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ウィーンが誇る磁器工房『アウガルテン』見学ツアー 《 ウィーン in オーストリア 》

2004年10月25日 | オーストリアのレストラン・ホテル

ウィーン観光1日目の本日(2004/10/25)は『AUGARTEN(アウガルテン)ウィーン磁器工房』の見学に行きました。

マイセン、ウェッジウッド、ロイヤル・コペンハーゲン、ヘレンド、ジノリあたりまでは名前を聞いたり商品を見たことがありますが、「アウガルテン」のことは全く知りませんでした。なぜここに行くことになったのか。それは、TH(夫)のお母さんから、「ウィーンに行くなら、アウガルテンの’オールドウィンナーローズの紅茶用カップ&ソーサー’を1客買って来てもらってもい~い?」というご依頼を受けたからです。お母さんは、色々な有名陶磁器メーカーのカップでお茶を出してくれる札幌の喫茶店でアウガルテンの「オールドウィンナーローズの紅茶用カップ&ソーサー」で紅茶を出された時に、飲みやすい形だし、バラの絵柄も可愛いい所が気に入ったのだそうです。その喫茶店のご主人によると、「アウガルテンのカップは飲み口の部分が薄くて飲みやすく、茶渋もつきにくい。」のだとか。

ウィーンのショップ(トップ写真は本店の前にお店のロゴが映写されているものです)で買っても良かったのですが、ウィーンの北のアウガルテン宮殿にある工房は個人で見学可能とのことだったので、陶磁器の製造工程も見てみたいと思い行ってみることにしました。

アウガルテンはヨーロッパで二番目に古い磁器工房で、今でも手作り・手書きによる製品の製作と販売をしています。その歴史は古く、1718年にウィーン磁器工房が誕生、1744年にはマリア・テレジアにより皇室直属の磁器窯に命じられ、ハプスブルグ家の「盾型紋章」を授かりました(アウガルテンのロゴはこの紋章で、全製品の裏に今も焼き付けられています)。(以上、アウガルテンのHPよりまとめました。)

こうして見ると、歴史も古く由緒ある工房なのですね。

トラムの最寄駅で降りてしばし歩くと、アウガルテンの森の奥にアウガルテン宮殿がひっそりとたたずんでいました。

ガイド付の見学ツアーは月~金(祝祭日を除く。詳細はコチラ)の朝9:30スタート、1人4EURO(≒552円、1EURO≒138円)です。

余裕を持って9:15にアウガルテンの宮殿に着いたら、ガイドツアーのお客さんは誰もいませんでした。9:30ギリギリにオーストリア人の親子2人組(お母さんと小学生くらいの男の子)が現れ、合計4人でのツアーが始まりました。

私達に説明をしてくれたガイドさんは、黒いスーツに真っ白なシャツの襟が印象的な、清潔感あふれる好青年でした。
上記の親子のためにドイツ語で、私達のために英語で説明をしてくれました。たった4人の私達のために、こんなに懇切丁寧な説明で労力を使ってくれてとても有り難かったです。

見学ツアーは、工房の入口で、アウガルテンの歴史やどういう素材を使って製法しているのかという説明から始まりました。
最初は英語の説明を頑張って聞き取ろうと集中していたので、歴史の説明辺りまではなんとか聞き取れました。しかし、製法の説明になると、専門用語も増えてきて、だんだんガイドさんの言葉が耳を素通りしていくようになりました。素材の名前「kaolin(カオリン=陶土)」が何度も出てくるので、「そういえばキムタクの昔の彼女はカオリンだったなぁ。今頃どうしてるんだろう。」と、全く別のことを考えているうちに、工房入口での説明は終わってしまいました。

次は工房見学です。

左下の写真の窓側で説明をしている青年がガイドさん、手前で説明を聞いているのがオーストリア人親子です。ガイドさんの隣に見える白い円盤状の箱は、石膏型です。

 

上記の石膏型を開いたものは左下の写真の右側のように、真ん中にパーツ型の穴があいています。

例えば下の写真の騎馬像ですが、騎馬像の前に置いてある70種類ものパーツを、まずパーツごとに石膏型で作り、それらを順に接合し最終的に騎馬像の形にするのだそうです。コーヒーカップのようなシンプルな形のものでも、カップと持ち手の部分をまず別々に焼いて、それらを接合する作業は同じです。

 

上記のように接合し組み立てた後、窯で焼かれます。まず910℃で1時間の素焼き。素焼きしただけの表面は気泡のあいたデコボコ状態(写真右)ですが、そこに釉薬を塗り1400℃の窯で焼くと、表面はスベスベのツルツル(写真左)になります。この行程で、写真でも分かるように、製品は12%縮んでしまうそうです。

これらは、素焼き(もしくは素焼き前?)のプレートやポットです。
熱心に説明を聞く親子。男の子は将来工房入りするのでしょうか?



