僕は偉そうで謙虚さの欠片もなく、見栄っ張りでカッコつけで、でもケチで短気かつナルシストで自意識過剰で自信家でした。でしたって事は過去の事で、19くらいから27くらいまでこんな感じでしたかね。
何が何でも京都から離れたくて、大阪のデザイン専門学校に進学し、思いっきりデビューした僕はとにかく目立った。
友達の美容師に最初が肝心や髪染めて行け!と言われて、そのアドバイス忠実に入学式へ金髪にサングラスにサイドゴアブーツに英国製のスイングトップを身に纏い出かけた。
いやー目立った。その日に先生全てに名前を覚えられた。
そして学校中の不良(音楽的に)が周りに集まって来た。
スキンズ、ロカビリーにMODS、パンクスにハードコア、サイコビリーと。
すごーく内向的かつ暗い中学生活と高校生活を送っていた僕がいきなり専門学校の目立つチームに所属してしまったのだ。
これで爆発した。
とにかく今までの抑圧されていた自我が暴発したのだ。
入学から数週間で一人暮らしの女の子の家に招待される。
目立つ自分とは裏腹に全然女性経験も浅く、純情ボーイだった僕は何も考えずに家に行った。
そのコは僕に夕食を作ってくれ、お酒を一緒に飲んだ。
「そろそろ終電だし帰らなきゃ」と僕が帰ろうとすると「泊まっていったらいいよ」とそのコが言う。
え?どう言うことですか?と頭の中を?が過ぎったのですが、イケてる風を演じなくてはならないので「そうするわ」と特に美味くもないビールを飲み干した。
「もう寝ようか?シャワー浴びてきたら?」とそのコが言う…もうパニックであるが、俺は演じる「お前が先に入れよ」正しいかどうかは分からない。
何となくそういう方が遊んでそうかな?と思ったのだ。
そして、そのコがシャワーを浴びてタオル一枚で出てきた。
俺はシャワー借りるわって浴室に向かった。
あーこれはそういう事になるんですよね、でも俺は彼氏でもないぞ、というか交際もしてないし、好きとも言われていないし言ってないぞ、これは俗に言う「身体の関係というやつか!」とかもう物凄いスピードで頭の中を妄想が駆け巡る。
シャワーを浴びて出てきたら部屋の電気が消えていて、彼女はベッドに入っていた。
彼女は「早く来たら?」と俺をベッドに招いた。
そこで俺は自身を付けてしまった。
俺はモテている。
いや確実にイケテるんだ。
そうなった俺は止まらない。
とことん口説いて色んな女の子と付き合った。
あれ?これ何について書こうと思ったんだっけ(笑)そうそう、そんな黄金時代を大阪で過ごして京都に帰ってきてビックリした。
大阪で働いている時は「俺が!俺が!」でやっていかないと取り残される感じでもあった。
京都に帰ると「いえ、俺なんか」と謙虚な奴が伸びていった。
そこのギャップがめちゃくちゃ驚いた。
俺様がナンバーワン!
「いえいえ俺なんか?」ほな下がって下さい、道譲って下さい、消えて下さい。
こんな調子だったと思う。
気に入らない事があると、オラオラっと蹴飛ばしたりして睨みつけていた。
当時の後輩からめちゃくちゃ怖かったと言われたけど、別に喧嘩の武勇伝があるわけではなく、やたらキレまくっていただけだ。
気に食わない奴は目の前から消す。
そんな気持ちだった。
そんな俺も就職して「謙虚さを学ぶ」と思いきや、勤めた広告代理店では「売上あげた奴が偉い、数字取るためなら何でもしろ!※極端だけどそんな空気だった」
そんな社会人生活を終えて、結婚して離婚して、歌い出す。
全国で色んな方の世話になる事でようやく、人の有り難みとか感謝とか、謙虚さを少し学ぶ。
つまり謙虚さを知ったのは47歳くらいで、3年前だし、まだまだ謙虚のビギナーだ。
謙虚のビギナーだからよく失敗もする。
謙虚な良い人のフリした腹黒い奴なら、多少悪くても優しい奴の方が、偽りが無くて好きだなと思っている。
が、世の中はそうはいかない。
良い人のフリをとことん上手く立ち回る奴が得をするように出来ている。
政治家が良い例だ。
公約では庶民の為になる事を語るが、当選してしまえば「公約?何の事ですか?」くらいの調子だ。
世の中の人は良い人っぽい人にとにかく騙されやすい。
チョロいなと思われているだろう。
良い人のフリしてる奴が溢れている。
それで良いと思っている。
それで救われる人が居るのも事実だ。
謙虚の「虚」って漢字が何か腑に落ちないのだ。