すそ洗い 

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2006年5月からの記録
ナニをしているのかよくワカラナイ

ビッグモーターの不正

2023年06月02日 | 社会

ビッグモーター不正報道「完全黙殺」成功の諸事情
メディア追求かわすも…国が動く「もうひと押し」

「客のタイヤにネジを突き立てパンクさせて、工賃を請求」「高級タイヤに取り替えたとウソをついて安価なタイヤを使い、その差額を利益にしていた」「車検を行っていたのは無資格のスタッフ」……

5月5日号のFRIDAYの記事で、このような衝撃的なエピソードの数々が並んだ。厳しく糾弾されているのは、中古車販売大手・ビッグモーターだ。売上高7000億円、従業員数6000名、全国300店舗以上を展開し、「買取台数6年連続日本一」をうたう中古車販売業界の「雄」だ。
FRIDAYの記事を受け、ツイッターでも批判が殺到した。この「炎上劇」に対し、ビッグモーターは他の企業がまず取らない対処法をとった。否定コメントを出したわけでも、反対に謝罪文を公表したわけでもない。なんと「完全黙殺」しているのだ。
この類いまれなる「完全黙殺」は、今のところ功を奏しているように見える。FRIDAYを後追いする主要メディアは現時点で皆無だからだ。
なぜ、どのメディアも後追いしないのか。なぜ、「完全黙殺」は成功しているのか。そして、成功はこのまま続くのか。ビッグモーターの「極めて特異な炎上対応」を読み解いてみたい。

FRIDAYに追及されたビッグモーターだが、不祥事を指摘されるのは何も「今回が初めて」ではない。
2016年12月。産経新聞は「自動車保険契約の目標額を下回った販売店の店長が、上回った店長に現金を支払う『慣行』があること」、また翌年2月には続報として「この『慣行』は収益性の高い保険手数料を獲得するために兼重宏行社長の強いリーダーシップの下、行われていた」と伝えた。
昨年から今年にかけて、東洋経済も「損害保険会社への修理費の水増し請求があったこと」を特集している。(ビッグモーター、保険金不正の真相究明に新展開)
そして、今年3月。朝日新聞、熊本放送、熊本日日新聞がそろって「車検で必要な検査の一部を実施せず不正合格させたとして、九州運輸局が熊本浜線店の民間車検場の指定を取り消した」ことを報じている。

ビッグモーターの不祥事を伝えているのは、何もマスメディアだけではない。ツイッターでもたびたび「炎上」しているのだ。
昨年5月には、ビッグモーターの展示車とみられる車両がナンバープレートを付けずに公道を走る写真が投稿され、大いに批判を浴びた。
10月には「無料見積もりを依頼したら、勝手にドラムブレーキを分解されて、追加料金まで請求された」とのツイートが注目を集め、1万6000を超える「いいね」が付いた。

こうした一連の「炎上」に対して、ビッグモーターは一貫して「完全黙殺」している。公式サイトの「インフォメーション」欄で、2014年から現在に至るまでの「発表文」を見ることができる。だが、どの不祥事に対しても、ほとんど何のコメントも発表していないのだ。 

数少ない例外が前述の「損害保険会社に対する車両修理費の水増し請求疑惑」と、2022年9月5日の「一部報道に関する、問い合わせ窓口開設のご案内」だ。
前者では、今年1月に「特別調査委員会の設置」と以下の「謝罪コメント」を公表している。

さて本稿の冒頭で述べた通り、「完全黙殺」作戦は「今のところ」功を奏していると言えそうだ。というのも、「いくつもの悪評」とは対照的に業績は絶好調だからだ。 

ビッグモーターは上場企業ではないので、売上高は非公開となっている。そこでグループの中核会社である株式会社ビッグモーターの売上高を帝国データバンクの情報で見てみる。2017年度が1738億円で直近では5200億円。わずか5年で、3倍近い急成長を遂げているのだ。
では、なぜビッグモーターの「完全黙殺」はうまく機能しているのか。その理由のひとつが、ビッグモーターが「上場企業ではない」ことだ。
上場企業であれば決算会見、株主総会、事業戦略説明会といった「公の場」に、経営陣は出ざるを得ない。「完全黙殺」を貫こうとしても、そもそも無理なのだ。「完全黙殺」は非上場企業だけが可能な対応とも言える。
もうひとつの理由は、「完全黙殺」によってマスコミの動きを最小限に封じ込めることに成功しているからだ。では、なぜ「完全黙殺」でマスコミの動きを抑えることができるのか。
その理由を理解するには「マスコミ報道の原則」を知っておく必要がある。「原則」とは「自社取材で『事実』と確認できたものしか報じることはできない」というものだ。
こう書くと「自社というが、週刊誌の報道も頻繁に伝えている」という反論を受けることだろう。だがニュース原稿を注意深く眺めてみると、冒頭に「週刊文春によると」といった「但し書き」が入っていることに気づくはずだ。
「週刊誌が報じた『内容そのもの』が事実かどうかは、『当社としては』定かではない。だが『その記事が掲載された週刊誌が発売されたこと』は事実」だ。なので「内容の真偽」には踏み込まず「記事が世に出た」ことを、「事実」として報じているのだ。