この辺りは窯や製品を乾燥させている所だと思います。



青年ガイドさんによる工房での説明は1時間程で終了、青年ガイドさんは次の日本人ツアー客のために行かなくてはならないため、ここでお別れです。有難う、好青年。

次は絵付けの場所に移動しました。今度は絵付師の女性が説明をしてくれました。
絵付師の方々の部屋の前には、アウガルテンのこれまでの代表的な製品が展示してありました。

  

この部屋からは紅葉し始めたアウガルテンの森の景色が見渡せます。絵付けで目が疲れたら窓の外を見てリフレッシュできそうな理想的な空間です。

アウガルテンは、このような職人さん達が1つづつ絵付けをしていくハンドメイドの製品を製造しています。
職人さんは、絵柄のパターンファイルや出来上がりのサンプルを見ながら、一つづつ絵を描いていきます。







絵付師さんは全部で16名ということでしたが、この人数で全製品の絵付けをこなすのはすごいと思いました。それぞれ自分の好きな図柄があるそうで、私達に説明をしてくれた女性は、アウガルテンの代表的な製品’マリア・テレジア’の図柄を描くのがすきなのだそうです。

絵付け作業の説明は15分程で終了しました。絵付け前の工房見学とあわせると全部で1時間15分の見学ツアーでしたが、実際にどんな風に製品が作られていくのか見ることが出来てとても楽しかったです。

この後、私達は製品が展示してあるギャラリーへ行きました。今回は「TH(夫)のお母さんに頼まれた’オールドウィンナーローズのカップ&ソーサー’その他を買う。」という大義名分があったので、堂々とギャラリーに入ることが出来ました。いつもの買う気もないのに中がどんなのかちょっと覗いてみるか、というシチュエーションとは違い、今回は心に余裕がありました。ブランド物を買う時の気分ってこういう感じなのでしょうか。

左の写真のテーブルセッティングをしてある図柄がマリア・テレジア、右の図柄は、私が一番好きだったものです。

 

こちらの手前に並んでいる4客が、「オールドウィンナーローズ」「ウィンナーローズ」シリーズのカップ&ソーサーです。
一番左から「ウィンナーローズの紅茶用」「オールドウィンナーローズの紅茶用」「オールドウィンナーローズのコーヒー用」「ウィンナーローズのコーヒー用」です。

「ウィンナーローズ」はぽってり大きめのバラの図柄で緑の縁、「オールドウィンナーローズ」はやや小さめでくっきりしたバラの図柄で赤の縁が目印です。
同じ図柄でも持ち手の部分が微妙に違っていたり、色々なパターン(’モーツアルトシェイプ’や’シューベルトシェイプ’といったオーストリアらしい名前が付いています)があるので迷います。

お母さんに頼まれていたのは「オールドウィンナーローズの紅茶用を1つ、後はおまかせで1つか2つ」だったので、迷いながらも選びました。色々な種類の美しい陶磁器や白磁器(ポーセリンペインティング用でしょうか?)が陳列してある中から、商品を選ぶのはワクワクしたし、貴重な体験でした。

迷って選び抜いた末に、今回買って帰った製品はこちらです。

「ウィンナーローズ」と「オールドウィンナーローズ」シリーズは日本のデパートやネットで見かけるのですが、それ以外のシリーズはほとんど見かけません。これぞ、ここで買う値打ちがあるというもの。

