タバコ産業から研究費をもらった学者の論文は警戒を要する

研究報告:科学者がタバコ産業から研究費をもらうと研究結果の信頼性が損なわれる。

◆タバコ文書とは◆

2006-05-02 18:06:14 | Weblog
■■ タバコ会社が30年もの間、国民から隠し続けてきたこと ■■

タバコ文書をご存知だろうか? 団藤保晴氏の「インターネットで読み解く!」には、タバコ文書について次のように述べられている。

 損害賠償責任は、当事者が当然果たすべき注意義務を怠ったり、不法行為をした場合に発生する。米国のたばこ会社が迫られているのは、自ら製造している製品が有害であることを知っているのに、隠して販売し続けた点だ。ニコチンの中毒性や、たばこの副流煙に多量の発がん物質が含まれているとの指摘を否定し続けてきたのに、実は自らの手で調べていた事実を表面化させ、損害賠償訴訟の有力証拠になっているのが「タバコ文書」である。'94年5月、たばこと戦っていた研究者、カリフォルニア大のグランツ教授の元に、大箱に詰めた4,000ページに及ぶ文書のコピーが匿名の人物から届けられた時点に始まる。

 ビル・トッテン氏による長いストーリーから一部引用する。「そこにはタバコがいかに健康に有害かという決定的証拠が記されていた。ニコチンは中毒性の物質でありタバコが癌の原因になること、そしてそれらのデータをタバコ会社が30年もの間、国民から隠し続けてきたことがその文書から明らかだった。94年4月の議会で、タバコ会社7社のCEO(注:経営最高責任者)たちがタバコの中毒性や癌との関係について知らなかったと証言したことを考えると、これは特に大きな意味を持つ」。

 グランツ教授は「タバコ文書を大学の図書館に保管することにした。それでも閲覧を望む人が後を絶たず、図書館にはたちまち行列ができてしまった。そのため図書館の副館長は文書をCD-ROMに入れ、それをWebに載せようと考えた。これで文書が保護され、誰もがアクセスできるようになるからだ。この行動がタバコ文書の問題の性質を変えることになった」。クール、ラッキーストライクなど有名銘柄の製造元として知られ、この文書の所有者だった「B&Wはここで文書の返却を求めると共に、一般への公開中止と閲覧者リストの提出を求めたが、図書館がこのいずれも拒否したため、B&Wは訴訟に踏み切ったのである。図書館で誰が何を閲覧したかを調べるのは通常許されるべきことではない。しかし、文書の返却を拒否されたタバコ会社は図書館に探偵を張り込ませ、文書の置かれている特別収集室に出入りする者を監視させたのである」
 「タバコ文書」の出版差し止め請求は、'95年6月のカリフォルニア州最高裁判決で退けられ、カリフォルニア大学の手でLegacy Tobacco Documents Library (LTDL) ( http://legacy.library.ucsf.edu/ )としてインターネット上に公開されることとなった。


■■ Japanese spousal studyは環境タバコ煙を発癌性物質に指定した米国環境保護局(EPA)の対策を妨害するために利用された ■■

http://bat.library.ucsf.edu/data/y/l/b/ylb30a99/ylb30a99.pdf

■■ WHOは平山雄の研究を絶賛 ■■

WHOが2000年に発表したBulletin of the World Health Organizationは平山雄の研究について「平山雄の研究は時の試練に耐えて持ちこたえている」と絶賛した。
http://whqlibdoc.who.int/bulletin/2000/Number%207/78(7)classics.pdf

■■ 受動喫煙の害を否定した研究者はタバコ会社と関係があった ■■

論文を読む際には、どこの大学の誰が書いた論文か、著者はタバコ会社と関係がある人物かどうか、そしてタバコ会社から研究費助成を受けたかどうかをまず確認しよう。

■ 論文の著者とタバコ会社との関係を調べるには? ■

タバコの害を研究した論文を評価するには、著者とタバコ会社との関係を確認する必要があるのは言うまでも無い。論文の著者がタバコ会社と関係があるかどうかはタバコ文書を保管しているウェブサイトで簡単に確認することができる。