さて、もしビッグモーターが過ちを認めて、正式な「謝罪コメント」を発表していたら、マスコミはどう動くだろうか。 

まず「謝罪コメントを出した」ということは「事実」なので、そのまま報じることができる。加えて、当事者が過ちを認めて謝罪しているのだから、当然、謝罪の原因となった行為も「事実」と認定できる。つまり、不祥事の当事者が自らマスコミが報じる「お墨付き」を与えていることになるのだ。
だが反対に「完全黙殺」されたら、どうだろうか。記者は自分自身ですべての事実確認をしなくてはならない。
冒頭のFRIDAYの記事に照らしてみると、まず告発者である「元従業員」を探し当てなくてはならない。だが、日本のどこにいるかもわからない「元従業員」を探し出すのは簡単な作業ではない。
「報道機関と称しているのだから、それくらいの労力はかけるべき」「他者を殺める可能性のある乗り物での不正行為ではないか」といった指摘は極めて正論だ。だが、大きな労力をかけたところで、所詮はFRIDAYの「二番煎じ」。同じ労力をかけるなら「自分が一番乗りになる案件」に取り組みたいと思うのは、記者として自然な感情だろう。
もちろん社会的な注目度が高く、極めて深刻な案件であれば、記者もそのようなことは言ってられない。だが、一連のビッグモーターの不祥事は現時点では「そこまでのものではない」。これが、FRIDAYの第一報にどの社も続かない主因なのだ。

ネットを見ると「ビッグモーターは広告を出しているから、テレビは報じられないのだ」という声も少なからず見られた。確かに「テレビ局は営利企業だから、スポンサーに不利なことは報じないに違いない」という推論は、一見すると合理的に聞こえる。
だが、テレビの報道現場は世間の想像以上に、スポンサーのことを気にしていないのだ。具体例を挙げると、テレビ東京の「ガイアの夜明け」はレオパレスの違法建築問題を4回にわたって放送した。当時、レオパレスは藤原紀香氏、広瀬すず氏といった有名芸能人を起用したテレビCMを出稿していたにもかかわらず、だ。
私自身の経験で言っても、テレビ東京で7年近く「WBS(ワールドビジネスサテライト)」を担当していたが、「スポンサーの商品を取り上げろ」「スポンサーの不都合なことは扱うな」「スポンサーの競合企業は取材するな」などと上の役職の人間から言われたことは「一度も」ない。
これは「スポンサーに忖度することは、長期的には自分たちの媒体価値を損なう」ということが、全社の共通認識になっているからだ。

ちなみに、ネットニュースの代表格のヤフーでも「スポンサーの新商品記事だから、トピックスで取り上げよう」などということは行われていない。メディアの種類を問わず、ニュースの世界では「スポンサーに忖度しないから、一定の地位にあり続けている」とも言えるのだ。 

さて、ここまではビッグモーターの「完全黙殺」作戦が功を奏してきた原因を見てきた。最後は「これからも」成功し続けるのかどうかを考えてみたい。
「完全黙殺」作戦だが、私は「砂上の楼閣」のように危ういと見ている。新たな「ひと押し」で崩れうるものだからだ。
例えば、「強大な外圧」。国交省記者クラブに所属する記者に「特ダネ」となりうる「内部告発」が持ち込まれたとする。その記者は「内部告発」の事実確認を終えた後、国交大臣の会見で、大臣に直接、その事実を当てることになる。
「私たちの取材ではビッグモーターの不法行為が明らかになっている。大臣はどのように考えるか」などと質問するのだ。大臣は記者に聞かれれば「国交省として事実確認できているものではないが、仮に事実とすれば……」などと業界健全化に前向きな発言をするかもしれない。そうした回答が出なければ、記者はしつこく質問し続けることになる。
「大臣が前向きな発言をしてしまった」「次の大臣会見でも質問されるかもしれない」。こうなれば、国交省の官僚も何らかの「備え」をせざるを得ない。立入検査や行政指導などの動きに波及する可能性も出てくる。行政指導や立入検査となれば、どのメディアも躊躇なく報じることになる。「完全黙殺」は決して「非上場企業にとって、盤石の防衛策」ではないのだ。
500以上の新聞や雑誌記事を検索できる「日経テレコン」を調べると、ビッグモーター創業以来、兼重社長がインタビュー取材を受けている記事を「ひとつも」見つけることはできなかった。長く「沈黙を良し」とする文化なのかもしれない。
「企業は社会の公器」とは「経営の神様」松下幸之助の言葉だ。公であるからには、社会に対して説明責任を必ず伴うはずだ。まして売り上げ7000億円に達する大企業ともなれば、なおさらだろう。個人ならともかく、企業が確たる根拠に基づく不祥事に対し「完全黙殺」など本来、ありえないのだ。
今、ビッグモーターの新卒採用サイトには、「流した汗に、正当な評価を」と大きく掲げてある。若い世代の「汗」が「手段を選ばぬ売上達成」ではなく、「健全な中古車市場形成」に資する「真っ当な顧客対応」で、「正当に評価」されることを願っている。

