日本語を母語とする日本人がなぜ英語でスピーチをするのでしょうか?安田講堂杯実行委員が考えるその意義をここに説明したいと思います。
「英語は国際語だ。国際的な場面で活躍する上で英語は必須のものである。だから世界の標準に合わせて英語を使うのだ」と説明することもできるでしょう。 確かに、世界の流れについていくために英語力は大事です。英語の勉強手段としてもスピーチは最適でしょう。しかし、我々はこれ以上の意義を英語スピーチに見いだしたいのです。その意義というのは、「文化の壁を通ることで身のある内容とその伝え方を追求する」というものです。
外国語できちんと相手を納得させるには、母国語で話す時以上に綿密に内容を練って伝え方にも入念に気を配る必要があります。ぼんやりとした意見は、母国語ではうまくごまかすことができても外国語に直せばいかに無内容か分かってしまいます。文化の壁があるゆえに、きちんと考え、伝え方に工夫する必要があるのです。逆にいえば、外国語で相手を説得できればその説明は本物でしょう。本当に発言するに値する内容を十分に説得的なやり方でもって伝えること、この能力を鍛えることにわれわれは外国語でスピーチ活動をする本当の意義を見いだすのです。
そう考えると、逆説的ですが、スピーチ大会において語学能力としての英語の力はさほど重要ではないともいえます。確かに自分の意見を外国語で表現するには相当程度の力が必要とされるのは確かです。しかし必ずしもネイティブ並みである必要はありません。逆に言うならば、ネイティブであってもスピーチ大会において、いい評価を得るとは限らないのです。学生スピーチ大会でしばしば誤解されていますが、大事なのは語学力ではなくむしろ内容とその伝え方です。ぜひ他の文化のツールである英語を通じて意見を述べる経験を通して、本当に訴えたいことは何かを練り、そしてそれを聞き手の心に響くものにする力を身につけてください。この力こそ、スピーチの力です。
文責 松田