例えば、British American Tobaccoのタバコ文書を調べるには
British American Tobacco Documents Archive
で調べることが出来る。

この他にもタバコ会社のタバコ文書を保管しているサイトがいくつかある。
ASH/ Web Links/ Industry Documents

■■ 渡辺文学氏 プロジェクトの中止を要請 ■■

2003年3月31日 渡辺文学 禁煙ジャーナル編集長は、受動喫煙の害を否定するためのプロジェクトは現在も継続されており、彼らが作成した論文は日本のタバコをめぐる各地の裁判で受動喫煙の害を否定する証拠として提出されており、このプロジェクトを1日も早く終了するよう要請する記事を禁煙ジャーナル誌に掲載した。
http://www.tbcopic.org/index.htm

◇違法行為の通報者は公益通報者保護法によって保護されています。◇

■■ 禁煙団体はタバコ産業から研究費を受け取らないよう呼びかけ ■■

また、全国の禁煙団体もこの事態を重く受け止めて緊急アピールを行い、タバコ産業からの助成金を受け取らないよう呼びかけた。
http://www.nosmoke-shutoken.org/02events/reports/030531/2003appeal_2.htm

【2003「世界禁煙デー」緊急アピール】

医学部、研究所、研究者は、タバコ産業からの助成金を受け取らないで下さい!

 近年、アメリカをはじめとする諸外国では、訴訟の立証過程において、あるいは内部告発により、「タバコ産業から資金提供を受けた研究者が、研究結果を歪曲し、あるいはタバコの真の事実を隠蔽している」との事実が数多く明らかになってきました。
 この流れを受け、世界の医学界では、「タバコの害を研究する研究者は、タバコ産業から資金提供を受けてはならない」とのルールか定着しつつあります。
 なかでも、世界中の良心的な医師を代表する世界医師連盟は、1998年の『タバコ関連勧告』のなかで、「医学部、研究所、研究者は、タバコ産業からの助成金を受けてはならない」と明言しています。
 -方、わが国においては、タバコの害を意図的に過小評価する「研究」をマスコミが好んで取り上げる状況が続いています。
 さらに、タバコ病訴訟をはじめとする各種の裁判においては、タバコ産業から直接、間接に資金をもらっている研究者が証言台に立って医学界の常識とはかけ離れた「学説」を展開し、裁判の進行を著しく妨げる例が多々見られます。
 日本たばこ産業(株)=JTは、これら研究者に間接的に資金を提供するために「喫煙科学研究財団」なる団体を設立し、毎年多額の資金を多くの「研究者」に提供しています。
 また、日本国内にとどまらず、受動喫煙研究の金字塔ともいうべき平山雄博士の研究を貶めるために、多国籍タバコ企業の「捏造研究」に荷担する日本人研究者も、何人か存在しているようです。("British Medical Journal" vol. 325,14. December. 2002 http://bmj.bmjjournals.com/cgi/content/full/325/7377/1413
 一般人の常識に照らせば、「お金をくれる人の不利になるようなことはしない」というのは当然のことであり、タバコ産業から資金をもらって行われる研究の客観性には疑問を抱かざるを得ません。
 これを裏付けるように、「タバコ産業から研究資金をもらった研究者は、受動喫煙の害を否定する論文を書く傾向が著しい」との論文がアメリカの権威ある医学雑誌に掲載されています。("The Journal of the American Medical Association"
Vol. 279 No.19,May 20,1998) 
私たちは以上の事実を踏まえ、「世界禁煙デー」の今日、このアピールを発表します。
 医学部、研究所、研究者は、タバコ産業からの研究助成金を受け取らないで下さい。
 