(東洋経済 2023.5.10)


 
衝撃メール全文公開…完全バックレ成功
「ビッグモーター」新聞は報道しない自由を行使!中古車不況到来

週刊誌フライデー(5月5日)の記事で、「客のタイヤにネジを突き立てパンクさせて、工賃を請求」「高級タイヤに取り替えたとウソをついて安価なタイヤを使い、その差額を利益にしていた」「車検を行っていたのは無資格のスタッフ」などと厳しく糾弾されたにもかかわらず、コメントを一切出さずに、完全無視を決め込んだ中古車販売大手の「ビッグモーター」。売上高7000億円、従業員数6000人、全国300店舗以上を展開し、「買取台数6年連続日本一」をアピールする会社だ。  完全バックレに成功したとも言われる前代未聞の手法に、ネットは騒然としている。  実際に、新聞記事の検索サービス(日経テレコン)を利用して、新聞各紙(日経、読売、朝日、産経、毎日、地方紙)がこの「ビッグモーター」の事件を、発覚からおよそ1カ月の間にどのように報じていたかを調べてみたが、検索結果は、まさかの「0件です」と表示されることに相成った。本当に「バックレ」に成功しているようである。  完全黙殺と聞いて想起するのは、最近、世間を賑わしている「ジャニー喜多川氏による性加害疑惑」。この疑惑について、朝日新聞(5月27日)で田玉恵美論説委員が、長きにわたって疑惑があったにもかかわらず、朝日新聞が今年の4月まで見過ごしてきた原因について、このような「反省」を述べている。 

「(2010~13年に文化部に在籍していた際)ジャニー喜多川氏に『良からぬうわさ』があるのは漠然と知っていたが、具体的に知ろうとしなかった。文春の記事や裁判の判決文も、最近になるまで読んだことがなかった。あのころ目を向けていたのは、ジャニーズ事務所や放送局にとって都合のいい芸能界の華やかな側面だけだ。そのビジネスに組み込まれた重大な疑惑であり、現在進行形で被害が続いているかも知れず、新聞こそが取材すべき案件であると考えることができなかった」 「この疑惑の真相を探ろうと取材をした同僚もいた。経済部の男性記者(46)は別の部署にいた08年、複数の元ジャニーズの男性を見つけて話を聞いたが、記事化に至らなかった。『被害意識を持ち、それを訴えたいという人に会えなかった。その他の取材結果も合わせて検討し、この状況では記事にはできないと当時は判断した』という。『ジャニーズはタブーではなかったし、新聞なら書けると思って取材をした。結果として、記事にできるだけの材料をそろえられなかったのは情けないのだけれど』」 

ジャニー喜多川氏の疑惑については、反省したかのように弁明するが、では、このビッグモーターについてはどうなのか、見解を知りたい。後出しじゃんけんで反省したそぶりを見せているだけで、結局、新聞の体質が変化することなどないような気がしてならない。私は、報道しないことを怒りたいわけではない。取材をしてみて結果として紙面にならないことはよくあることだと思うし、証拠がつかめないのだから、記事にはできなくて当然だ。むしろ、私は、この朝日論説委員の「反省」にこそ欺瞞(ぎまん)があるように感じてしまう。反省して次なる行動に移すかのように記事では述べているが、実際、同じことがあっても基準に達していない以上報じることはできないはずだ。  新聞には新聞の、週刊誌には週刊誌の編集方針、取材ポリシーがある。どちらも完璧ではないのだから、それぞれに信じる道を歩めばいいのである。今、読売新聞が主導して、一部の週刊誌報道を「アテンション・エコノミー」(注意をひきつけることで利益を得るビジネス)と断じて、排除しようとする動きがある。まるで自分たちが正しい側にいるかのような方法論は、はっきりいって危険だろう。新聞業界が情報を統制するようになってしまったら、ジャニー喜多川氏の性加害疑惑もビッグモーターも誰も報道をしなくなってしまう。 

