よろず戯言

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蜩ノ記

2014-11-01 00:21:18 | 映画

先日の休みに映画を観に行った。

役所広司 主演の時代劇、“蜩ノ記 ”だ。

原作は葉室麟 氏の同タイトルの小説。

この作品で直木賞を受賞している。

 

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つい先日観た、中井貴一主演の“柘榴坂の仇討”に次いで、公開された時代劇物。

大物俳優、役所広司が主演、人気女優の堀北真希が出演、

さらに人気ジャニーズタレントで、今現在NHK大河ドラマ、“軍師官兵衛”に主演している

岡田准一もキャスティングされているとあって、こちらの方が公開前から話題となっていた感がある。

 

柘榴坂の仇討は絶対観ようと決めていたが、

この蜩ノ記は、当初スルーするつもりでいた。

この時期、観たい映画が次々と公開されていて取捨選択を迫られた。

で、この蜩ノ記は、吉永小百合主演の映画、“ふしぎな岬の物語”に負けて、

スルーが決定したのだった。

 

だが、公開前にたまたま観たバラエティ番組で、

岡田准一と堀北真希がゲスト出演していて、急遽観に行くことに決定。

一転して、ふしぎな岬の物語がスルーと相成ったのであった・・・。

まんまとテレビ局の番宣に乗せられてしまった格好だ。

まあ、ふしぎな岬の物語も、公開が長く続けば、まだ観に行くチャンスはある。

 

04

 

 

江戸時代(中期?)、豊後国(現在の大分県)・羽根藩(うねはん)。

ある日、ささいなことで幼馴染の同僚と城内で刀傷事件を起こしてしまい、

免職されてしまった壇野庄三郎(岡田准一)。

城内での刀傷事件は喧嘩両成敗で両者切腹が通例ではあったが、

相手の水上信吾(青木崇高)が家老・中根兵右衛門(串田和美)の甥であったため、

兵右衛門のはからいで、庄三郎は切腹を免れた。

 

だが、切腹を免ずる代わりに、兵右衛門からある命を受ける。

藩のはずれにある小さな村で羽根藩の家譜を編纂している男を訪ね、

その編纂作業の手伝いをせよというもの。

だがそれは表向きの命。

 

家譜を編纂しているのは、幽閉中の元・郡奉行だった男。

その男は7年前、側室と不義密通し小姓を斬るという大罪を犯したものの、

藩の家譜編纂という重要な任務をひとり担っていたために、

即座の切腹ではなく、10年後の切腹を言い渡されたという。

その男の監視が、庄三郎に与えられた本当の命であった。

 

 

05

 

 

男の名は戸田秋谷(役所広司)。

現在は幽閉中の身でありながらも、藩のあらゆる書や資料をもとに家譜を編纂中。

7年前の事件がどう家譜に記されるのかを確認すること。

そして、3年後に迫っている切腹、秋谷は切腹を拒み、

あるいは藩の秘め事を知って一家で逃亡を計るかもしれない。

そのときは妻子もろとも斬り捨てよと兵右衛門から直々に命を受ける。

 

秋谷の元を訪れた庄三郎。

にこやかな笑顔と落ち着いた雰囲気のその男、

あと3年後に腹を切る者のたたずまいとは思えなかった。

そして彼を支える奥方の・織江(原田美枝子)と、娘の薫(堀北真希)。

二人は秋谷が犯した罪も、それによって受けた切腹の刑も知っていながら、

ただただ秋谷を信じて支え続けていた。

 

朝早くから畑仕事に精を出し、

近所の寺で農民の子どもらに学問を教え、

貧しい農民たちから、藩の厳しい年貢の取り立て、

豪商からの不当な借金取り立てなど、不満や相談にも親身になって耳を傾ける。

そして家譜編纂にも粛々と取り組む。

 

庄三郎は疑問を抱く。

この男が、側室と不義密通したうえで城中で殺傷沙汰を起こすような人物だろうか?

不義密通とは真のことだったのか?

余命あとわずかでありながら、あまりにも潔い居振舞い。

家譜編纂を手伝いながら、庄三郎は藩の重大な秘め事を突き止め、真実を知る。

秋谷自身も知らなかった真実――。

 
 


おもしろかった。

これまた割と淡々と物語が過ぎてゆく。

時代劇でありながらサスペンス要素の強い作品。

途中で色々と繋がって真実が判るものの、

だからといって話が急展開するとか、どんでん返しがあるわけでもなく、

期待するハッピーエンドは訪れない。

それを受け入れたうえでの、各登場人物の心情を強く押し出した作品だった。

 

03

 

 

 

役所広司が上手いのは言うに及ばず。

岡田准一,堀北真希も良かった。

だが、やっぱり一番良かったのは、秋谷の妻・織江を演じた、原田美枝子さんだった。

ラスト、夫のために死装束を縫い、短刀を準備し、髷を結う。

死装束のシーンで、ひとりむせび泣くその姿に、たまらなくなる。

 

それから、秋谷の息子、郁太郎役の子役・吉田晴登くん。

劇中で母や姉とは異なり、ひとり父親の犯した罪も切腹のことも知らず、

庄三郎が来てそれを知り、ひとり嘆き憤る。

だが、父親の立場を理解し、そして無実であることを信じ、

親友の農民の息子が拷問で殺され、理不尽なことを目の当たりにしながら、

成長していく姿を見事に演じて見せてくれる。

親友が殺されたとき、逆上して城に乗り込むシーンは子役ながら圧巻だった。 

 

劇中たびたび入る、季節の描写が美しい。

物語の象徴的に入るのが柚子の木。

植えて10年で実を結ぶという、その柚子の花が時間の経過を伝えてくれる。

そして最後には、「カナカナカナ・・・」というヒグラシの鳴き声。

タイトルにもある、セミの蜩(ひぐらし)だ。

“蜩ノ記”とは、10年後の切腹を言い渡された秋谷が、綴り始めた日記のタイトル。

余命が定まり、「その日暮し」の立場であることをかけているのと、

夏の終わり惜しんでいるかのように鳴く、ヒグラシそのものにも例えている。

 

立て続けに公開された、時代劇映画。

どっちが面白かったか、甲乙付け難いが、個人的には柘榴坂かな。

中井貴一のひたむきさと、やっぱり激変の時代の武士の在りようが面白かった。

まあ、いずれにしても、時代劇好きは両方観て損はない。

チャンバラ好きは、蜩ノ記は物足りないかもしれないな。

 

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書店でもらった蜩ノ記のキャンペーンはがき。

映画のテーマが愛・絆だもんで、カップルで鑑賞してその半券を貼って応募すれば、

豪華プレゼントが当たる!みたいなキャンペーン。

独りで鑑賞したから応募できねえ。

おひとりさま映画サイコー!

 

 

 

 

 

※羽根藩(うねはん):実在しない物語に登場する豊後国にあるとされる架空の藩。

 

 

 


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