先日の休みに映画を観てきた。
妻夫木聡主演のコメディ、“奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール”だ。
監督はモテキの大根仁氏、原作は渋谷直角氏の同タイトルの漫画。
奥田民生になりたいボーイに、妻夫木聡を、
狂わせガールに、モデルの水原希子をキャスティングした話題作。
キャッチコピーは、“最狂の恋が僕にやってきたッ!!”。
初めて劇場でチラシを見たとき、何だコレ?って思った。
そのヘンテコで長いタイトルだ。
今どき奥田民生て・・・。
失礼だけど、それが最初の印象。
奥田民生といえば、’80年代後半のバンド全盛期に、
ユニコーンのボーカルとしてデビューし、解散後ソロで活動。
精力的にプロデュースや、他のアーティストやバンドとのセッションなど活動し、
今なお人気を誇るアーティストではある。
自分が所有する奥田民生のCD。
なぜかマキシシングルのマシマロ、1枚のみ。
Puffyはいっぱい持ってるんだけどね。
劇中でもこのジャケットと同じ写真のポスターが主人公の部屋に貼られていたし、
曲も挿入歌としてかかったので思わず笑った。
しかしだ、50代のおっさんが矢沢永吉に心酔するように、
40代のおっさんが、氷室京介や布袋寅泰らに心酔するように、
奥田民生も、おそらく4~50代のおっさんがファン層じゃないかと思う。
この映画の主人公、どう見てもそんな年代じゃあない。
いや、むしろ時代錯誤的な感覚の主人公なのに、今風の女のコに惚れてしまって・・・。
なるほど・・・そんなコメディなのかもしれん。
それは、面白いかもしれん!
ほどなくして公開されだした映画の予告編。
これは、すごい面白そうじゃないか!
また情けない妻夫木聡が見られる!
それに、この女のコ(この時点で水原希子のことを知らず)もかわいい!
そんなわけで、公開されてすぐに観に行った。
奥田民生を崇拝し、彼の生き方に憧れている青年、コーロキ(妻夫木聡)。
彼は出版社で編集者として働いており、
家電雑誌の編集部から、おしゃれなライフスタイル誌の編集部へ異動となる。
同僚編集者たちの、流行を先取った会話について行けず不安になるが、
奥田民生に理解を示してくれた編集長(松尾スズキ)に感激し、
ライフスタイル誌でもがんばれる!と、新たな場所での仕事をスタートさせる。
アパレルブランド、“ゴフィン&キング”とのタイアップページを引き継ぐことになり、
それを担当していた先輩編集者、吉住(新井浩文)から、
そのゴフィン&キングのプレス、天海あかり(水原希子)を紹介される。
コーロキは、キュートなあかりにひと目惚れ!
すっかり浮かれてしまって、その打ち合わせの席で、
あかりの上司である、江藤社長(天海祐希)が要求してきた無理難題をあっさり引き受けてしまう。
ところが、これがきっかけとなり、
曲者のライターのせいで、行き違いが生じてしまい、
コーロキのライフスタイル編集部と、ゴフィン&キングが、
そのライターの手によって、まとめサイトで非難され炎上していた。
あかりから連絡が入って、それを知るコーロキ。
「どうしてくれるんですか!?」
あかりはひどく憤慨していた。
そのライターの記事掲載を断ってしまった自分のせいだと焦る。
オロオロするコーロキに対し、同僚や編集長は、よくあることだと冷静だった。
編集長とすぐにゴフィン&キングへ菓子折を持ってお詫びに行くも、
あっけらかんとして笑い飛ばす、江藤社長。
編集長と談笑しながら、例のライターは旧知の仲だが、
以前からそういう困ったひとなんだと、何も動じていない様子。
コーロキにも、気にしなくていいと逆に励ましてくれる。
事なきを得て、ひと安心するコーロキ。
同席していた、あかりの顔をそっと見る。
あかりの方もこわばった表情が解けて安心したような顔に。
そして、にっこりとコーロキに微笑みかけてくれたのだった!
そしてその後、あかりと二人で食事に。
その席で、彼氏からの着信を拒否するあかり。
「とらないの?」と問うコーロキに、
あかりは怯えた表情で、彼氏のDVを吐露する。
彼女が半ベソかきながら、ひどく束縛する彼氏の話を切々と語る。
あかりに同情すると同時に、その彼氏に対し怒りが込み上げ、
コーロキはあかりの手を取って、勢い余って告白してしまうが、
そのまますんなりとホテルへ・・・!
