カモミール

春から夏にかけ、庭に甘い香りを漂わせる、ハーブの代表格、

カモミール“Matricaria recutita”。

園芸店などでは、“カモマイル”と表記しているところもある。

和名はカミツレ（過密列）。

細かい繊細な葉をたくさん付けて、ふわふわに育った株に、小さな白い花をたくさん咲かせる。

花や葉茎には、リンゴに似た甘い香りがあり、見た目も香りも爽やかな植物だ。

　

ジャーマン・カモミール

　
古来より薬草として重宝され、ヨーロッパでは紀元前から栽培されていた。

日本には江戸後期にオランダから伝わり、やはり薬用として栽培されるようになった。

効能は腹痛，胃痛，筋肉痛，喉の炎症から、生理痛に生理不順、

外用では、傷の炎症や かゆみ止め、皮膚の保護など多岐にわたり、

まさに万能薬で、古来より利用されてきたのが解る。

　
現在は上記のような効能がすべて謳われることは少なく、

主に謳われているのは、生理痛や冷え性などに効果的とされ、

とくに女性に対して、その効果が有効だとされている。

ヨーロッパでは“お母さんのハーブ”，“女性のハーブ”と称される。

また香りによるリラックス効果なども挙げられ、

入浴剤や石鹸，アロマオイル，のど飴などにも抽出物が利用される。

　

ローマン・カモミール。

山口県宇部市 宇部空港にて。

　

園芸店などで出回っているカモミールの苗は主に二種類あり、

最も普及しているのが、ジャーマン・カモミール。

通常カモミールというと、この種を指す。

香りがよく味にクセが少ないため、ハーブティーにも利用される。

　

次に普及しているのが、ローマン・カモミール“Anthemis nobilis”。

見た目、ジャーマン・カモミールとそっくりだが、

花の中心の種を作る部分が平たくて株が大きいのがこの種。

対してジャーマン・カモミールは、中心が丸みを帯びて球体に近い。

　

ジャーマン・カモミール。

　

またローマン・カモミールは花，葉茎全体に香りを持つのに対し、ジャーマンカモミールは花だけが香る。

ローマン・カモミールもまた香り成分を抽出するため様々な用途に利用されるが、

味には苦みが含まれるため、ハーブティーには不向きだとか。

　
日本では真夏の暑さに耐えられず、ジャーマン・カモミールは梅雨前後で、

蒸れたりして株の地上部が枯れてしまうことが多い。

花が終わったら、梅雨前くらいに刈り込んでおけば枯れてしまうのを防げる。

追肥しておけば、三週間ほどでまた花を咲かせてくれる。

　

ジャーマン・カモミール。

花びらが落ちた後、種ができるしばらくの間、中心が残る。

その間の黄色のまん丸もかわいらしい。

　

苗が通年販売されるが、種も販売される。

種は秋蒔きと春蒔きがあり、秋に蒔いておけば、早ければ2月には芽が出る。

ジャーマン・カモミールは一年草だが、地上部だけが枯れて根は残り、

毎年、春になると、新しい株が伸びてくる。

こぼれ種でもよく増えるので、毎年違った場所から新しい株が現れ、年々増えていく。

ローマン・カモミールは、多年草らしいが、やはり花後に刈り込みなどしてあげないと、

翌年また きれいな花姿を維持することは難しいだろう。

　

園芸店で苗を購入する際、上記の二種を平気で間違えて販売していることもあるので注意が必要。

店でなく市場でもなく、生産者の段階で間違っているから、どうしようもない。

また上記二種以外にも、グランドカバーとして利用し、

踏んで、その時に発する香りを楽しむだけの、花の咲かないカモミールもあるらしい。

イングリッシュガーデンなんかに利用されるそうだが、自分はこの種を見たことがない。

　

ローマン・カモミール。

山口県宇部空港にて。

　

カモミールには虫よけの効果もあるとされ、

蚊などを避けてくれるというが、これが植えられている場所でも、

平気でヤブ蚊飛びまくっていたので、本当に効果あるのか謎。

抽出されたオイルが虫よけスプレーの効果があるとかなんとか書いているサイトもあった。

　
虫よけとはちょっと異なるが、農作物のコンパニオンプランツ※として利用されることもある。

農作物の隣に、このカモミールを植えて、害虫を寄せ付けなくしたり、

また逆に、避雷針のように害虫を引き寄せ、一手に担うという役割もこなす。

カモミールはアブラムシが付きやすいため、キャベツやブロッコリーなど、

アブラムシ被害に遭いやすい、アブラナ科の農作物で、この性質が利用されるのだとか。

以前観たアニメ映画、“おおかみこどもの雨と雪”にも、そんな描写があった。

 

カモミールティーは専門店などに行かなくとも、スーパーなどでも販売している。

ハーブティーのなかでは、最も手に入りやすい。

先に書いたように、様々な薬効とともに、やはりリラックス効果などもあり、

ローズヒップやハイビスカスなどと共に、女性に人気のハーブティーだ。

独特な香りにほんのちょっとの酸味。

香りは確かにいいけれど、味気なくて自分は、あまり好きになれないかな。

　

いろんなカモミールティー。

　

無印にも置いてある。

カモミールだけだと味気ないので、オレンジと。

リプトンだったか日東だったか、バニラと一緒なのがあったが、あれはまあまあイケた。

　
アロマオイルも、雑貨店やファンシーショップなどで手に入る。

カモミールは人気の香りのようで、大抵ラインナップされている。

100円ショップにもあった。

ほのかに甘い、清涼感のある香りがいい。

個人的にリラックス効果はお茶で飲むよりも、香りで楽しんだ方があると思う。

　

アロマオイル。

　

もう20年も使い続けて年季の入っているアロマポット。

テラコッタ製で天使？をかたどったもの。

腹部の窓は、きれいなハートだったが、上部が欠けてよく判らない形に。

これベルメゾン（当時は千趣会だったか？）のカタログで見て即購入した。

当時ハマってプレイしていた、64のゼルダの伝説 時のオカリナに出てくる、

ゴロン族の町？の中央に鎮座していた、巨大なオブジェ（燭台？）にそっくりだったから・・・。

 

春から初夏の見た目も香りも爽やかなハーブ、カモミール。

苗はまだ手に入るし、東北や北海道ではこれからが旬になる。

庭の一角に、畑の隅に、ちょこっと植えてみるといいかも。

　

カモミールといえば、このひと。

ポケットモンスター・ブラック／ホワイトに登場した、

ライモンシティのジムリーダー、カミツレさん。

スーパーモデルらしく、他のキャラと明らかに頭身が異なる。

続編である、ブラック２／ホワイト２にも再登場したようだが、

なんかモコモコしたヘンテコな格好になっていたような。

　

　

 

※コンパニオンプランツ

　複数の作物を近くに植えて、お互い生育をよくする共存・共栄する効果のある作物のこと。

　病害虫を予防したり、味をよくしたり、収穫量を増やしたりと効果は様々。

　野菜とハーブの組み合わせとなることが多い。

　カモミールだと、キャベツやタマネギが挙げられる。

　有名どことだと、トマトとバジル，マリーゴールドとジャガイモなど。

　そういえばジイちゃん家のジャガイモ畑、マリーゴールドが畑の縁にぐるっと植えられていたな。