商品を選んで別送の手続を終えると、「コーヒーを召し上がって下さい。」と声をかけられました。やった~♪

実は、ギャラリーに入る前に、机にアウガルテンの陶磁器がセッティングしてあり、ザッハートルテとコーヒーが美しく載っていたのです。「あれ、まさか私達のじゃないよね。」と半ば期待しつつ横目で見て通り過ぎたのですが、やはり私達のものではありませんでした。
私達がギャラリーで商品を選んでいる時に、国籍不明のアジア人女性(後ほど日本人と判明)がお店に駆け込んできて、ドイツ語で私達にむかって何かをまくしたて始めました。「え、何?」と思わず日本語で答えたら、「あ、日本人ですか。」と日本語で言われました。どうやらこの女性は、後から入って来た関西弁の男性1人(中小企業の社長さんタイプ)とそのお付きっぽい男性1人(社長秘書タイプ)の日本人ツアコンで、よほど焦っていたのか、私達をアウガルテンの店員さんと間違えて話しかけてきたようです。社長が「いやぁ~、私は全然分からないんだけど、妻にマリア・テレジアのこのシリーズを買ってくるようにとリストを渡されてねぇ。」と言っている横で、ツアコン女性がお店の人(今度は本物)に交渉し、稲妻のような速さでリスト通りの買物を終え、私達のものかもと期待していたザッハートルテとコーヒーを男性2人が召し上がって帰って行かれました

私達の机にはザッハートルテは置かれていませんでしたが、濃い味のとても美味しいコーヒーを頂きました。しかもコーヒーカップは、私が一番好きな図柄(持ち手の付け根の部分が二股になった珍しい形)で、クリーム入れはマリア・テレジア、紙ナフキンはウィンナーローズという素敵なセッティングで、なんとも優雅なカフェタイムを過ごさせてもらいました。幸せなひとときでした。

充実した内容の工房見学ツアーといい、日本では買うことのできない商品が揃っているし、最後に優雅なカフェタイムも過ごせたし、大満足だったアウガルテンの工房訪問でした。陶磁器に関心のある方でウィーン観光で午前中の空き時間があれば、メインの観光場所からは少し離れているのですが、是非おすすめしたい場所です。

さて、せっかく足をのばしてアウガルテンまで来られたなら、アウガルテンとセットで見て頂きたい場所が工房のすぐ近くにあります(byTH(夫))。
ナチスドイツのウィーン要塞です。

我が家に、鹿島出版会1986年発行「ナチスドイツのウィーン要塞」というなかなか渋い冊子があります。この雑誌の表紙を飾っているのがこの場所です。
この冊子によると、「ウィーンにはフラックトゥルムと呼ばれるナチスドイツが第二次大戦中に建設した6基の要塞がある。6基の要塞はレーダー塔と砲撃塔の2種類に分けられ、それぞれ2基づつの組み合せで、ウィーンの市の中心部を囲む環状道路(リンクシュトラーセ)を囲む正三角形の頂点の上に配置されている。」のだとか。アウガルテンにあるのは、このうちの「砲撃塔」要塞で、内部には「対毒ガスフィルター、エア・コンディショナー、発電機、医療施設、シャワーつきの衛生設備」が備えられ避難民を収容できるシェルターになっていたのだそうです。

紅葉した木々のあるのどかな風景の中に不釣合いな、一種異様な雰囲気をかもし出していました。ウィーン市民は壊したかったのですが、あまりに頑丈で費用がかかるのと周囲の建物にも影響が及ぶため、図らずも残存しているようです。

同じくこの冊子によると、ナチスドイツの要塞で一般に有名なのは、「ドイツのフランス・ベルギー・オランダ国境に建設された西部要塞」、占領地の大西洋沿岸に建設された「大西洋要塞」の2つです。これらは第二次大戦中に最前線の役割を果したと同時に、その洗練されたデザインによっても広く知られていますが、これらの要塞と比較すると、ウィーンの要塞は全くと言っていいほど一般には知られていないのだそうです。

有名どころの陶磁器メーカーと比べると、まだあまり日本で知られていない「アウガルテン」と、全くと言っていいほど一般に知られていない「アウガルテンの砲撃用要塞」、マイナーながらも味のある観光名所だと思いました。

最後まで長い文章におつきあい頂き有難うございました。
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11 コメント

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初耳! (ヤガモコ)
2006-10-14 22:43:34
こんばんわ~☆

ウィーンは10年前に行ったっきり!懐かしい!

私も洋食器好きで色々集めていますが、「アウガルテン」て初めて聞きました!

でもレポ見てたらすっごい美しい柄でびっくり!

日本でもデパートとかに売ってるんのかしら??

