東京五輪はもう止まらない?!巨額放映権料払う米NBC幹部が問題発言 「人々は開会式が始まれば問題(新型コロナ)を忘れ17日間を楽しむだろう」
東京五輪開催の決定権を持つIOC(国際オリンピック委員会)に総額1兆円を超える巨額な放映権料を払う契約を結んでいる米テレビネットワークNBCのトップが注目発言を行った。ロサンゼルスタイムズ紙が報じたもので、NBCユニバーサルのジェフ・シェルCEOがクレディスイスの投資家向けオンライン会議で「開幕まで数週間となったことで、我々は開催されるだろうとの自信をさらに深めている」と語った。 シェルCEOは、「すべての五輪で開幕に向けて人々が不安を抱える問題がある。私は(2012年のロンドン五輪のときには)ロンドンに住んでいたが、交通問題に、あらゆる人が不安を抱えていたし、前回(リオ五輪)はジカ熱の問題があった。だが、開会式が始まると、すべての人々が、その問題を忘れて17日間(の五輪)を楽しんだ。今回も同じようになると考えている」と楽観的な見通しを口にした。 過去にあった交通問題やジカ熱と、まだ感染拡大が収まらず医療現場がひっ迫している今回の新型コロナウイルスの問題では、まったく議論の次元が違うにもかかわらず、シェルCEOは、IOCのトップと同様に社会情勢を無視したような問題発言をした。 ロサンゼルスタイムズ紙によると、NBCユニバーサルは2014年にIOCと2032年大会まで総額120億ドル(約1兆3200億円)でパートナーシップを結んだ。「同社の五輪報道はテレビ視聴率でライバル企業に圧勝してきた」そうで、S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのKaganユニットによると、5年前のリオ五輪で、NBCユニバーサルは、16億ドル(約1761億円)の収益を上げ、そのうち広告収入は12億ドル(約1321億円)だったという。 シェルCEOは「視聴率次第になるが、これまでの我々の会社の五輪報道で最も利益をもたらすかもしれない」という大胆な予測を口にしている。 「NBCのオリンピック報道の命運は米国選手の活躍によって左右される。オリンピックの体操チャンピオンのシモーネ・バイルズは、最初の週に演技する予定だ。視聴者の関心を五輪に集めるために役立つはずだ」と付け加えた。シモーネ・バイルズ(24)はリオ五輪で、女子団体、個人総合、跳馬、床で金メダルを4つ獲得したスーパースター。今大会でもメダルラッシュが期待されている。「(1年以上)家にいた人々がいる。世界を変えるイベント(五輪)の後には、アスリートの成功と彼らの物語を祝うために世界がひとつになるだろう」。シェルCEOは、新型コロナの影響で外出自粛などの巣ごもり生活を余儀なくされてきた人々が五輪に関心を持つとの見込みを示した。 ロサンゼルスタイムズ紙は、「パンデミックの真っ只中に何千人もの世界のアスリートと(日本国内の)群衆を集めても安全かどうかという懸念があるにもかかわらず、1年延期となった東京五輪はわずか6週間後に迫っている。医療の専門家は(五輪開催によって)コロナの感染者数が再び急増した場合や、ウイルスの変種に対応できない可能性があると警告している。先月の時点で、日本国民のワクチンの接種は約2%だけで、世論調査では80%以上が夏季大会を中止するか、再び延期することを望むと答えている。そういう論争にもかかわらずCEOは開催に自信を示した。NBCユニバーサルにとって五輪はTVネットワークと、大規模な金儲けのイベントとして重要な瞬間なのだ」と、皮肉をこめて批判している。
ただ、もう五輪開の中止は不可能との見方は、世界的にも広がっており、CBSニュースも「東京五輪が中止?それはありそうにない。これが理由だ」との見出しを取って経済的な観点からの現状を報じた。マサチューセッツ州スミス大学でスポーツビジネスの分析を専門とする経済学者のアンドリュー・ジンバリスト氏は、「開催中止のための保険があるが、基本的に、おおよそ50億ドル(約5500億円)になると考えられる。中止になれば、2年ごとに五輪を開催することを主要業務とするIOCの存在自体を脅かすことにつながる」と指摘。 ジンバリスト氏の調査によると、日本は、これまで過去の五輪で最高額となる350億ドル(約3兆8500億円)を投入しており、「それを投げだすことは難しい。300億ドル(約3兆3000億円)、350億ドル(約3兆8500億円)を費やして、パッと五輪が消えてしまうことはとても決まりが悪い」とした。 また同氏は、「開催都市の契約は、結果について都市側に責任を負わせながら、五輪開催による利益をIOCに提供する一方的なものとなっている。一方で、東京大会が中止となった場合、スイスの裁判所で『IOC対日本』の訴訟が起こればイメージが悪化する可能性があることから、例えば新型コロナの感染拡大の再発で、日本が中止を余儀なくされた場合、IOCが法的措置に持ち込む可能性は限りなく低いだろう」とも分析した。 スポーツ法の専門家でオーストラリアのメルボルン大学教授のジャック・アンダーソン氏は「困難を抱えた東京五輪が、将来大会を主催する各都市に対して、事業面、財政面、法的負担などの問題を熟考させるような影響を与え続けていくことになることに疑いはない。IOCの運命も同じでローザンヌに本拠を置く組織だけでなく、スポーツ界全体に広範囲な影響を及ぼしかねない」と問題提起した。 同メディアは、これらの有識者の意見を引用する形で、すでに投じられている巨額の財政責務と、IOCの強大な影響力を考えると、「新型コロナの悪化状況を度外視して、計画通りに五輪を進めることは事実上、もう疑う余地はない」と結論づけた。 そして記事を「五輪批評家たちが“すでに大会を中止するには遅すぎる”と語っている中で、日本は、五輪が最高のものとなることを期待し、一方で最悪のことにも備えている」とまとめた。国民の安全、安心を無視して東京五輪開催に突き進む動きを止められないのであれば、無観客開催を含め、感染拡大をできる限り抑える施策に期待するしか手はないのかもしれない。
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