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デイドリームをつかまえて

裕樹の日記PART?

10月の雨

2004年10月06日 03時21分45秒 | LIFE EXPERIENCE
今日は事情により劇団の練習がオフになり、ちょうどいいから大学の方に行って任されていた仕事を片付けに行った。
前回行ったときは夏休みだったけど、今日はもう新学期が始まっていて、履修申告をしなきゃいけない学生たちでごったがえしていた。
さすがに、もう僕の知っている人はほとんどいない。
でも毎年見ていた光景だ。僕らは毎年収穫されるリンゴのようなものだ。
入れ物が一緒で、時期も一緒で、ただし中身だけ毎年消耗されてゆく。
そんなちょっとセンチな気分になってるところに知り合いが一人いた。

「髪切った?」僕は彼女に聞いた。髪型を変えた女の子には敏感に。男の基本らしい。
「夏のはじめくらいかな。」彼女は答えた。「長谷川京子の髪型にしてくださいって言ったの。」
まあ1メートルほど離れて見ればそう見えなくもなかった。
彼女は学生相手のコンサルタントの机に座って、僕を見ていた。彼女の新しい髪形と変わらない物静かな目を見て、僕はふと彼女に会うために学校に来たような錯覚を覚えた。
「久しぶりね。ずいぶんになるんじゃない?」
彼女は言った。
「そうだね。半年ぶりとかじゃないかな。」僕は彼女と最後に会ったときを思い出しながら言った。たしか7月のはじめあたり。やだなあ、たった三ヶ月くらいじゃないか。
夏休みのあいだ、僕は一度だけ彼女と連絡しようとしたことがある。
連絡は取れなかった。旅行に行ってたか、僕が何かして嫌われたかのどちらかと思っていた。
劇団の演出の鈴木君は十中八九後者だと言ってたけど。

僕は自分の席に戻ってパソコンを前にし、冷たくて硬い椅子にどっかりと深く沈みこんだ。
震えを感じる。
最近気づいたことだけれども、僕は自分が興味のある人間と話すとき、自分の内面が面白いくらい変わる。好き嫌いではなく、その人それぞれの持つ特性に僕は敏感に反応してしまうのだ。
小さい子供のように、思慮深い人間のように、思春期の少年のように、僕の心は震え、変化する。
時には相手の首を絞めたくなるほど強烈なアドレナリンが噴出されるのを感じたり。
そういうとき、僕はすごく嬉しくなる。僕が唯一自分が役者に向いてると思える瞬間だからかもしれない。
彼女と話すとき、僕はいつも奇妙に落ち着いた心の震えを感じる。
ドラッグでハイになって一晩中続いたトリップが終わったときに広がる無限の沼地のような静けさが、彼女と対話する僕の心を支配しているのを感じる。

まだ僕が大学に通っていたころ、おかしな話だけど僕はよく彼女と結婚した自分を思い浮かべていた。
僕は結婚なんてしたくなかったし、彼女のことをそこまでよく知ってたわけじゃないけど、第三者の目から見た光景として、僕はそれを明確に思い浮かべることができた。
僕はぎこちない笑顔を浮かべている。自分がなぜそこにいるのか分からない、とでもいうような。彼女は僕のその顔を見て見透かしたような表情をするのだ。
僕と彼女との間に小窓からの光が、透明だけど分厚い壁のように差し込んでる。
それで僕は、また静かな沼地にずぶずぶと入り込んでいく。暖かいなあ。
僕はパソコンを前にして、彼女のその心地よい奇妙な暖かみを反芻していた。

「僕はもう帰るつもりだけど、一緒に帰らないか?」
僕は聞いてみた。
「今日はバスで来てるの?」
「うん、雨だからね。今日も自転車?」
「まさか。雨なのよ。」
「じゃあ、もうちょっとそこらへんで待ってるよ。」