あかりと付き合うことになり、有頂天のコーロキ。
海外出張から帰ってきた吉住に、引継いでいた記事の状況報告と同時に、
あかりと交際を始めたことを、ついつい喋ってしまう。
それを聞いたとたん、顔色を変えて外へ出て行く吉住。
ベランダで誰かと電話で話しているが、激昂したり号泣したり・・・。
そのまま長期休暇へ――。
吉住こそが、あかりのDV彼氏だったのだ・・・。
吉住の件で、気まずい思いはしたものの、
あかりとのバラ色の交際がスタートしたコーロキ。
だが、気まぐれなあかりに翻弄されてばかり。
意見が違えばすぐに機嫌を損ねてしまうし、謝ればすぐに甘えてすり寄ってくる。
あかりにメロメロなコーロキは、いつも彼女の機嫌をうかがい、
いつも彼女のことが気になり、返事がないといても立っても居られなくなり・・・。
奥田民生なら、こんなとき、こんなこと言わないだろうなあ・・・。
力まない,カッコつけないカッコイイ男、奥田民生になりたいコーロキ。
あかりと付き合いはじめて、奥田民生から乖離していることに気付きつつも、
それでも大好きなあかりを手放したくないから、
頭をかかえて、地べたにへたり、傷だらけになりながらも、あかりを追いかけてゆく。
しかし、そのがむしゃらな恋は修羅場の結末を迎えるのだった――。
面白かった。
けれど、笑えるほどのコメディではなかったかも。
ラストがちょっとバイオレンスなのがあれだったけど、意外性はあった。
しかしなんだ・・・付き合い始めての最初らへんのコーロキの取り繕い方。
解る。
男なら多分に解るはず。
女性でも、「彼氏(旦那)も付き合いはじめた当初あんなだったなあ・・・」
なんてしみじみ思えるかもしれない。
傍目からみるとトンでもなく情けないのだけど、あれが男なんだなあ。
劇中では度を超えているようにも見えるけれど、いや、ああなるわ・・と納得する。
構成がすごく巧い。
脚本が巧いのはもちろん、展開というか見せ方というか、
モテキもそうだったが、これには非の打ちどころがない。
緩急交えて、うまく展開していってダレることがない。
コーロキの心理描写に合わせ、奥田民生の楽曲が挿入歌として多数流れるのだが、
そのタイミングや演出も絶妙で、たとえ奥田民生のファンでなくても問題なく楽しめる。
後日談もちょうどいい範囲で詳細は語らず、
少し関係性や経緯に、もやがかかった状態で終わらせるのも巧いところ。
妻夫木聡はやっぱり巧い。
こういった情けない役やらせたら、本当に巧い。
頭抱えてベッドで暴れるシーンや、路上でへたり込むシーンなんか、
本人は不本意だろうが、彼の真骨頂かもしれない。
ウォーターボーイズのときから、ホント嫌味なくて好きな俳優さん。
あかり役の水原希子。
当初、この方のことを知らなかった。
今、こういう顔立ちのハーフタレントさんやモデルさんが多数居るから、
そのうちのひとりくらいの認識しかなかった。
この夏放映されていた、ビールのCM見て、きれいな人だなあ・・・と思い、
それで初めて、水原希子という名前を知ったくらい。
でも公開直前まで、滝沢カレンってひとと見分けが付かなかった・・・。
媚びるしぐさ、怒るしぐさ、どれもこれもキュートで上手かった。
ただ、自分は若い頃ならともかく、この歳になると、さすがにこんな女にゃすぐに愛想尽かすな。
吉住役の新井浩文も、こういうSっ気があって怖いキャラは、イメージぴったりでいい。
ラスト、メガネのフレームはなんで繋がったままなん?って疑問を抱いたのは自分だけじゃないはず。
中盤から登場する、人気ライター役の安藤サクラ。
一昨年だったかな?日本アカデミーの最優秀女優賞を獲ったときに初めて知った女優さん。
あれからも出演している作品を観る機会がなくって、今回初めてその演技を観た。
キャラがキャラだっただけに、なんとも言いようがないけれど、巧かったのは確か。
もしかしたら、こういったヘンキャラが似合うひとなのかもしれない。
そんな安藤サクラちゃんに雰囲気が似てると思っている、自分の好きな女優さん、江口のりこ。
彼女もまた、コーロキと同じ編集部の副編集長として出演していて、まさかの共演。
ただし、同一シーンでの直接共演がなかったのが残念。
セックスシーンがやたら多く、その連続場面もある。
下着のままだったり、シーツにくるまれていたりと、裸が露わになっているわけでもないし、
いわゆる“本番”シーンの描写はなく、首筋や耳に舌を這わせ、それを絡ませてのディープキスだったり、
お互いの体を激しくまさぐって、喘いでいる程度のもの。
なので、R指定もないし、そんな過激にエロくもない。
まあ自分くらいになると、逆にこっちの方がエロく感じてしまうのだがね。
子どもに観せるときは慎重に、まあ中学生くらいじゃないと理解できんだろう。
カップルで観るぶんにゃ問題ないと思う。
観終わった後、ラブホ直行になるかもしれない。
奥田民生の予備知識なくても無問題。
モテキが面白いと思えたひとならば、これも無難に楽しめるはず。
公開されてまだ半月ほどしか経っていないが、上映回数がだいぶ減っているようだ。
気になるひとは、早めに劇場へ観に行こう。
観終わったあと、無性に立ち食いそばが食べたくなった。
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