだったさやかを、周六日コースに切り替えてもらう。

だが、それに伴って受講料は大きくはね上がる。

ああちゃんはどうにかお金を工面して、さやかを塾へと行かせる。

そんな献身的なああちゃんの期待に応えようと、

さやかも必死に勉強に打ち込みだす。

放課後、夜遅くまで塾でみっちり学習し、

帰宅後は部屋で明け方まで勉強。

学校へ行き、授業中に眠る。

 

 
さやかの変貌に、当初冗談だと思っていた友達も、

本気なんだと思い、受験が終わるまで、さやかを遊びに誘わないと協力してくれる。

授業中に眠ってばかりだったさやかを諫めていた担任も、

ああちゃんのごり押しに折れて、授業中に眠ることを黙認するようになった。

だが、模試の結果は芳しくなく、とうとう心折れそうになる。

家族の不和もピークに達し、家庭環境も崩壊寸前。

はたして、ビリギャルは志望校の慶応義塾に受かることができるのか?

 

 

なかなか面白かった。

序盤はとにかく、さやかの無知さで笑う、ヘキサゴン的なコメディなのだが、

中盤からさやかの深刻な家庭環境が描かれはじめ、だんだんとドラマになってくる。

実話エッセイを元にした作品なのだから、最初から結末が決定している。

とはいえ、やはり中盤以降はどうなるものかと見入ってしまった。

 

 
有村架純ちゃん、初めて見たけれど良かった。

ギャルの役は初めてだったらしいが、なかなか様になっていた。

たむろするヤンキー相手に、「うっせぇ!だまってろ!」とか、

父親に対して「うっせぇ!クソジジイ!!」とか、

塾でのおバカでキュートな姿とは異なる面もあり、

演技がなかなか難しかったんではなかろうか。

後半の受験勉強の辛さに心折れるシーンや、父親と少し解り合うシーンなど、

喜怒哀楽悲喜こもごもなシーンがあり、本当に大変だっただろうと思う。

 

 
塾講師の坪田先生役に、伊藤淳史。

子どもの可能性を信じ、それぞれの生徒の興味や嗜好を把握し、

心理学を駆使した巧みな話術と指導で、

どんな生徒であろうが、やる気を引き出し合格に導くやり手の講師役。

実は さやか以上にポジティブな存在で、物語の本来の主人公。

そんな役を熱を込めて演じていた。

高校生に対して、先生として大人として接する。

もはやチビノリダーとか、ワカゾーとか電車とか呼べない。

 

 
さやかの母親、ああちゃん役に、吉田羊。

長らく小さな劇団の舞台で活躍していたらしいが、

演技力がハンパないということで数年前から注目されはじめ、

現在ドラマや映画にひっぱりダコの女優さん。

テレビドラマなどほとんど観ないので知らなかったが、

確かにものすごい演技だった。

で、観て判ったのだが、宮崎の酒造メーカー・雲海酒造の、

そば焼酎雲海のCMに出てる、ちょっとウザい女上司役のひとだった!

あれ、てっきり山本華世みたいなローカルタレントだとばかり思っていた。

 

 
さやかの家庭環境を崩壊寸前にまでした張本人、父親役に田中哲司

昨年、仲間由紀恵と結婚し、話題になったひと。

NHKの大河ドラマ、“軍師官兵衛”で、荒木村重役としても名前が広く知れた。

そのキャラの立ち位置も相まって、強烈なインパクトを放ち、

なによりも、戦国時代に豪傑~謀反人~茶人と移ろう、

その数奇な運命を負った武将を見事に演じ、高評価を受けた俳優さん。

これまでもクセのある嫌われ者のような役柄が多いが、

今回の父親役もこれまでの役に負けず劣らず、かなりクセのある役どころだった。

 
 
母親が吉田羊で、父親が田中哲司か・・・。

これは嫌だな。

そりゃ子どももグレるって。

いや、素はふたりとも、かなりいい人なようだけどね。

 

 
後はさやかの高校の担任役に、安田顕

HK 変態仮面でも、威圧的で不気味な教師役だったが、

今回もまた、威圧的で校則を守らないさやか達を徹底的に絞り上げる。

さやかをクズ呼ばわりし、慶応なんか無理だと吐き捨てる。

作中、かなり嫌な役で描かれていたものの、彼の言うことは正論であり、

逆に母親のああちゃんなどは、間違いなくモンスターペアレンツ。

これは原作のエッセイでも、坪田先生も書いていた。

はたから見れば、モンスターペアレンツかもしれないと。

安田氏自身も、担任を演じながら、

塾で一生懸命勉強して学校の授業中に眠る。

これで大学を目指すことが、はたして正しいことなのか?

そう思いながら、役作りをしたという。

 

自分もこの考えに共感する。

勤め先の社長の孫たち。

ガリ勉だけが行くことのできる有名進学塾へ行き、小学校で高校レベルの勉強をやるらしい。

上の子の方は見事、中高大一貫の、県内トップの私立中学へ進んだ。

塾に通っていた小学生の頃、当然学校の授業なんかやってられないわけで、

他のふつうの生徒を見下し、学校は適当に行ったり行かなかったり。

親も親で、「まあ行ってもしょうがないしね。」と咎めることもない。

こういうのを目の当たりにして、なんだかな~と首をかしげていた。

 

原作のエッセイ。

映画公開記念帯らしい。

 

こっちが通常版。

帯というかカバー外したら、その下から現れた。

 

映画を観終わったあと、すぐに本屋で原作のエッセイを購入。

内容をコンパクトにした文庫版ではなく、完全版のハードカバー。

半分くらいまで読み進めたが、なかなか面白い。

心理学や話法に定評のある坪田氏だが、文章力もなかなか。

淡々と時系列で話を進めず、途中に色々と挿し込んでくる。

ついつい先を読ませたくなるような書き方が巧い。

 

レジでご自由にお取り下さいみたいな感じで置かれていた栞。

 

まあこの冬受験するひと・・・は間に合わないか・・・。

来年度受験のひとは必見。

勉強法なんか、あまり参考にはならないと思うけれど、

逆境に屈せず、ひたむきに努力する、さやかの姿や、

それを応援する家族や仲間の姿に、なにかパワーをもらえるかもしれない。

 

受験なんてものは、けっきょく本人の努力次第。

だが、その努力するきっかけを与えてくれるひと、

持続させてくれるひとも、大切な要素だと教えてくれる。

本作はその可能性を信じて、支えてくれた周りのひとびとが、

さやか本人の努力と同じように描かれている。

ラストは崩壊寸前だった家族が修復の兆しを見せて、ちょっと感動する。

家族の不和で悩んでいるひとや、家庭環境が芳しくない人も必見。

 

「この帯は映画記念帯です」と書かれているが、

全体覆っていて、帯というよりカバーだ。

今思ったけれど、こうやって一部分だけ撮ると、なんかエロ本みたいだな。

 

しかし・・・自分も大学に進学すべきだったなあと、

観終わった後に、しみじみに感じた。

高校のとき、早い段階で進学を諦めて就職を決意した。

家庭の経済事情を理由にして英断のつもりだったが、

無理してでも、進学すべきだったなあと、この歳になって後悔する。

学校の偏差値が40程度の、公立じゃ県下一のバカ学校だったけどね。

そこで学年で下の上くらいの成績だった自分。

ビリギャルといい勝負じゃん・・・。

 

 

 



 



コメントを投稿