茶渋がつかないなんて優れもの!!

今度探してみまぁす☆
Unknown (マコ大好き)
2006-10-16 10:43:47
20代前半の頃、紅茶用カップにこった時期があってその時アウガルテンの工房に行きたいって思っていました。結局行けなかったので今回すごくウキウキで顔を近づけてじっくり見させていただきましたぁ

絵付けのところでタイルみたいなのにピンクのバラが描かれていますが同じ絵柄の絵皿をウィーンで昔買いました。すごい偶然で嬉しかったです。

>ヤガモコさん (takapyona)
2006-10-16 21:38:30
こんばんわ☆

ヤガモコさんは洋食器がお好きなんですか~。

一番お好きな物は、どんなものですか?



私も工房に行くまで「アウガルテン」を見たこともなく、洋食器にも詳しくなかったのですが、工房で色んな種類のアウガルテンを見て、

少し興味を持つようになりました。



帰国後に(確か)日本橋三越の洋食器コーナーの小さな一角で、「ウィンナーローズ(ピンクの薔薇の緑の縁)」と「マリア・テレジア(緑の葉と薔薇)」の2種類の図柄のカップ&ソーサーやお皿が売られているのを見ました。もう少し種類が増えるといいのですけど。



他の洋食器と比べると、知名度や派手さに欠けそうですが、可憐で愛らしい絵柄で、持つとじわじわ愛着がわいてきそうな味のある洋食器だと思いました。
>マコ大好きさん (takapyona)
2006-10-16 21:49:24
こんばんわ。今日札幌から帰ってきました~。

いかおかきが無かったので、帆立おかきを買いましたよ~。



まあっ、20代前半の頃からアウガルテンをご存知だったのですか。

たまたま写真に写っていたあのピンクの薔薇の絵柄の絵皿をお持ちだなんて、今回もすごい偶然でビックリです。
Unknown (マコ大好き)
2006-10-17 12:03:05
お帰りなさい!

札幌に行かれてたんですね。

帆立おかきはじめてです。どうだったですかぁ?

私は10月に行ったことないのですが紅葉ってどうですか?



そうなんです。偶然でびっくりで思わずお皿探しました。まだ見つかっていません・・・

今は部屋が和風になってしまったのでどこかにあるはずなんですが・・・

私の若い頃のお気に入りはヘレンドのウイーンの薔薇でした。セットであるのですが・・・

久しぶりにお気に入りのカップでのんびり紅茶をいただいてみます♪
>マコ大好きさん (takapyona)
2006-10-17 12:59:21
他にも生菓子をたくさん買ってきたので、帆立おかきは先のお楽しみで~す。



札幌も今年は気温が高かったみたいで、木々の葉も少し色づき始めたものの、本格的な紅葉にはちょっと早かったようです。思ったほど寒くなくて、気持ちよかったですよ。



マコ大好きさんは、ヘレンドの「ウィーンの薔薇」がお好きだったんですか。アウガルテンの「ウィーンナーローズ」シリーズって、ヘレンドの「ウィーンの薔薇」の色使いと似てるなぁ、と思いました。
素敵です♪ (myu-1012)
2006-10-17 19:09:23
お写真が綺麗で、私までもが旅行にいった

気分になりました♪

UPを楽しみにしています♪
>myu-1012さん (takapyona)
2006-10-17 23:10:55
はじめまして。

大変嬉しいコメントを残して頂いて有難うございました

そんな風に思って頂けると、とても励みになります☆



myu-1012さんのブログで紹介されている洋食器コレクションやテーブルセッティング、素晴しいですね。見ているだけでエレガントな気分になりました。

光栄です♪ (myu-1012)
2006-10-18 00:25:53
とても素敵な方から、お褒め頂きとても光栄です。

”好み”が似てる♪などと、勝手に思い込んでしまったりして・・(失礼)。

これからもファンの一人でいさせてくださいね♪

綺麗なお写真を楽しみにしています☆'*・,'★

>myu-1012さん (takapyona)
2006-10-18 10:59:29
私のような庶民派人間に対して、

myu-1012さんのような素敵なセンスをお持ちの方から’好みが似ている’だなんて言って頂いて、こちらこそ光栄です。

私もmyu-1012さんのブログで、これからはエレガントさを勉強させて頂きたいと思います☆

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