2003年5月31日
【「緊急アピール」賛同団体】
 タバコ問題首都圏協議会/全国禁煙・分建推進協議会/非喫煙者を守る会/北海道分煙社会をめざす会/たばこ病訴訟弁護団/たばこ病訴訟を支える会/嫌煙権確立をめざす人びとの会/きょうと分煙生活舎/たばこれす/兵庫県喫煙問題研究会/日本禁煙推進医師歯科医師連盟兵庫支部/タバコの害を考える会・鹿児鳥/日本禁煙筐師連盟鹿児島支部/鹿児島禁煙支援研究会(順不同)

■■ 日本公衆衛生学会も対応 ■■

受動喫煙の害を否定する論文を発表した人物が、実はタバコ会社と関係があり、タバコ会社に多額の研究費を要求していたことも判明して世界中の研究者が騒然となった。これについて日本公衆衛生学会は「たばこのない社会の実現に向けた行動宣言」を発表し、たばこ産業及びその関連機関との共同研究、及び同産業等から研究費等の助成を受けた研究を行わないよう呼びかけた。
http://www.jsph.jp/tabako.htm

■■ 受動喫煙の害発見から22年。ようやく健康増進法が施行される ■■

2003年4月、受動喫煙対策を定めた健康増進法が施行され我が国の受動喫煙対策が一気に前進することとなった。しかし、平山雄が受動喫煙の発癌性を発見してから実に22年も経過してしまった。もし、タバコ文書の研究が進まなければ、タバコ会社の研究員が発表した受動喫煙の害を否定する論文に惑わされ、我が国のタバコ対策は更に遅れていたことだろう。以下、厚生労働省健康局長の言葉を引用する。

健康増進法第25条の制定の趣旨

受動喫煙による健康への悪影響については、流涙、鼻閉、頭痛等の諸症状や呼吸抑制、心拍増加、血管収縮等生理学的反応等に関する知見が示されるとともに、慢性影響として、肺がんや循環器疾患等のリスクの上昇を示す疫学的研究があり、IARC(国際がん研究機関)は、証拠の強さによる発がん性分類において、たばこを、グループ1(グループ1~4のうち、グループ1は最も強い分類。)と分類している。さらに、受動喫煙により非喫煙妊婦であっても低出生体重児の出産の発生率が上昇するという研究報告がある。
 本条は、受動喫煙による健康への悪影響を排除するために、多数の者が利用する施設を管理する者に対し、受動喫煙を防止する措置をとる努力義務を課すこととし、これにより、国民の健康増進の観点からの受動喫煙防止の取組を積極的に推進することとしたものである。
(平成15年4月30日  厚生労働省健康局長 受動喫煙防止対策について)
http://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/houkoku/judou.html

■■ 医学者は何をしてきたのか ■■

タバコ会社と関係のある著者の研究報告は信頼性があったためしがない。もし、彼らの目的が平山雄研究の検証という正当なものであれば、タバコ会社に金銭を要求することなく厚生科学研究費などを申請すべきだった。彼らは自らの研究を通じて受動喫煙の害を認識していたのだからタバコの害を隠すことなく公表すべきであった。しかしタバコ対策の妨害は今も続いており、彼らの論文はタバコを巡る世界中の裁判で利用され多くの非喫煙者を苦しめている。

タバコ会社の研究者による論文には次の言葉がふさわしい。

「原因物質が究明されないかぎり因果関係があるとは言えない」。さまざまな公害事件や薬害事件において無数の被害者たちは疫学の視点から非常識としか言えない論理で切り捨てられてきた。多額の研究費の支給を受けて加害企業の側に立った医学者たちの発言や行動を,多数の資料や記録をもとに検証し,その言動を生んだ学界構造と官僚機構の改革を提言したい。

参考 津田敏秀著『医学者は公害事件で何をしてきたのか』 
http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/02/8/0221410.html
定価 2,730円(本体 2,600円 + 税5%) 2004年6月29日刊
ISBN4-00-022141-8 C0036


■■ 公益通報者保護法と制度について ■■

◇違法行為の通報者は公益通報者保護法によって保護されています。◇