読売新聞は、5月17日の編集手帳で「メディアにとっても人ごとではない。正直、厳しく報じる機会を逸したことに羞恥(しゅうち)を禁じ得ない」と分量にして「1行」の反省が述べられている。「厳しく報じる機会があった」と認めている時点で、朝日よりも罪が深いのではないか。朝日は「訴えたいという人に会えなかった」から記事にできなかったのである。読売は、具体的な言及は避けているが、厳しく報じる機会があったのに、やらなかったということだ。  話をビッグモーターに戻そう。ビッグモーターは、現在でも、メディアからの追及を無視して営業を続けている状態である。報道を受けて、経営姿勢は改められたのか、現場にどのように客と接しろと言っていたのか、管理はどうなっているのかが一切不明のままであるため、現在進行系で被害が出ている可能性がある。このような不道徳な企業には、きちんとオープンな形で経営をしてもらうようにしなければ、安心して中古車を売ることもできないだろう。  そんな中、驚くべきことに、筆者親族のメールアドレス宛に、ビッグモーターからメールがきた。5月12日10時58分のことである。以下に、全文を掲載する。 

「ビッグモーター広島西店と申します。この度はインターネットにてお車のご登録頂き誠に有り難う御座います!ビッグモーターは全国ネットワークで展開しております。自動車販売・買取・整備・板金・保険代理店・オークション事業など業界初のトータルサポートというビジネスモデルを構築しておりますので、購入からアフターケアまで他店にはない強いメリットを生み出せます。 特に!! 他の買取専門店との違いは。。。販売実績!【5年連続】日本一!大型展示場にて買取車両を直販!自社にて整備工場・板金工場設備!外注作業なしの為コストダウン!安心の売却金額の保証制度!クレーム安心保証!お客様の愛車!是非当社に仕入れさせて下さい!ご希望金額は「高ければ高いほど・・・」だと思います。正直、どの業者も同じデータを見ていますので、査定時間を使うだけで、各社の金額はさほど変わるものではありません。複数社参加しておりますので既に各社概算メールなども届いて来ているとは思いますが、販売値を超えるほどの過剰な概算メールも多くあるのが現状です。是非一度車を拝見させていただいて、金額の納得がいくようであれば私共にお任せいただければと思います!そして何より、お客様の大事に乗られていたご愛車を、自社で確(しっか)り整備し次のお客様に販売させて頂きます。損はさせません!是非ご連絡の程お待ちしております!!ご予定などはお客様のご希望で調整させて頂きますので是非ご検討宜しくお願い致します。(ご来店の際は事前にお電話にてご予約頂くとスムーズです)★無料出張査定にもお伺いできます★ビッグモーター広島西店」 

私の親族は東京在住で、インターネットのお車登録などしたことはないというのだが、誰かと間違えたのだろか。  それにしても、何事もなかったかのような営業メールに恐怖を感じざるをえない。内容を見ていくと「正直、どの業者も同じデータを見ていますので、査定時間を使うだけで、各社の金額はさほど変わるものではありません」と断じて、「販売値を超えるほどの過剰な概算メールも多くあるのが現状」というのである。  敢えてこう記載しているのは、前提として、自分たちの提示する値段が相場より低いことが予想されるので、買取価格を高めに出す業者を必死でディスっている、ということなのだろうか。「お客様の大事に乗られていたご愛車を、自社で確り整備し次のお客様に販売させて頂きます」という、誠実なイメージを相手に与えようとしているのもテクニックだろう。「客のタイヤにネジを突き立てパンクさせて、工賃を請求」「高級タイヤに取り替えたとウソをついて安価なタイヤを使い、その差額を利益にしていた」「車検を行っていたのは無資格のスタッフ」という報道とのギャップを感じざるを得ない。そのギャップを埋めるためにもまずは世間に対して経緯を説明するべきなのではないか。 

中古車業界は、世界的な半導体不足やコロナ禍による部品供給の遅れなどで新車の生産が滞ったことから、異常なまでの価格高騰を招いていた。一部の車種で、新車よりも中古車価格のほうが高い「逆転現象」も起きていたのである。  しかし「中古車のオークションでの平均落札価格を見てみると、去年9月に過去最高値に達してからは下落傾向になり、この半年で30万円以上安くなりました」(テレ東BIZ・4月10日)、「新車が納車されると、その下取りとして中古車が入ってきて、その中古車が巷(ちまた)に出てきているという状況。だから、そこでだぶついた中古車の値段が下がってきた。“中古車バブル” がはじけて大暴落の状況だと思っている」(ケーユー取締役上席執行役員・三村雅久氏、テレ朝news・5月4日)と報じられていることから、ビッグモーターの受難がいよいよはじまったのかもしれない。

 

 
 

 
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