彼女と一緒に図書館から外に出たら、雨の匂いがした。
じっとりと湿った布が、鼻の奥へひきずられて心地よく脳の外側にまとわりついてくる。今度僕が「雨」という台詞を言うとき、この感覚を思い出すようにしよう。
10月の雨は僕に砂漠を潤す雨を思わせ、僕はまるでずっと濡れるのを待っていた布切れのように本能的に雫を求めて全身の毛穴で呼吸する。
秋に収穫されるリンゴ達も、この雨に心を震わせているだろう。






サラダとモテ男

2004年10月05日 03時09分04秒 | LIFE EXPERIENCE
最近食べる量がめっきり減った。
食事する回数も減った。
今日なんて晩御飯がフルーツゼリーとイカの塩辛とビールだ。
今年の六月でストレスやらプレッシャーやらでものが食べられなくなって以来、食事することに対する愛着が減ってしまったのだ。
今は食欲がないのではないけれども、芝居のことを考えたりしてるとつい食べることを忘れてしまうのだ。これは良くない。
だって食べなきゃ芝居できないじゃん。
そういったジレンマに翻弄されながらも、間に合わせに学校で豆腐とゆでたまごを食べてたら「ボディビルダーかお前は」と突っ込まれた。

でも料理することは好きなんだな。
トマトとモッツァレラチーズとパプリカを使ったサラダをよく作って食べる。
うちでトウガラシを育てているので、そいつも使う。
トウガラシとモッツァレラチーズは実はよく合って、トウガラシの辛さをモッツァレラチーズが瞬時に緩和してくれて胃だけがホカホカと暖かくなる、その感触が楽しいのだ。
そのサラダのおかげか、今年は夏バテしなかった。

僕は料理するのは好きなんだけど、世の通説である「優しい男」と「料理できる男」がモテるという認識は、絶対間違っている。一応主張しておく。
ていうかそれが言いたかっただけだ。

さて、どうしたものか。

2004年10月05日 01時52分09秒 | LIFE EXPERIENCE
洗濯機が壊れた。
ここんとこ脱水機の調子が芳しくなく、すぐにエラーが出ていたのだけれども、
とうとう、うんともすんとも言わなくなった(そのくせビープ音だけはいっちょまえに出るのだ)。
ただ洗濯機が壊れただけならコインランドリーを使えば問題はナイ。
僕はもともとポジティブな人間だし、環境に対する適応能力はけっこう高いほうだと思う。
問題は、洗濯機を動かしてすぐに壊れてしまったので、ドアにロックがかかったままになってしまったことである。僕の汚れた衣服やらなんやらが全部洗濯機の中に閉じ込められてしまったのである。
これはかなり困った。
服や、下着や、タオルは全部、どう頑張っても開きそうにない意地悪な洗濯機のドアの向こうである。残り少ない衣類は、戦場の少ない物資のように頼りない。
なにより、その環境に適応しようとして頭を働かせる自分が怖い。

僕が所属している劇団の演出である鈴木君が、最近
「演劇に、もっとみんなの関心を持ってもらおう」
というスローガンを掲げている。
このまえのミーティングでも、「劇団の人間が普段どんなことをしているのか」ということを演劇に関係のない人たちにもなるべく知ってもらいたいというようなことを言っていた。
たしかに間違ってはいないと思う。
役者を目指す者としても、より多くの人間に自分のこと、演劇のことを知ってもらうことは大事なことであるわな。
だから僕なりの方法で鈴木君のスローガンを実行していこうと思うのだ。
で、それで僕はまた日記をつけることにした。

大学のときはずっとウェブ日記をつけていたのだけども、この日記は主に僕の役者修行中の生活を中心に綴って行きたいと思う。
でも僕は馬鹿だから難しい演劇理論は書かない。っていうか知らない。
24時間芝居のこと(or女の子のこと)ばかり考えている僕が何を感じるか、それをこの日記で書いて、それで楽しんでもらえたら幸いです。

洗濯機は演劇とは(たぶん)関係ない。もしかしたらメタファーとしての存在理由に共通点はあるかもしれない。でも僕の日記上では(たぶん)関係ない。
僕はそういう人間です。
よろしく。